取材協力: Blake Morgan
カスタマーエクスペリエンス (顧客体験) を向上させるために小売業者が活用できる3つのテクノロジーをご紹介します
目次
現在、多くの消費者はオンラインで製品やサービスを購入しています。そのため、売上を伸ばしたい中小企業は、オンラインでの存在感を高めることに注力しなければなりません。実際、キャプテラが世界中のオンライン消費者5,585人を対象に実施した調査によると、回答者の半数以上 (63%) が平均して少なくとも週に1回はオンラインで買い物をしていると答えています*。
オンラインでの販売を大企業や定評のあるブランドと競う際に、競争力を高めるために必要な要素が1つあります。それは、カスタマーエクスペリエンス (CX) です。
CXの未来を予測するフューチャリストであり、ベストセラー作家のBlake Morgan (ブレイク・モーガン) 氏[1]は、次のように述べています。「お客様の生活をより快適かつ便利にすることが、最高のマーケティング戦略です。このような戦略はお金で買うことはできないため、自ら作り出さなければなりません。優れたカスタマーエクスペリエンスを提供することでのみ達成できます」。
今回は、CXの戦略やテクノロジーをオンラインセールスに活用する際に、小売業者がやるべきことと避けるべきことについてMorgan氏に尋ねました。
1. CXを煩雑にする「目新しいもの」に惑わされず、真に問題を解決するテクノロジーに投資する
Morgan氏は、企業がしばしば「シャイニーオブジェクト症候群」に陥りがちであると指摘します。これは、話題になっている新しいソフトウェアに飛びつくことを指します。「しかし、目新しさに惹かれるのではなく、顧客の購買プロセスで解決すべき問題を慎重に考え、そのツールが本当に価値をもたらすかどうかを見極めることが重要です」。
キャプテラの調査では、オンラインで製品やサービスを購入している回答者の42%が、従来型チャットボットやAI型チャットボットなどの新しいテクノロジーに興味がないと答えています。つまり、すべての新しいツールが価値を生むわけではないのです。
では、企業はどのようなCXツールに投資すべきなのでしょうか?Morgan氏は、顧客がどのチャネル (検索エンジン、メールマーケティング、SNSなど) を利用しているのか、どの製品に最も興味を持っているのか、どのように問題を解決してほしいと考えているのかを理解するために、顧客データを取得できるツールに投資することを勧めています。
同氏は次のように述べています。「アップセルやクロスセルを目指す前に、まずはテクノロジーの基盤を整える必要があります。顧客データが充実していればいるほど、顧客を深く理解でき、より多くの売上を上げることができます。顧客が購買プロセスのどの段階にいて、何を必要としているのかを把握することが、売上を増加させる鍵です」。
カスタマーサービスソフトには多くの機能があり、顧客からのリクエストに対応しながら、貴重な情報を収集することができます。以下にいくつかの例を紹介します。
- カスタマーインタラクションの分析 通話録音やライブチャットのテキストを分析することで、顧客のインタラクションパターンを特定し、懸念事項を積極的に解消してCXを向上させることができます。
- カスタマージャーニーのマッピング Webサイト、SNS、メールなどのさまざまなチャネルでの顧客とのタッチポイントを追跡し、購買プロセス全体を分析してペインポイントを特定し、CXを向上させることができます。
- 顧客からのフィードバックとアンケート 顧客とのインタラクション後にフィードバックフォームやアンケートを送信し、顧客の体験や嗜好に関する意見を収集して製品やサービスを改善することができます。
改善すべき点を的確に認識できれば、改善計画を確実に実行に移すことが可能になります。
さらに、Morgan氏は「長期的で曖昧な目標ではなく、目の前にある課題を把握して解消していくことが重要です。顧客を獲得するか失うかは、CXを向上させるためのわずかな努力にかかっています。しかし、その小さな努力の積み重ねが、企業に大きな飛躍と利益をもたらすことがある」と強調しています。
2. 広告を単にばらまくのではなく、SNS上で有意義なつながりを築く
「従来型の広告は時代遅れになってきています。小売業者は広告を打つのではなく、価値のあるコンテンツを提供し、顧客の生活を向上させることに注力すべきです」と、モーガン氏は主張しています。
キャプテラの調査結果でも、SNS上で潜在顧客に大量の広告を提供すると、広告疲れを引き起こす可能性があり、顧客を惹きつけるための最善の方法とは言えないことが示されています。過去1年間で、世界中のオンラインショッピングユーザーの39%がSNSで特定の広告をブロックし、29%が企業をブロックまたはフォロー解除しています。
その一方で、多くのオンライン消費者にとってカスタマージャーニーがSNSから始まるという点で、カスタマーエクスペリエンスにおいてSNSは重要な役割を果たします。つまり、顧客からのメッセージに直接返信したり、顧客との直接的な関係を維持したりすることで、個人レベルでのカスタマーインタラクションを促進できるのです。
では、小売業者はどのようにSNSを活用してカスタマーエクスペリエンスを向上させることができるのでしょうか?いくつかのアイデアを以下に紹介します。
