優れた技術スタックの構築方法

2022/2/23 執筆者: Bandita AwasthiおよびAlberto Sakai

技術スタックの適切なツール選びに悩んでいませんか?
自社に最適なSaaS製品を選ぶ方法を紹介します。

優れた技術スタックの構築方法-Capterra

現在は、ソフトウェアを使用せずにビジネスで成功するのは不可能と言っても過言ではありません。企業規模を問わず、事業成長を目指すならソフトウェア製品の活用は必須のものとなっています。

2019年にIDaaS企業のOktaが行った調査(英語)によると、2018年に中小企業が使用したソフトウェアの数は平均73個、大企業の場合は平均129個にのぼります。もちろん、他社に合わせて数を増やす必要は全くありません。ただし、使用するツールの組み合わせを見直すことで、業務改善や効率化を図ることができます。この「ツールの組み合わせ」が、企業の「技術スタック」と呼ばれるものです。

技術スタックとは?

技術スタックまたはテクノロジースタック(略してテックスタック)とは、特定のビジネス目標を達成するために協働する、クラウドベースのソフトウェアツール(SaaS)の組み合わせです。これらのツールは、互いに緊密に統合されている場合もあれば、統合されていなくてもうまく機能する場合もあります (エクセルのような表計算ソフトがその一例です)。

また、マーケティング向けの技術スタック、アプリ開発向けの技術スタックなど、社内に複数のテックスタックが存在することもあります。

しかし、効果的な技術スタックを構築するには、ただ気に入ったソフトを選んで導入すれば良いという単純な話ではありません。まずはいくつか問うべきポイントがあります。自社にはどのようなソフトウェアツールが必要なのか。どのビジネスプロセスを自動化するメリットがあるのか。長期的に見て、それらのツールは自社に適しているのか。そして最も重要な点は、採用したツール群がうまく連携できるのかどうかです。

端的に言うと、アプリケーションを安易に購入するのはNG。スタック構築には「計画」と「戦略」を立てることが不可欠なのです。

本記事では、技術スタックを構築するための手順を4ステップで紹介しながら、自社に適したソフトウェア製品を選ぶ際の留意点を説明していきます。

優れた技術スタックの構築方法4ステップ

ステップ1:自動化すべきプロセスを見極める

自動化すべき業務プロセスを見つけ出すには、まずは主要な業務プロセスを書き出してそれぞれを作業に細分化してみてください。各作業を付箋などに書き出してリストアップしてみるのもおすすめです。

続いて、一つの業務の中でそれぞれの作業がどのように関連し合っているのか、また他の業務とどのように関連しているのかを確認し、非効率的な部分を特定します。その際に以下の質問を考慮してみてください。

  • どの作業がその業務プロセスの中でより時間がかかっているのか。
  • 「承認」や「確認」を必要とすることが多すぎないか。
  • 10以上の段階が必要な長すぎる業務プロセスはないか。それを簡略化することはできないか。
  • 業務プロセスにほとんど貢献していない省略可能な作業はないか。
  • 作業を止めている障害はないか。

これらの質問に答えることで、業務遂行の効率が低下している箇所を特定することができます。この非効率的な箇所は、逆に言うと、自動化のチャンスを意味します。

プロからのアドバイス
自動化すべき作業工程を見つける際は人的要因を考慮に入れましょう。例えば、複雑すぎる作業では人的ミスが発生しやすくなります。また、透明性を保つために共有した作業ドキュメントが最新のものに更新されていなかったり、古くなったコンピュータシステムを使っていることにより費用がかかりすぎていることがあります。
このような側面を念頭に、リスクや非効率性の全体像を把握するようにしましょう。

ステップ2: 業界特化型とプロセス特化型から選択する

技術スタックを構築する際に、特定の業界向けのツールを選ぶか、その作業に特化したツールにするかで悩むことがあると思います。

業界特化型のツールは、業界のベストプラクティス (最善の方法) に基づいて設計されています。一方、プロセス特化型ツールはセットアップがより簡単で、すぐに使い始めることがでできるのが特徴です。業界特化型のほうが高価になる傾向がありますが、プロセス特化型のソフトウェアは既製品が多いため、細かなカスタマイズは期待できません。

代表的な業界特化型ツールの中には、 eコマースバンキングシステムのソフトウェア、 施工管理アプリなどがあります。特定の業務プロセス向けのツールとしては、 請求書ソフトウェアMA(マーケティング自動化ツール)、 CRM (カスタマーリレーションシップマネジメントツール) などが挙げられます。

適切なツールを選ぶには、自社のコアとなる事業の課題に焦点を当て、その業界に特有の課題であるかどうかを考えることが大事です。例えば、金融業界でローン組成において大きな課題を抱えている場合は、ローン組成ソフトウェアを導入すると良いでしょう。他方で、請求書管理やリード生成など、多くの業界に共通する業務の場合は、個々の業務に合ったプロセス特化型ツールを使うことで問題解決につながります。

