カスタマーサービスの最大の課題は「人手不足」 中小企業従業員42%が指摘する

2022/7/7 投稿者: Alberto Sakai

「カスタマーサポートと顧客体験に関する評価調査」の第2弾では、企業側から見たカスタマーサービスの現状と課題を紹介する。

中小企業から見たカスタマーサポートと顧客体験

数多くの製品やサービスが競合する中、優れたカスタマーサービスを提供する企業は、顧客の満足度や信頼性を獲得する機会を格段と広げることができます。しかし、ガートナーが示唆するように、昨今の競争力強化とデジタル技術の高度化と相まって、新型コロナウイルス感染症の影響により、 顧客応対業務を取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。 

  このような状況を踏まえて、キャプテラでは「カスタマーサポートと顧客体験に関する評価調査」を実施しました。前回の記事では、 当調査の消費者側アンケートの結果を報告し、企業のカスタマーサービスに対する顧客の意識を明らかにしました。 第2弾となる今回は、企業関係者から得たアンケート結果をご紹介します。 カスタマーサポートの提供方法と効果はどうなのか、 知識ベースチャットボットがどれだけ浸透しているのか、などを問いました。アンケートの対象となったのは250人規模までの中小企業にお勤めの従業員ですが、その企業が顧客サポートサービスを提供しており、かつ回答者がカスタマーサービスと関連のある部署に所属していることを条件としました。 (調査の概要は文末をご覧ください)

有効回答者は404名で、属する主な業界は情報技術・通信業界 (18%)、小売業 (15%)、製造業 (13%)、金融サービス (6%) となりました。

企業が提供するCSチャネル

企業が提供するカスタマーサポートの中には、従業員が顧客に応対する手段と、応対を自動化する手段があります。

顧客に応対するためのチャネル ・電話 ・自由形式の電子メール ・オンラインフォーム ・ライブチャット ・ソーシャルメディア 応対を自動化するチャネル ・オンライン・ドキュメンテーション:知識ベース、FAQ ・チャットボット

まずは、直接応対のチャネルの利用状況を確認しましょう。

消費者アンケートでは、カスタマーサポートを受ける際に最も望ましいチャネルとして「電話」を選択した回答者が過半数を占めていました。それと同様に、90%もの従業員が、自社が最も利用するチャネルとして電話を挙げており、次いで電子メール (62%) とオンラインフォーム (27%) という結果となりました。

最も利用されるカスタマーサービスのチャネル

オンライン・ドキュメンテーションとチャットボット

あらゆる産業で デジタルトランスフォーメーション (DX) が推進され、業務プロセスの効率化が謳われる昨今ですが、カスタマーサービス業務でそれを実現するためにはオンライン・ドキュメンテーションチャットボットの活用が注目されています。特に AI (人口知能) の導入により、顧客体験 (CX) の向上やコスト削減が期待できます。オンライン・ドキュメンテーションとは、予め用意されたFAQ (よくある質問の回答集) や知識ベース (検索可能なマニュアルなど) を利用することにより、ユーザーが自分で問題解決できる手段です。またチャットボットとは、通常はAIをベースとした、ユーザーと自動的にやり取りをして問題解決を支援するソフトウェアのことです。

本調査でこの両チャネルの利用状況を尋ねたところ、意外にも6割以上が自社は「どちらも行なっていない」という結果となりました。「両方のサポートを行なっている」と答えた従業員は14%で、オンライン・ドキュメンテーションのみが18%、チャットボットのみが7%でした。続いて、「どちらも行なっていない」 (61%) と回答した者を除いたうえで、オンライン・ドキュメンテーションとチャットボットがどのように活用されているかを見ていきましょう。

「あなたの会社がオンライン・ドキュメンテーションやチャットボットを導入した主な理由は何ですか」という質問に対して、業務の自動化などの「効率化のため」(45%) が最も多い回答でした。しかし、まだ十分な効果を発揮していないのが現状です。「導入組」企業の社員の中でも、64%は顧客のニーズをカバーするにはオンライン・ドキュメンテーションやチャットボットは不十分であり、もっときめ細かなカスタマーサポートが必要だと感じています。また、約半数の回答者は、別の手段でお問い合わせが来ることがまだあると報告しています。

オンライン・ドキュメンテーションのカスタマーサービス効果

オンライン・ドキュメンテーションに改善の余地があることが分かりましたが、別の観点からデータを分析すると、高いポテンシャルを秘めていることが明らかになります。過去2年間で顧客からのお問い合わせが減少したと答えた従業員 (全回答者の13%) のうち、その原因として最も多く挙げられたのは「大抵のお問い合わせ内容は、オンライン・ドキュメンテーションでカバーされている」(41%) という回答です。従って、 オンライン・ドキュメンテーションのツールは業務の効率化に一定の貢献をしていると結論づけても良いでしょう。

