人事システムは、人事管理システム (HRMS)、人事情報システム (HRIS)、人的資本管理 (HCM) に分類されます。本稿では、これら3つのタイプについて説明し、中小企業が自社に合ったソフトウェアを選定するときに役立つヒントを紹介します。

中小企業にとって適切な人事システムを見つけるのは容易ではありません。起業して間もない時であればなおさらです。人事システムは多様であるため、それぞれの違いを把握した上で自社に合ったソフトウェアを選ぶことが大切です。企業の成長や事業の拡大に伴って人事業務の要件も変化します。そのため自社の現状と将来を見据えて、投資すべき人事システムを慎重に判断しなければなりません。テクノロジを活用して人事関連の業務を自動化・合理化することで大きな利点につながる可能性もあります。優れたスキルと才能を有する人材を惹きつけて育成し、従業員の満足度と生産性を向上するには、さまざまな業務と連携できる人事システムを選ばなければなりません。まず始めに、人事システムとは何かを簡単に説明します。
人事システムとは?
人事システムとは、人事関連情報の保存や処理、報告を可能にするテクノロジです。人事管理業務の簡素化や人事部門による従業員サポートの拡充、人事担当者の意思決定の支援、コンプライアンスの徹底、タスクの自動化、データセキュリティの向上などに役立てることができます。さらに人事システムは、企業の規模を問わず従業員の生産性や満足度を高めるために利用できます。
人事システムの3つのタイプ
人事業務では複雑化と高度化が急速に進んでいます。この波を受けて、ソフトウェアの機能も進歩しています。人事管理機能を包括的に提供するシステムもあれば、一部の業務に特化したシステムもあります。人事システムと聞いてよく耳にする代表的な人事管理システム (HRMS)をはじめ、さらに人事情報システム (HRIS)、人的資本管理 (HCM) という専門性のある2種類のソフトも合わせて機能概要を以下に紹介します。
人事管理システム (HRMS)
HRMSには、一般的にHRISとHCMの機能に加えて、人事部のコア業務の管理、給与管理、福利厚生などの機能が含まれます。人事データの管理を主な目的としているシステムもあれば、計画や評価のための機能を搭載するシステムもあります。HRMSはさまざまなモジュールを組み合わせ構成されることが多く、すべての人事関連データはこれらのモジュールを通じて管理されます。組織のニーズに応じて、これらのモジュールを追加したり調整したりすることができます。一部のHRMSは統合型のパッケージとして販売されており包括的な機能を提供する場合がありますが、モジュールとして提供され、他の優れた人事システムと組み合わせて使用できる場合もあります。HRMSは、HRISとHCMの機能のほかに、以下の機能を備えています。
- 給与管理
- 時間管理
- 労務管理
人事情報システム (HRIS)
HRISは、人事関連の手続きを改善し、組織全体の効率化を実現するテクノロジを提供します。HRISによって、ポリシーや手続き、人材の管理が容易になります。また、人事の専門家が従業員関連の膨大なデータを保存・整理し、求人情報も追跡できるようになり、企業のさまざまな部門がこれらのデータをいつでも簡単に参照できるようになります。HRISには以下のような機能があります。
- 求人への応募者の追跡
- 給与・報酬管理
- レポート作成
- 人事部門のコア業務の支援
- 休暇欠勤管理
- 研修/人材開発
- ワークフロー管理
人的資本管理 (HCM)
HCMは、HRISの機能を網羅しながら人材管理や人材獲得、人材編成などの機能も搭載しています。人事部は、従業員の成長やパフォーマンスの追跡のためにHCMを活用できます。従業員個人も職務目標の設定、進捗の確認などにHCMを利用できます。さらに、チーム間のコラボレーションや情報共有にも役立ちます。HCMは、HRISの機能に加えて、以下のような機能を備えています。
- 従業員のパフォーマンス管理
- 新入社員のサポート (オンボーディング)
- 給与計画
- 分析
- グローバルな業務サポート
- 総務
- 人員計画

自社にとって最適な人事システムを見極めるには?
上記の通り、HRMS(人事管理システム)、HRIS(人事情報システム)、HCM(人的資本管理)にはそれぞれ固有の特性があります。人事システムを導入したことがない場合や、より高度なシステムにアップグレードする場合、何を重視したらいいのか迷うこともあるでしょう。
基本的なニーズを満たすことができれば十分という中小企業の場合は、人事システムの基本機能を網羅しているHRISを選ぶとよいでしょう。一方で、急成長している企業や人事管理の改善を目指す企業にとっては、手続きを合理化でき、データをさらに活用でき、利便性にも優れるHRMSが有益になります。
現行システムの機能を拡張することを検討している場合、HCMを導入すれば、既存の機能に加えて、従業員管理やパフォーマンスの追跡などの機能を利用できます。
さまざまな人事業務を合理化して大きな成果を得たいと考えている場合には、包括的な人事機能を提供するHRMSが適しています。
人事システムには主にこれらの3つのタイプがあるとされていますが、特徴や機能が重複している部分もあり、搭載している機能が同じであっても別のタイプとして分類されるケースがあります。一般的にHRMSは、HRISと共通する機能が多いがより包括的なシステムと考えられています。
まとめ
人事プロセスのデジタル化を進める中で、人事システムを抜本的に見直すことは企業の生産性や効率性の向上につながります。さらに人事関連の基本機能をすべて連携させて一元化できれば労働時間の削減にもつながるため、時間と予算をかけて効果的なシステムに移行する価値があります。いずれにしても、最初のステップとして、導入する人事システムを慎重かつ詳細に分析して判断することが大切です。