業務で使われている SaaS (Webベースのソフトウェア) の契約期間が満了すると、漫然と更新することが多いでしょう。しかし、その機会にソフトウェア市場の最新動向を調査すれば、ビジネスに役立つ新しい機能を発見することもあります。今回ご紹介するポイントを参考にして、SaaSの更新・変更を検討してみてください。

SaaSのサブスクリプション契約を深く考えずに更新していませんか?現状に特に不満が無くても、更新時はSaaSを見直し、より優れたソフトウェアを見つける良い機会となります。
ガートナーによる世界のSaaSユーザーを対象とした2020年の調査では、サービス更新時における企業の対応が明らかになりました (詳細は サブスクリプション契約更新についてのレポート (英語) からご覧いただけます。ガートナー会員限定)。その結果を踏まえて、SaaS契約の更新時に押さえておきたい4つのポイントについて解説します。
更新時は新しいSaaSを検討する機会
調査の回答者の80%以上が、現状に満足しているかどうかに関わらず、更新時に代替製品を「慎重に」または「大まかに」調べていました。
新しい製品を検討することなく漫然と更新する方が「楽な道」に見えるかもしれませんが、有用な機能を見逃してしまうかもしれません。多くの企業は、更新のタイミングを他のSaaSを調査する好機としており、ビジネスに付加価値をもたらすようなサービスがあるかどうか確認しています。調査対象となった半数近くの企業 (45%) が、更新する前に他のSaaS製品の機能を詳細に検討しています。

更新時のポイント (その1)
では、何から始めればいいのでしょうか。現在使用しているSaaSに大きな不満を感じている場合には、その問題を解決することを最初の目的としましょう。他のSaaS製品を検討する大きな理由として、技術的な問題やセキュリティの問題が多く挙げられています。
また、次のようなよくある状況に自社が該当しないか確認してください。
・SaaSの投資収益率 (ROI) が期待を満たしていない
・IDやパスワードを複数のユーザーで共有している、あるいは、ワークフローが複雑で作業に時間がかかるなどの業務上の問題が発生している
加えて、現在のベンダーが新しい機能を提供するようになった、あるいは、同僚などから新しい機能について聞いた場合も、新しいSaaSを検討する理由となります。これらの代替製品については、2~3ヶ月かけて調査すると良いでしょう。
優先的に取り入れる機能を決定し、SaaSの規模を最適化してコストを削減する
64%の回答者が、平常時でも少なくとも1つのサブスクリプション契約をダウングレードまたは解約したと答えています。
企業は具体的に何を求めているのでしょうか?機能の追加やサービスの充実度を重要する企業が多数派ですが、同じ機能をより安価に利用したいと考えている会社も少なくありません。

新しい機能を調べる際には、事業で今後必要になるような機能や、現時点で不要な機能を洗い出しましょう。
SaaSプロバイダーはできるだけ長期間の契約を望んでいます。そのため、顧客との関係を大切にするプロバイダーであれば、求められる機能を安価に提供する場合があります。
更新時のポイント (その2)
SaaSの機能を「必須」、「有用」、「オプション」に分類した上で、「オプション」の機能を取り除いた場合の価格をベンダーに確認しましょう。
更新時は、サポートの必要性を見直す絶好の機会でもあります。新しいSaaSの使用を開始して1年が経過すると、チームの習熟度が向上しており、サポートサービスへの支出を削減することができる場合もあります。自社の現状を考慮して、それに見合ったサポートプランがあるかをベンダーに確認すると良いでしょう。
長期的な契約を結ばなくてもOK
55%のSaaSユーザーは、1年以下の契約を締結していると回答しています。
ソフトウェアをパソコンにインストールすることが主流だった時代には、ツールを乗り換えるために何か月もかかっていたこともあったため、複数年の契約を結ぶことが合理的でした。しかし、SaaSが普及している現在では、購入者が契約の主導権を握っています。
SaaS製品は、特に中小企業にとっては魅力的な選択肢です。サブスクリプション型の価格体系で初期導入コストが抑えられ、Webブラウザを使ってどのデバイスからでもアクセスできる利便性もあります。そのおかげで、複数のSaaS製品を簡単に切り替えて利用することができるようになりました。

各ベンダーは契約期間について独自の規約を定めていますが、1年以上の契約に対して割引が適用されることが多いです。全ての料金プランをきちんと理解した上で契約を結ぶようにしてください。
更新時のポイント (その3)
SaaSの契約を更新する前に、解約条件を確認すると良いでしょう。一般的な条項には、次のようなものがあります。
・自己都合による解約または正当な理由による解約 「自己都合による解約」とは、正当な理由がない場合でも解約することができることを意味し、「正当な理由による解約」とは、ベンダーが契約に違反した場合にのみ解約することができることを意味します。
・中途解約手数料 早期解約に伴う手数料などの違約金が設定されている場合があります。これはベンダーの損失コストを相殺するためにかかる料金です。
・ 契約終了後の要件 契約終了の際には、早期解約であるか否かにかかわらず、何らかの義務が発生する場合があります。例えば、SaaSにあるデータを保管・削除する方法が契約で規定されていることがあります。
このような解約条件をぜひ確認してください。一度SaaSサービスを契約してみて満足した場合は、長期契約に切り替えることができます。契約期間が短ければ割高になる場合もありますが、他製品へ移行するのが容易になる利点があります。
SaaS製品を選ぶときに妥協は禁物
調査回答者の52%は、満足していないSaaSサービスのサブスクリプションを更新したことがあると回答しています。何かしら不満を抱えながらSaaS製品を使い続ける背景には、さまざまな状況があります。

しかし、決して妥協する必要はありません。SaaS比較サイトを利用すれば、自社に適した製品を見つける可能性が格段に高まります。例えば、キャプテラの810以上の ソフトウェアカテゴリーでまず検索することができます。各製品の紹介ページには、総合評価の他に、使いやすさ、カスタマーサービス、機能、価格の妥当性、といった項目の評価や、詳細なユーザーレビューも掲載されています。さまざまな選択肢を調査する時間を大幅に節約するので、SaaSの見直しにぜひお役立てください。
更新時のポイント (その4)
SaaSの検討・見直しは早い段階で始めるべきです。サブスクリプション契約の最終年に、主要な関係者による検討チームを構成して、定期的にミーティングを実施することをおすすめします。検討すべき事項は主に2点です。
・現在使用しているSaaSの問題点
・同様の機能を持つ代替製品
このようなミーティングを行うことで、契約満了前にどのような選択肢があるのかを把握することができます。
まとめ
SaaSの契約を更新するタイミングは、 技術スタックの構築を見直す絶好の機会になります。もちろん、現状に満足しているのであれば、契約を更新するのが最も手間のかからない選択肢です。いずれのケースでも、以下のアドバイスを念頭に置いてください。
- 現在のSaaSを継続して使用する場合SaaSの規模を最適化するために、不要な機能やサービスを特定してコストを削減すること
- 別のSaaS製品を探す場合契約終了の1年前から、現在のSaaSについての問題点をユーザーからヒアリングし、課題を解決できる代替製品を調べること