国際比較から見える「日本式」カスタマーサービス

日本の中小企業によるカスタマーサービスへの取り組みは、グローバルに共通するものが多いですが、日本特有の傾向もあります。続いて、当社がブラジル、ドイツ、オーストラリアで実施した同様のアンケートの結果と比較しながら、我が国の特徴を確認していきましょう。

まずは、カスタマーサービスに対する顧客の意見・フィードバックの収集方法について、日本の場合は「評価・フィードバックの収集や確認は行っていない」という回答が圧倒的に多いのが目立ちます (48%)。他の3カ国は、いずれも約半数が「電子メールで顧客満足度調査を送信する」と答えています。

顧客の意見・フィードバックの主な収集方法 ・電話応対の最後に尋ねる ・電子メールで 顧客満足度調査を送信する ・自社サイトにコメント欄を設ける ・ ソーシャルメディア上の書き込みを確認する ・外部のレビュープラットフォームで口コミ投稿を確認する

フィードバックを収集する場合においても、国によってポジティブな意見とネガティブな意見の割合に差が現れました。日本以外の3カ国では「ポジティブなフィードバックが多い」と答えた人が各国とも6割以上で多数を占めています。他方の日本では、肯定的な意見と否定的な意見が「同程度」あると認識する回答者が多いです (39%)。

また、ネガティブなフィードバックがあった場合の対応に関しては、日本はドイツ、オーストラリアと同様に、「お客様に謝罪する」ことが一番多い回答となりました。ブラジルでは、謝罪するより「原因究明のための調査を行う」ことが重要視されています。

カスタマーサービスに対する顧客の意見

良いカスタマーサービスとは? 企業の悩みと今後の展望

さて、日本に話を戻します。これまで、カスタマーサービスに関していくつかの課題が見えてきましたが、当事者 (中小企業の従業員) はどのように感じているのでしょうか。代行サービスなどに頼らず、IT技術を駆使しながら、自社でCS業務を行い続けられるのでしょうか。

一般的には、楽観視する見方が多いようです。「自社のカスタマーサービスについてどの程度満足していますか」の質問に対して、47%の従業員が「やや満足している」と回答しており、「非常に満足している」と答えた6%を合わせると、過半数が肯定的に評価しています。

自社のカスタマーサービスへの従業員の満足度

カスタマーサービスの運用における主な課題については、42%の回答者が「人手不足」を指摘し、次の「顧客対応のプレッシャーによるスタッフの疲労」や「お問い合わせ対応の標準化不足」(両方とも17%) を大きく上回っています。

この問題を解消するために考えられる一つの有力な方法は、ビジネスプロセスの合理化・自動化を支援してくれるソフトウェアを導入することですが、実際にはどのようなツールが利用されているのでしょうか。カスタマーサービス業務で使用される支援ツールの上位5つは、下記の通りになりました。

・無料メッセンジャーアプリ、電子メール 49% ・カスタマーサービス用ソフト 12% ・カスタマーサポート用ソフト 11% ・コールセンター用ソフト 11% ・CRMツール 11%

業務量が少ない場合は1位の「無料メッセンジャーアプリ、電子メール」での対応で十分かもしれませんが、今後のチャネルの拡充や、デジタル化のさらなる進展を考慮すると、業務プロセスをより最適化する仕組みを検討する価値があるでしょう。ぜひ、業界のトレンドと顧客の期待を把握しつつ、自社のニーズにあった 技術スタックの実現に注力していただきたいところです。

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調査概要

本記事は、当社が実施した「 カスタマーサポートと顧客体験に関する評価調査  ──中小企業アンケート」 の結果をまとめたものです。調査期間は2022年4月14日〜27日、全国の中小企業に勤める従業員に対してオンラインで実施しました。有効回答数は404人でした。以下の条件に合致する方を対象としました。

  • 日本在住者であること
  • 18歳以上、66歳未満であること
  • 251人未満の中小企業に勤めていること (正規・非正規雇用問わず)
  • お勤めの会社が顧客サポートサービスを提供していること
  • 以下のいずれかの部署に所属していること
    • 小売
    • IT、テクニカルサポート
    • カスタマーサポート
    • マーケティング
    • 販売・セールス
    • 広報
    • コミュニティマネージャー

なお、本文で言及されている国際調査は次の通り実施されました:ブラジル (2022年4月14日〜22日実施、回答者数408人)、ドイツ (2022年5月2日〜18日実施、回答者数440人)、オーストラリア (2022年4月25〜30日実施、回答者数400人)。

この記事で言及されている製品、プログラム、サービスは、国によっては提供されていないか、法令や規制により制限されている可能性があります。製品の提供状況や、国・地域の法令遵守に関しては、ソフトウェア・プロバイダーに直接お問い合わせください。

筆者紹介

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。