テレワーク時代に職場の雰囲気をよくするには

2022/10/6 投稿者: Alberto Sakai

テレワークの大きな課題の一つは、従業員のエンゲージメントを醸成する職場作りだ。本稿では、ポストコロナ時代の企業文化・風土のあり方を探る最近の調査結果を紹介しながら、中小企業にとって有益な要点を整理する。

テレワーク時代に職場の雰囲気をよくするには

働き方の多様化やデジタル技術の進展に伴い、近年、在宅勤務の導入が緩やかに進んでいましたが、新型コロナウィルス感染症を契機にテレワークの実施が加速しました。新型コロナウィルスの流行が収束した後も、 8割の企業がテレワークの継続、もしくは在宅勤務とオフィス出社を組み合わせたハイブリッド型勤務体制への移行を検討しているという調査結果が出ています。これは、従業員が柔軟な働き方ができたり、企業側もコスト削減や業務生産性向上の効果を得たりしていますが、もう一方では、 エンゲージメントを維持することが困難な場合もあります。「エンゲージメント」とは、社員が会社に対して抱く帰属意識や貢献意欲を意味する言葉ですが、それを維持できない場合は業績低迷、人材定着率の悪化につながりかねません。そのため、場所を問わず従業員の自発的な行動を喚起させるような就労環境が重要なカギとなっています。

リモートワークやハイブリッドワークのモデルがもたらした変化を解明するために、日本の企業が近年どのように働き方をシフトしてきたかを調べました。それを踏まえた上で、デジタルワークプレイスで企業文化・風土を構築するためのヒントを紹介します。

企業文化・風土の定義とその効果

企業の特徴を表す言葉として「企業文化」や「企業風土」もしくは「社風」という言葉がよく使われますが、その定義や違いは必ずしも明確ではありません。また、英語と日本語の間で単語のニュアンスの差異が見受けられるので翻訳の際にも注意が必要です。

日本においては、「企業文化」とは会社のビジョンや価値観を指し、経営理念や行動指針などの根幹となるものです。一般的には経営トップが設定するミッションと、それに向けた取り組みとして理解されます。「Corporate culture」と英訳されることが多いですが、それは日々の業務や社内コミュニケーションによって形成される行動規範、雰囲気の側面も含まれている「広義の企業文化」であることに留意するべきです。英語の「Corporate culture」は、むしろ日本語の「企業風土」または「社風」により近い意味を持つとも言えるかもしれません。

結局のところ、企業の理念と従業員の行動規範は有機的に絡み合っており、表裏一体をなしています。そのため、特に本稿の関心である職場の雰囲気作りの観点からは、「企業文化」を「広義の企業文化」と位置づけることにします。

さらに最近では、ビジネスが物理的な職場からデジタルなワークスペースへと移行する中で、従業員エクスペリエンス (EX) という言葉もよく耳にします。これは、従業員の体験向上が業績向上に直結するというアプローチのことです。この認識に基づいて、多くの企業はEXを自社の施策に取り入れるようになってきています。

ガートナーによると、デジタルワークスペースに整合した従業員エクスペリエンス施策に取り組むと、以下のようなメリットが期待できます

従業員のエンゲージメントの向上 人材の定着率の向上 業務で使用するアプリケーションの有効性の向上 新しい働き方の加速 ビジネス主導の開発の活発化 従業員のニーズに即したアプリケーション選択の簡素化

出典:ガートナー2022「 卓越したデジタル従業員エクスペリエンスを実現する4つのステップ」(全文閲覧はガートナー会員限定です)

ポストコロナ時代の従業員の意識

労働政策研究・研修機構の調べによると、 コロナ禍ではピーク時に約56%までの企業がリモートワークを実施し、その後は緊急事態宣言の状況によって上下があるものの、2021年1月以降は 40%台で推移しています。

このようにリモートワークやハイブリッドワークの導入を経験してきた従業員は、どのような職場環境を求めているのでしょうか。最近の調査データから読み解いていきましょう。

ハイブリッドワークに関する従業員の嗜好

ガートナーは、2021年に 世界各国でデジタルワーカーの体験調査を実施しました (レポートの全文閲覧はガートナー会員限定です)。その調査結果から日本のデータだけを取り出し、ハイブリッドワークに関する従業員の意識と、従業員エクスペリエンスへの作用を確認しましょう。

