消費者の3割が、悪いカスタマーサービス体験で「特定ブランドからの購入をやめた」

2022/6/29 投稿者: Alberto Sakai

キャプテラが独自で実施した「カスタマーサポートと顧客体験に関する評価調査」。今回の第1弾では、顧客が求めるエージェントの資質や、各チャネルの長所短所など、ユーザー側の意見をまとめて報告する。

消費者から見たカスタマーサポートと顧客体験

カスタマーサービスは顧客体験 (CX) の重要な構成要素であり、ビジネス上の差別化要素でもあります。元々きめ細かなサービス精神を重んじる日本ですが、近年のデジタル化や消費行動の変化に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、カスタマーサービス (CS) に求められること、期待されていることも変わってきたはずです。このような最新動向の正確な把握は、カスタマーエクスペリエンスの観点からも、 ブランド管理の観点からも、とても重要なことです。

これを背景に、キャプテラでは「カスタマーサポートと顧客体験に関する評価調査」を実施しました。当調査は、消費者アンケートと企業 アンケートの2部構成になっており、今回は消費者側の回答結果をまとめて紹介します。 企業のカスタマーサービスを利用したことのある 国内 消費者688人に対してオンラインで実施し、614人の有効回答を得ました。 (調査の概要は文末をご覧ください)

【用語の定義】

顧客に対するサービス全般を「カスタマーサービス」と呼びますが、その中には大きく分けて「カスタマーサポート」と「ヘルプデスク」があります。

・  カスタマーサポートとは、製品・サービスを購入中または購入前後に、顧客に対してサポートを提供することです。

・  ヘルプデスクとは、顧客の技術的な問題、IT関連のトラブルを解決するためのサービスです。

いずれも、様々なチャネル (電話やメール、ライブチャット、チャットボットなど) を通じてサポートを提供することができます。

各チャネルのメリット・デメリットの比較

デジタル技術の発展により、カスタマーサービスを提供する企業と、それを受ける顧客との接点が多様化しています。調査対象者には、利用者の立場から各チャネルのメリット・デメリットを教えてもらいました。

本稿では、カスタマーサービスのチャネルを以下のように分類しています。

電話 顧客応対業務の代名詞とも言える、従来の 電話サポート。外部のコールセンターや自社ヘルプデスクを含む。 ライブチャット リアルタイムで、 文字形式のチャットを行うためのツール。チャットボットと違い、生身の人間が対応する。 文章でのお問合せ 電子メールやオンラインフォーム、 ソーシャルネットワークにおける文字形式の対応。 オンライン・ドキュメンテーション 顧客に役立つ情報を予め文章としてまとめたもの チャットボット  エージェントではなく、自動的にメッセージが生成される自動応答ツール

続いて、回答者によって挙げられた長所・短所を確認していきましょう。

電話

電話は、とにかく「速さ」がポイントになる手段です。しかし、その反面、多く待たされる可能性が一番の懸念事項となっています。

電話応対の利点として最も回答数が多かったのが「問題を説明しやすい、質問しやすい」(73%) で、次いで「効率よく問題を解決できる」(54%)、「問題解決までの時間が短い」(46%) と続きました。

欠点として挙げられたのは、「長い時間保留にされる」(67%)、「余計な通話料がかかる」(60%)、「エージェントに問題解決能力がない可能性」(34%) です。

ライブチャット

ライブチャットの最も好まれる点は、その柔軟性にあります。ライブチャットがもたらす利点の中で、回答者の38%は「利用日や時間帯について、対応が柔軟である」こと、31%は「同時に他の作業ができる」ことを評価しています。

それに対して、52%は「説明が不明瞭で誤解が生じる恐れがある」と指摘しています。

文章でのお問合せ

電子メールや、LINE、Twitterのようなソーシャルネットワークを使うと、「やり取りの記録、証拠を残すことができる」点において優れていると感じられています (60%)。また、口頭で説明するより「文章のほうが内容を伝えやすい」と主張するユーザーも一定数存在します (36%)。

リアルタイムのコミュニケーションではない分、回答者にとってこのチャネルの一番のネックは「返事の待ち時間」(60%) と「返事が来ない恐れ」(46%) です。

ちなみに、文章でお問い合わせをするときに、ユーザーの期待する返信時間を聞いたところ、1日以内を限度とする回答者が6割に上りました。

文章での問い合わせ 期待される対応スピード

【用語の定義】

・ オンライン・ドキュメンテーションとは、顧客からの質問に対する回答を、企業サイト上で文章形式で提供することです。FAQと 知識ベースの2種類があります。 FAQとは、「よくある質問」に対する回答を提供するページを指します。知識ベースはFAQに似ていますが、通常はより詳細な情報を含むものを指します。

・ チャットボットとは、顧客の質問に答える目的で自動会話を行うソフトウェアです。人工知能を活用することがあり、人間の自然なやり取りを模倣するように設計されています。

オンライン・ドキュメンテーション

オンライン・ドキュメンテーションは、コミュニケーションを苦手とする人や、手間暇をかけたくない人にはありがたい手段でしょう。「人間とやり取りをする必要がない」(37%) ことと、「早く問題を解決できる」(32%) ことが利点として認識されています。

最も回答の多かった欠点は、「求めている内容が見つかりにくい」(56%) こと、および「よくあるトラブルしか扱っていない」(38%) ことです。

チャットボット

チャットボットの性能は日々向上していますが、まだ改善が必要なツールとして認識されています。長所は「日時を問わず利用できる」が59%で最も多く、短所は「複雑な問題や、具体的な問題を解決することができない」が51%で最多でした。