プロからのアドバイス
ソフトウェア選びで考慮すべきポイントは他にもあります。例えば、オールインワン型のプラットフォームにするか専門的なツールにするか、 パッケージ製品にするかスクラッチ開発にするかなどの選択肢があります。そのような選択の際には、コア事業の課題以上に、運用上の制約 (プロジェクトのスケジュール、リソースのキャパシティ、IT予算額など)が決め手になることが多いでしょう。

ステップ3: ユーザーレビューで同業他社からの評価を参考にする

ユーザーレビューを有効活用するには、以下の手順を踏むことをおすすめします。

  • 業界や業務を絞ってレビューを検索する。似た課題を持った企業のレビューが確認できるはずです。
  • 製品のメリットデメリットを確認する。問題解決に必要な機能が欠けているか確認できるかもしれません。
  • 複数のレビューに共通する点を見出す。特定の機能や、インターフェース、使いやすさなどに関する苦情や称賛に、一定のパターンがないかチェックしてみてください。多くのユーザーが同じ問題を経験していれば、また起きる可能性があるわけです。
プロからのアドバイス
信頼性の高いユーザーを探してみましょう。そのユーザーの体験を知るだけでなく、疑問点・不明点に答えてもらえるかもしれません。例えば、製品のカスタマイズの有無とのその理由について聞いたり、導入に必要な作業を確認したり、気になることを直接質問することができます。

ステップ4:長期的に計画を立てる

技術スタック構築でもう一つ重要なことは、将来的なニーズをしっかりと考えることです。つまり、事業が成長する中で、テックスタックが却って妨げにならないように先のことを見据えた計画性が大事です。

途中でソフトウェアを変えなければいけないというようなことを避けるためには、その製品が以下の特徴を備えているかを最初に確認すると良いでしょう。

  • カスタマイゼーション カスタマイズ可能なソフトウェア・プラットフォームでは、事業のニーズに応じてツールに変更を加えることができます。例えば、新しい商品やサービスを提供することになれば、追加の機能が必要になることがあります。それに対応できるように、さまざまなカスタマイズ・オプションを提供するプラットフォームがあります。
  • スケーラビリティ ビジネスの規模や地域の拡大に伴い、管理すべきデータも増えていきます。採用したアプリケーションは、増大するデータに対応できる拡張性を備えている必要があります。
  • インテグレーション 技術スタックに含まれるツールは、サードパーティとの統合を容易にしなければなりません。それにより、スタック間の円滑なデータ交換が可能となり、協調した作業を行うことができます。
  • 手頃な価格 事業ニーズによって価格が変動する製品の場合、費用がかさむ危険性があります。現在の価格設定だけでなく、将来の価格設定についてもベンダーに確認しておきましょう。
プロからのアドバイス
これらの事項を検討する中で、導入を考えているソフトウェアに関係のあるチームも意思決定のプロセスに参加してもらうといいでしょう。業務プロセス向けのツールであれば、関連チームの特定は難しくないはずです。業界特化型ツールの場合は、事業の最優先課題に最も近い領域のチームを探しましょう。
これらのチームと相談することで、業務プロセスに関する貴重なインサイトが得られます。マーケティング分野におけるニーズの見通しを最も的確に把握しているのは、当然ながらマーケティングの部署やチームです。その見通しを踏まえた上で、マーケティング技術スタックに含まれる メールマーケティングのようなツールに、今後何を求めていくのかを考えることができます。

その後の流れ

ソフトウェアに求めるものとその判断基準をしっかりと確認したのちに、最終的な決定を行うことができます。その手順はこちらです。

  • 候補リストを作成する まずは3〜5製品の候補リストを作成します。
  • 実際に体験する 候補リストの中から、無料トライアルを提供するベンダーを確認します。無料トライアルとはツールを実際に体験する機会のことですが、事前に懸念事項等を明らかにするために役立ちます。
  • デモ版を入手する 無料トライアルがない場合は、デモ版を予約してみましょう。ツールの機能をより詳しく知ることができ、ベンダーに相談もできます。デモ版を使う前に、既にリサーチを済ませ、基本的な質問リストを用意しておきましょう。

ツールの性能を検証し、ベンダーへの相談が終わりましたら、いよいよ最終決定の段階に入ります。ツールを購入する前には、ベンダーと契約条件について話し合い、支払いプランや割引制度を確認しましょう。また、ベンダーのアフターフォローの範囲を明確にしておくことも大切です。

おめでとうございます!これで自慢できる技術スタックを構築しました。リサーチに多くの時間を費やしてきましたが、そのおかげでより高い効率性と費用対効果が期待できます。

キャプテラの SaaSカテゴリーリストから、あなたのビジネスに最適なツールを見つけてください。

この記事で言及されている製品、プログラム、サービスは、国によっては提供されていないか、法令や規制により制限されている可能性があります。製品の提供状況や、国・地域の法令遵守に関しては、ソフトウェア・プロバイダーに直接お問い合わせください。

筆者紹介

バンディタ・アワスティー。元アナリスト。過去にキャプテラにて記事執筆。

バンディタ・アワスティー。元アナリスト。過去にキャプテラにて記事執筆。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。