まずは、働く場所の拠点に関しては、52%の従業員はリモートやハイブリッドで働くことを希望しており、そのうち在宅ワークを好むのは24%、複数の場所を組み合わせたハイブリッドワークを好むのは28%になります。しかし、「オフィスのみ」または「主にオフィス」で働きたい意思を示す回答者が46%もいることから、コロナ前の状況に戻りたいと考える従業員が一定数存在することが分かります。それは、上司や同僚と交流できるというオフィスの「社会的な側面」に起因するとガートナーは結論づけています。 ​​

従業員の働く場所に関する希望

職場の空間自体は生産性に影響しない

続いて、生産性についての回答を見ていきましょう。リモートワークへの切り替えが始まった2020年1月以降、生産性が「変わらない」と答えた従業員は48%と約半数を占めています。また、「はるかに生産的」及び「やや生産的」になったと回答したのは14%ですが、その中で生産性向上の主な要因として挙げられたのは「通勤時間の短縮」であり、物理的な空間や場所の変更はそれほど影響しなかったようです。また、生産性の低下を指摘した人 (39%) の間では、ネットワークの接続環境に起因する問題が多く挙げられています。

従業員の生産性の変化

リモートで仕事を遂行するにあたり、会社は生産性と柔軟性を併せ持つデジタルな職場作りに努めなければなりません。それは、ストレージやコラボレーションツールなど、さまざまなソフトウェアを組み合わせて利活用することで実現できます。同調査に回答した日本の従業員は、以下のようなツールを日常業務で使用していました。

日本の従業員が使用するツール

モバイルメッセージングアプリ 42% LINEなどのモバイル端末向けインスタントメッセージのサービス

ストレージ共有ツール 40% クラウド上でデータを保管できるサービスと、社内外でそのデータを安全に共有できるサービス

コラボレーションツール 29% 組織内でのコミュニケーションを円滑にし、共同作業を行うために使われるソフトウェア

トレーニング/自己啓発ツール 7% 従業員の教育を行うためのソリューション

企業文化・風土の (再) 構築への取り組み

以上の現状を踏まえた上で、優れた企業文化・風土を築くためにできることを紹介します。

1. 社員同士のつながりを深める

社員同士のつながりの観点から見ると、スタッフが複数拠点に分散していることは一見マイナス面と思われますが、それをチャンスと捉え直すこともできます。例えば、在社時間の短縮は、言い返せば、 仕事と向き合う時間が増える ことを意味します。また、対面での交流の減少を逆手に取れば、オンライン会議の参加性の高さゆえ、より多くの人とつながることができます。 リモートワークツールビデオ会議システムを通じて、チームビルディングの場を定期的に設けて、 共通の目的意識を育むようにしましょう。

2. デジタルワークスペースの実現に向けての取り組み

デジタルワークプレースは、各社員、ひいては企業全体の生産性を向上させるだけでなく、社内外のコラボレーションやコミュニケーションを強化・発展させることができる取り組みとして期待できます。数多くある プロジェクト管理ツールの中から自社のニーズを満たすものを導入することによって、プロジェクトがどのような段階にあるのか、透明性を確保することができます。

3. 多様な勤務パターンへの対応

勤務場所や時間の自由度を拡大することで、ハイブリッド社員は最善を尽くし、生産性を高められるはずです。リモートワーク中もチームメンバーがつながりを維持できるように、 シフト管理システムを利用すると良いでしょう。それによって、従業員はリアルタイムで互いのスケジュールや勤務状況を共有し、それに合わせた柔軟な作業調整が可能になります。

4. 企業文化の発信

最後に、全社戦略として企業文化の伝達・浸透に努めていただきたいと思います。会社の行動方針や経営理念などを、 イントラネットを使った組織内のコミュニケーションや報告等に組み込むほか、対外的にも情報発信を行えば、会社のミッションに共感できる人材が集まりやすいでしょう。会社のポリシーを常に最新状態に更新するために、 ポリシー管理ソフトの利用はとても有用です。

おわりに

ハイブリッドワーク型モデルを採用すれば、いつでもどこでも仕事ができることに加え、迅速な意思決定や、従業員エンゲージメントの強化を図るためにも役立ちます。ただし、最新技術を利用しやすい環境整備は言うまでもなく、 より魅力的な企業風土を作るためには、 チームワークを促進する取り組みも必須です。

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筆者紹介

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。