戦略人事とは、社内全体が協力し合いながらビジネス目標を達成するための経営手法です。新しいマネジメントに向けた戦略人事計画の策定方法をご紹介します。

戦略人事とは 戦略的人的資源管理に役立つガイド

従来の人事部門は管理的な業務を中心に行ってきましたが、近年の大手グローバル企業においては、人事が将来計画や戦略的意思決定のプロセスに関わることが主流になっています。

しかし、小規模事業者・中小企業の間では、この考え方はまだ十分に浸透していないのが現状です。 『日本の人事部 人事白書』によると、戦略人事に取り組んでいる国内中小企業の人事担当者は4割程度に留まっています。世界的にみても、自社の 人事機能が「戦略計画に効果を発揮している」と感じる組織は37%のみであることがガートナーの調査で明らかになりました (詳細は 戦略人事計画の基礎に関するガートナーのレポート (英語) からご覧いただけます。ガートナー会員限定)。

新しい人事の姿に関心のある方や、戦略人事の潮流に遅れを取りたくない企業関係者は、ぜひこのガイドをご覧ください。

1.  戦略人事計画とは

ガートナーは、「戦略人事計画」を次のように定義しています。「人事施策を優先し、それにリソースを割り当てることで、人事担当者が事業計画を作成する」ことです (戦略人事計画の定義の原文 (英語) はこちらをご覧ください)。

この新しいマネジメント手法のことを「戦略的人的資源管理」とも呼びます。それを実行に移すために、次の取り組みが必要となります:

  • 事業戦略と人事戦略の連動
  • 主要な事業イニシアチブに関わる、人事の優先事項の策定
  • 経営状況の変化に伴う事業展開の調整

従来の人事部門はしばしば受け身的に対応します。例えば、離職によって空いたポストを埋めたり、従業員に福利厚生や給与について案内したり、などが主な業務であると言えます。

一方、戦略的人的資源管理の視点では、先を読んで行動します。例えば、労務に関わる質問や、退職届の提出が「来るのを待つ」ばかりではなく、事前に労務の知識ベースを開発したり、人材を確保するために従業員の満足度を向上させる取り組みを行ったり、先手を取る姿勢が求められます。

すなわち、戦略人事とは、これまでの単に現状をサポートする部門から、組織の将来に参画するパートナーへの転換を意味します。

従来の人事-対-戦略人事

2. 戦略人事の利点

戦略人事を実践する企業には、次のような利点があります:

  • 人事戦略とビジネス戦略とのより良い整合 戦略人事計画の最大の利点は、人事部門がビジネス目標の達成に積極的に関与することです。例えば、事業の効率性を上げるという目標があるとしましょう。そこで人事部門は、ワークフローを自動化できる業務を特定することや、 従業員の生産性勤怠情報を分析することでサポートできます。
  • 考え抜かれた採用方針 人員計画は、組織の今後2〜5年間の採用ニーズを予測するものであり、戦略人事の重要な部分です。しっかりした人員計画を立てておけば、効果的な タレントマネジメントや、必要とされる人材、採用時期などについて、より適切な判断ができるようになります。
  • より効果的な人材育成・開発プログラム 戦略人事のアプローチでもう一つ重要な点は、事業目標に沿った人材育成と組織開発プログラムを計画することです。例えば今後数年の間、リーダークラスの退職者が数名出ることが人員計画で明らかになった場合、それを見越してリーダーシップ開発プログラムに予算を充て、重要ポストに相応しい資質を持つ社員を早めに訓練することができます。

3. 戦略人事計画プロセスの概要

戦略人事計画プロセスの5段階モデル

まずは事業目標を設定する

行動に移す前に、まずは向かっている方向を知ることが大切です。そのため、戦略人事計画の最初のステップは、最優先に取り組むべき事業目標を定めることになります。顧客サービスの向上であれ、新しい市場への進出であれ、各部門のリーダーや経営幹部レベルの役員と協力して、今後1〜3年間の主な事業目標の要点をまとめましょう。

現在のチームの能力を評価する

戦略人事計画の次のステップは、従業員を評価することです。この評価は、人事部門自体を含む現在の従業員のスキルと可能性を把握することを目的としています。

将来的な人材ニーズを予測する

組織の目標と従業員の現状を把握した上で、次のステップで人事部門と共に将来の採用ニーズを洗い出していきます。このブレインストーミングを順調に進めるには、以下の質問を考慮してください。

  • 今後数年間で習得する必要がある優先度の高いスキルとは何であるか
  • 企業が新しいスキルを身につけるためには、訓練を受けることのできる社員は現在いるのか
  • 人員を増減させる必要があるのか、また、どのくらいなのか
  • 全社の事業目標を考えた場合、最も効果的な人事業務は何か (例: 従業員エンゲージメントの向上、 福利厚生プログラムの確立、 生産性の向上、社員紹介制度など)

行動計画を作成する

次に、予測された採用ニーズを基に行動計画を立てます。取り組まなければならない具体的な行動は、前ステップの質問の回答によって異なります。例えば、今後数年間で人員を大幅に増やす必要があると判断した場合、人事チームは空きとなるポストの予定表を作成し、採用時期の目処を立て始める必要があります。

戦略の進捗を継続的に確認する

戦略人事は常に「進行中」の取り組みとして考えられますが、実施した行動の成果や影響はきちんとモニタリングすべきです。計画の視点によって、目標達成度を判断するための指標が異なります。例えば、人事チームが従業員エンゲージメント向上を図る新しい取り組みを実施した場合、欠勤率や自発的離職率、生産性などを指標として使えるでしょう。取り組み開始前後の数値を比較することで、その効果を把握することができます。

BIツール人事分析ソフトウェアを導入すると、このような指標を簡単に追跡できるようになります。 また、リアルタイムのデータを表示するカスタム・ダッシュボードの作成や、企業関係者と共有できるレポート作成にも役立ちます。

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