近年の急速なデジタル化の中、オンラインレビューや口コミはどのような役割を果たしているのか。消費者目線でのアンケート調査から現状を検証する。

消費者のオンラインレビューに対する意識

インターネット時代の到来以前から、顧客の意見や満足度がビジネスに多大な影響を及ぼすことは知られています。しかし、情報技術が著しく発達した今日においては、 消費者同士の意見交換が活発化し、購買行動のプロセスが大きく変わってきました。

オンラインで買い物することが日常的になって久しいですが、コロナ禍の 外出自粛によりネットショッピングの普及をさらに加速させました。多くの消費者は、欲しい商品に関するカスタマーレビューや口コミ評価を収集し、 その情報をもとに比較検討してから購入を決めています。しかしその一方で、 EC大手アマゾンの不正レビュー騒動により、オンライン評価に対する不信感が募りかねない事態となり、 その対策の重要性が一層強く認識されるようになりました。

このような最新の動向を踏まえた上で、キャプテラでは、オンラインレビューを参照した経験のある 国内 消費者 603人を対象にアンケート調査を行いました (調査の概要は文末)。この記事では、その調査結果から見るカスタマーレビューの利用状況を紹介し、オンラインレビューに対する消費者の意識を探ります。また、潜在的顧客を失わないために企業が取り組むべき レビュー管理の効果や課題について説明します。

オンラインレビューの信頼性は健在: 77%が「参考にする」

消費者が商品やサービスを目にしてから購入に至るまで には 、様々な情報を吟味して検討するという重要なプロセスがあります。機能や特徴が自分のニーズに合うかどうか、使用上の 長所・短所 など、なるべく正確な情報を知ることにより、購入行動が大きく左右されます。そこで、情報源の信頼性を見極めることが大きなポイントになります。

情報の発信方法やチャネルが多様化する中で、購入する際に最も信頼される情報源は何でしょうか。本調査で最も回答が多かったのは「オンラインのカスタマーレビュー・口コミ評価 」35%で、次いで「友人や家族からの情報 」20%、「専門家による体験談 」18%と続きました。「インフルエンサーやブロガー」と「芸能人などの著名人」はそれぞれ2.5%未満と低い信頼度を示しています。

購入前にどの程度オンラインレビューを参考にするかと質問したところ、「ある程度参考にする 」58%と答えた人と、「大いに参考する 」19%と答えた人を合わせて77%となり、回答者の7割以上がカスタマーレビューを購入の参考材料としている結果となりました。

消費者がオンラインレビューを参考にする度合い

オンラインレビューの中でも、従来の文章で書かれたレビューに加え、現在は動画レビューやSNS上での書き込みなど、様々な形式のものがあります。消費者のお好みのレビュー形式についてたずねたところ、ダントツ多かったのは「利用者による文章で書かれたレビュー 」(71%) でした。

投稿時期はそれほど重要ではないが、一定程度の数が必要

このように、オンラインレビューは消費者にとって重要な情報源 であることが 分かりました。それでは、どのような要素がレビューの信頼性につながるのでしょうか。続いて、文字形式のレビューに絞って、評価件数や投稿時期に関していくつか質問をしました。

ここで少し意外な結果が出ました。それは、投稿された時期は「特に気にしない」と回答した人が31%で一番多かったことです。実は、当社で同じサーベイを他の国 (フランス、メキシコ、ドイツ、カナダ、英国) でも実施したのですが、投稿時期にこだわらない回答が優勢なのは日本のみでした。

消費者のオンラインレビューに対する意識 - 国際比較

ただし、レビューの新鮮さは情報収集に全く影響しないというわけではありません。投稿時期にこだわりを示した416人のうち、「 過去1〜3ヶ月以内に投稿されたもの」が参考になると答えた人は 43% (全回答者の30%)、「 過去6ヶ月以内に投稿されたもの 」と答えたのは34% (全回答者の24%) となり、古ければ古いほどレビューの参考価値が格段と落ちてしまいます。

一方、レビューの件数に関しては、ある程度あったほうが信頼度が増すように感じられます。「製品・サービスを信頼するために必要なレビュー件数」をたずねたところ、 最も多かったのは「6件から20件」(37%) で、次いで「1件から5件」(23%) でした。 また、「ひとつの製品・サービスの購入を決めるまでに、何件くらいのオンラインカスタマーレビューを参考にしますか?」という質問に対して、半数以上 (53%) が「2件〜5件」参考にすることが明らかになりました。

さらに、製品のランク、星数などといった評点は重要な判断材料になりますが、レビュー件数と天秤にかけた場合、優先度が下がる傾向があります。アンケート対象者に以下の2つの製品・サービスのうち1つ購入するとしたら、どちらを選ぶかを聞きました。

  • A品:評価件数が5件で、口コミ評点が5点(5点満点中)
  • B品:評価件数が15件で、口コミ評点が4点(5点満点中)

最高点ではなくても評価件数の多い「B品」は64%の回答率を得ており、評点5点の「A品」(36%) を2倍近く上回りました。実際に全てのレビューが読まれなくても、件数を集めることが信頼性につながることを示唆する結果となりました。