カスタマーサービスの各チャネルの比較

まだまだ選ばれる電話サポート

前項では、消費者が各チャネルの特質をどのように認識しているかが分かり、用途や目的による有効性の違いが見えてきました。しかし、顧客サポートのチャネルを選べるとしたら、ユーザーが最も利用したい手段は何でしょうか。

圧倒的に多く選ばれたのは、52%で従来の「電話」です。しかも、次に多かった回答が「エージェントとのライブチャット」(16%) と「自由形式の電子メール」(17%) であることを考えると、人間特有の即時性と問題解決能力が求められていることが分かります。「 電話でカスタマーサービスを利用する際に、どのタイプの声に対応してもらいたいですか?」と聞いた際も、人間の声を選ぶ回答者が、合成音声を選ぶ人を1:43の比率で上回っています。

そこで、電話 (または人間が対応するライブチャット) において、消費者が求めるエージェントの要素は何なのかを明らかにするために、いくつかの項目を重要度順に並べてもらいました。その中で最低評価がついたのは、「正しい敬語の使い方」と「愛想が良いこと」、つまり形式ばった対応はあまり重要視されていないことが分かりました。一方で、最も重要な要素として44%の回答者が「迅速な問題解決力」を選びました。

ユーザーが求めるカスタマーサービスエージェントの資質

この結果は、カスタマーサービスを利用する過程のユーザーエクスペリエンスと一致していると言えます。カスタマーサービスの経験についての自由記述では、「迅速な対応で安心感があった」ことや「親切丁寧だけでなく簡潔に疑問点を解決に導いてくれた」ことなど、つまりスピーディーで実用的な対応が「良い経験」と感じられる傾向があります。もちろん、エージェントの丁寧さや親身さは好感を呼びますが、「定型文のようなマニュアル応答」ばかりや「応用力がない」場合は、却って「悪い経験」につながります。

良いカスタマーサポートを提供する企業は? 

最後に、ユーザーにとってどのような企業がより良いカスタマーサービスを提供しているかを質問しました。業界、本社所在地、業歴でその結果を見ていきましょう。

カスタマーサービス先進業界は「通信・インターネットプロバイダ」

日常的に多数のお問合せを受けている業界こそ、より優れたカスタマーサービスを提供しているという結果が出ました。やはり、ノウハウの蓄積を活かした成果なのでしょう。トップ4の業界は「通信・インターネットプロバイダ」、「金融・銀行」、「観光・宿泊」、「エレクトロニクス・電子機器」となりました。

最も優れたカスタマーサービスを提供する業界

国内企業が優勢

「国内企業」のカスタマーサービス (47%) 対「グローバル企業」のカスタマーサービス (19%) の比較では、前者の圧勝となりました。これは、サービスの品質に関して、日本企業の優位なイメージが世間に深く根付いていることを示しています。ただし、良いカスタマーサービスの具体的な体験について尋ねると、グローバル企業に言及する回答も少なくないのが興味深いところです。

業歴による違いはない

会社の業歴に関しては、カスタマーサポートの評価に大きな差は見られませんでした。29%が「老舗企業」のほうがカスタマーサービスの質が高いと回答し、21%が「新興企業・スタートアップ」のほうが優れていると答えました。逆に、大半のユーザーは「特に違いを感じない」と回答しています (49%)。

信用は得難く失いやすい

パナソニックを創業した松下幸之助の名言に次の言葉があります。 「信用は得難く失いやすい」。信用はビジネスにおいて極めて大事なことですが、長い年月をかけて積み上げて行かなければならないものです。しかし、信用を得たと思って安堵してはなりません。ひょんなことで一気に吹っ飛んでしまうことが多々あり、大きな損害につながる場合もあります。

本調査でも、信用の維持の大切さを物語る数字が出ました。「良いカスタマーサービス」と「悪いカスタマーサービス」を経験した時に、その後の行動にどのような影響があったかを尋ねました。「良いカスタマーサービス」の場合の回答は「特に影響はなかった」が36%で最多でしたが、「悪いカスタマーサービス」の場合は「特定ブランドや企業からの購入をやめた」が 30%で 最も多い回答 でした。

カスタマーサービス体験の影響力

おわりに

カスタマーサービスは、ビジネスの顧客エクスペリエンスに計り知れないほどのインパクトをもたらすことが分かりました。多様化するチャネルの長所短所をきちんと理解し、カスタマーサービスの品質向上・維持に努めることは、企業のブランディングに直結する重要な取り組みです。次回の記事では、企業側の目線で、カスタマーサービスに対する考え方やアプローチを紹介します。

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調査概要

本記事は、当社が実施した「 カスタマーサポートと顧客体験に関する評価調査 ──消費者アンケート」 の結果をまとめたものです。調査期間は2022年4月14日〜25日、全国のモニター688人に対してオンラインで実施しました。有効回答数は614でした。以下の条件に合致する方を対象としました。

  • 日本在住者であること
  • 18歳以上であること
  • カスタマーサポートやヘルプデスクを利用した経験があること

日本の人口構成を反映するようサンプリングされています。

この記事で言及されている製品、プログラム、サービスは、国によっては提供されていないか、法令や規制により制限されている可能性があります。製品の提供状況や、国・地域の法令遵守に関しては、ソフトウェア・プロバイダーに直接お問い合わせください。

筆者紹介

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。