- SNSを活用して顧客の声に耳を傾ける SNSのチャネルは、フォロワーからのフィードバックを収集できる最適な場所です。収集したデータは商品やサービスの改善に役立てることができます。SNS、ブログ、掲示板、口コミサイトなどのソーシャルメディアの情報を収集・分析できるソーシャルリスニングツールを利用すれば、SNSやオンラインプラットフォームでの自社ブランドに対する評価や意見を監視・分析できます。
- カスタマージャーニーに役立つコンテンツを作成する 顧客は、商品やサービスの購入を決める前にさまざまな疑問を解消したいと考えています。そのため、顧客をカスタマージャーニーの次の段階へと導くために役立つコンテンツを提供することが大切です。「例えば、米国のアウトドア用品大手のREI社は、アウトドア用品を単に販売しているだけではなく、アウトドアを体験するために必要なあらゆる情報を顧客に発信しています」とMorgan氏は説明しています。
- 製品やサービスを購入した顧客が抱えている問題を解決する 消費者が電話でカスタマーサポートを受ける時代は過ぎ去っています。今では、SNSがその役割を担っています。
さまざまなSNSプラットフォームで顧客に対応することは、特に中小規模の小売企業にとっては容易ではありません。ブランド管理ツールを利用すれば、このような顧客対応を簡単に行うことが可能になります。ブランド管理ツールは通常、単一のダッシュボードから複数のSNSプラットフォームへの投稿をスケジュールして公開し、ユーザーの反応に対応するSNS管理機能を提供しています。また、多くの製品は顧客からの反応を分析する機能を備えており、顧客の嗜好に基づいてエンゲージメント戦略を向上させることができます。
3. ネガティブなコメントも受け入れ、利用者レビューへの対応策を講じる
「自社のブランド力が一時的に低下するリスクがあっても、ユーザーからのレビューを積極的に収集することは、競争力を高めるために非常に重要です」とMorgan氏は指摘しています。
事実、ユーザーのレビューは、商品やサービスを購入する際の最も重要な決定要因であると考えるオンライン消費者は57%に上ることが、キャプテラの調査で明らかになっています。
否定的なレビューがブランドの評価に悪影響を及ぼすのではないかという懸念があるのは当然です。しかし、ユーザーレビューは売上を増やす貴重な機会として捉えるべきだと、Morgan氏が主張しています。
「肯定的なレビューにも否定的なレビューにも対応することで、顧客一人ひとりとの関係を改善できるだけでなく、カスタマーエクスペリエンスを本当に重視していることをすべてのユーザーに示すことにもなります。否定的なレビューを削除するのではなく、製品やサービスを改善するためにその知見を活用することが重要です」。
では、小規模な小売業者がオンラインレビューや口コミ評価を管理するための最善の戦略とは何でしょうか?いくつかのヒントを紹介します。
- 顧客が使用しているプラットフォームを特定する 小規模な企業は、大規模企業が対象としていないニッチなコミュニティにサービスを提供していることが多いです。顧客のデモグラフィック (年齢や性別などの属性) を把握することで、自社の顧客基盤とつながるためにどのプラットフォームを使用すべきかを判断するのに役立ちます。
- オンラインでの企業の評判を追跡する オンラインでの自社の評判を監視および管理するための最良の方法は、評判管理ツールやSNSモニタリングツールを使用することです。Googleアラートを設定して、自社に関するニュースやメンションをメールで受け取ることもできます。
- 自社へのメンションやコメントに対応する 自社へのメンションやコメントを特定できるようになったら、それらすべてに対応し、お客様のフィードバックにお礼をしたり、必要な場合には具体的な行動を取ったりすることが重要です。
売上を飛躍的に伸ばすCX戦略を成功させる秘訣は、顧客との人間的なつながり
適切なテクノロジーに投資し、SNSの活用方法を工夫し、オンラインレビュー戦略を立てることが、結果的に多くの顧客を惹きつけ、売上を伸ばすことにつながります。しかし、これらの戦略を推進するためには、適切な人材を採用することが不可欠です。
「人への投資はかつてないほど重要になっています」とMorgan氏は言います。「笑顔が伝わるような声で、お客様と親身に対話できるスタッフを見つけることができれば、ブランドの魅力が一段と高まります。こうしたスタッフの対応は、すべての企業が目指すべきものです。つまり、顧客と企業との壁を取り払い、利便性を高めることです」。
調査実施方法
*キャプテラの「2024年オンライン消費者の実態調査」は、2024年4月に回答者5,585 名 (米国n=500、カナダn=500、ブラジルn=497、メキシコn=470、英国n=499、フランスn=271、イタリアn=496、ドイツn=496、スペインn=359、オーストラリアn=497、インドn=500、日本n=500) に対してオンラインで実施されました。調査の目的は、最近のネットショッピング行動を明らかにすることです。対象者は、月に数回以上ネットショッピングしていることを条件に抽出しました。
注:本記事で掲載されている製品のスクリーショットは、各機能の例として取り上げられており、勧誘・推奨を意図したものではありません。
出典一覧
- Blake Morgan, LinkedIn