オンラインレビューを獲得する方法
– 電話、メール、チャットでの対応の最後に、お客様にレビュー投稿を直接お願いする
– 商品・サービスの購入後、 レビュー依頼のメールを送信する
– 商品・サービスの購入後、外部のレビューサイトへのリンクを含むメールを送信する
– 自社サイトに、レビュー投稿ページへのリンクを掲載する
– 商品を配送する際に、レビュー投稿の案内チラシを同封する
– ニュースレターの購読者に案内メールを配信する
– SNSに書き込みをする
– サイトやアプリにポップアップを表示させる
– 展示会などのイベントで案内する

ネガティブなレビューにも価値がある

レビューの閲覧行動について、さらに掘り下げて質問することにしました。肯定的なレビューと否定的なレビューの重要度に関しては、特に大きな差は確認されません でした。複数のレビュー投稿がある場合、最初にチェックするのが「最近のレビュー」であると答えた人は36%で、「ポジティブなレビュー」と「ネガティブなレビュー」はそれぞれ16%の回答者が挙げています (残りは「特に順番はない」と回答)。

また、下記のグラフから分かるように、ポジティブなレビューとネガティブなレビューでは、信頼度の差はほとんどないようです。半数以上は「どちらも同じ程度信用する」と回答し (56%)、「ネガティブなレビュー」 (24%) と「ポジティブなレビュー」 (20%) は同程度の回答を得ています。

消費者から見た肯定的レビュー・否定的レビュー

最後に、前述した偽レビュー騒動が取り上げられている中、カスタマーレビューの信憑性がどの程度疑われているかを検証しました。ネットショップなどに掲載されているカスタマーレビューのうち、いわゆるフェイク (やらせ) レビューはどの程度あると思うかという質問に対して、「半分以下」 (37%) が最も多く、「半分程度」 (36%)、「半分以上」 (14%) と続きました。

こう見ると、信憑性はあまり損なわれていないと結論づけることができますが、消費者は本物のレビューを見極めるためにどのような点に気を付けているのでしょうか。「長所と短所をバランスよく評価していること」 (47%)、「売り手に対して ネガティブなレビューもあること」 (43%)、「信頼できるレビューサイトに掲載されていること」 (38%) が上位3位を占めました。

本物のレビューを見分けるためのポイント

以上の結果から、肯定的・否定的なレビューがまんべんなく掲載されていることによって、製品・サービスに対する信用が向上すると考えられます。ここで鍵になるのは、否定的なレビューが投稿された際の企業側の対応です。普段、レビュー投稿に対する 企業の返答を読む人は全体の約7割 (71%) でしたが、そのうちのほぼ半数 (全体の35%) は「レビューの良し悪し関係なく、全ての返答を読む」と答えています。

企業の課題とレビューの活用方法

大半の消費者はレビュー投稿だけではなく、その返答にも注意を払っていることを考えると、ビジネスにおいて適切なレビュー管理は重要であることは想像に難くないでしょう。しかし、オンラインレビューに対するメーカーや企業の姿勢について、「レビューをある程度重視しているが、十分ではない」と感じている回答者が63%で圧倒的に多かったです。 カスタマーレビューの効率的な管理を可能とするツールが多数存在するものの、ビジネスオーナーの対応にまだまだ改善の余地があることを示しています。レビューの効果的な活用に取り組みたい企業は、ぜひ以下のポイントを参考にしてみてください。

オンラインレビュー活用の基本ステップ

– レビュー管理ソフトの導入 オンラインレビューの収集から管理までを自社で一貫して行うには、 カスタマーレビュー管理ソフトウェアの導入が必須となります。様々なプラットフォームにおけるレビューをモニタリングし、体系的な対応策を構築することができます。

ソーシャルメディアのモニタリング レビュー管理の取り組みの一環として、 ソーシャルメディアに特化した追跡ツールを利用することも良いでしょう。SNS上でのキャンペーン実施、複数アカウントの一括管理など、大変便利な機能を備えています。

オンライン・レピュテーションの管理 ブランドや製品に対するインターネット上のイメージのことを「オンライン・レピュテーション」又は「オンライン評価」と言います。多くの オンライン評価管理ソフトにはレビュー管理機能が搭載されているので、ブランドイメージを強化する取り組みの一環としてレビューを利活用することも一手です。

消費者が求める理想的なオンラインレビュー

本調査の結果から、カスタマーレビューは購入決定に役立つ有益な情報源であり、消費者はレビューを積極的に利用していることが明らかになりました。一方、企業側はレビューの可能性を十分に活かしていないことが課題となっています。最も好まれるレビュー形式や、製品の信頼性につながる投稿件数など、今回導き出された消費者にとっての「理想的なオンラインレビュー」の特徴を今一度確認し、ぜひお役立てください。

消費者のオンラインレビューに対する意識調査のまとめ
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調査概要

本記事は、当社が実施した「 オンラインカスタマーレビューに関する調査 ──消費者アンケート」 の結果をまとめたものです。調査期間は2022年3月23日〜4月4日、全国のモニター704人に対してオンラインで実施しました。有効回答数は603人でした。以下の条件に合致する方を対象としました。

  • 日本在住者であること
  • 18歳以上であること
  • 製品・サービスを購入する前にカスタマーレビューを参照した経験があること

日本の人口構成を反映するようサンプリングされています。なお、本文で言及されている国際調査は次の通り実施されました:フランス (2022年2月8-12日実施、回答者数603人)、メキシコ (2022年2月18-28日実施、回答者数631人)、ドイツ (2022年4月5-16日実施、回答者数603人)、カナダ (2022年4月4-18日実施、回答者数608人)、英国 (2022年4月4-12日実施 回答者数599人)。