インターネットの使用は、今では生活する上で欠かせない存在となっていますが、その痕跡として残るデジタルフットプリントが個人にもたらすリスクが増えています。この記事では、デジタルフットプリントとは何か、どんな危険をもたらすのか、そしてリスクの軽減方法をご紹介します。

総務省の調査によると、個人のインターネット使用率は82.9%で、一人当たりの平日の平均利用時間は176.8分にも上ります。生活に欠かせないインターネットの存在ですが、使用する上で知らないと危険な目に遭うことがあるのも現状です。その一つが、デジタルフットプリントの悪用です。ネットワークセキュリティの強化は、サイバー犯罪者から個人・企業情報を守るための欠かせない手段です。まずはデジタルフットプリントの定義と例をみてみましょう。
デジタルフットプリントとは?
デジタルフットプリントとは、その名の通りオンライン上に残る足跡、つまり追跡可能な活動記録、情報のことです。インターネットやデジタル機器上で行われた活動は、個人、企業に関わらず全て残されているのです。このデジタルフットプリントの性質は主に「能動的」と「受動的」の2種類に分けられます。
能動的なデジタルフットプリント:ユーザーが自ら意図的に個人情報の公開、共有をした場合。例えば、SNSの投稿やオンラインフォームの入力、ニュースレター登録やwebクッキーの許可などです。
受動的なデジタルフットプリント:ユーザーの知らないところで個人情報が収集される場合。例えば、ウェブサイトによるユーザーの閲覧回数やIPアドレスなどの収集、SNSや広告会社がいいねやシェア、コメントからユーザーの年齢や好み、生活スタイルなどの情報を抜き出し利用することが挙げられます。

デジタルフットプリントの例
デジタルフットプリントはネット上の至る所で発生しますが、特に一般的な5つの例を紹介します。
- SNS:SNS上での活動は全てデータとして記録され、いいねやコメント、写真の投稿やリポストから趣味や生活スタイルなどの個人情報がデジタルフットプリントとして残ります。また、他のウェブサイト上でのSNSアカウントログイン情報の使用からも個人情報が収集されています。
- オンラインショッピング:パソコンまたは携帯アプリ上での買い物は、ネット上に購入したもの全ての記録が残ります。あなたがどんな物をどの頻度で購入しているのか、さらにどんなレビューを残しているのかまでが足跡として残ります。ブランドのクーポンやニュースレターの登録もその例の一つです。
- オンラインバンキング:ネット上でのクレジットカード口座の開設や株式の売買の記録はどこの誰にいついくら支払ったのかなどの詳細を含めてネット上にデータとして残ります。
- 追跡アプリ (健康・フィットネス):アプリ内でのフィットネスに関する個人情報 (身長・体重・血液型など) の登録や健康状態の追跡はデジタルフットプリントの良い例です。
- Webニュース:ニュースアプリやwebニュースサイトの使用により、どんな内容の記事を頻繁に読んでいるのか、またはいいねやリポストなどからデジタルフットプリントは発生します。
デジタルフットプリントに潜むリスクとは?
インターネットを使う上で、個人、企業問わず避けて通れないデジタルフットプリントですが、なぜそこまで重要視されているのでしょうか?
上記の「デジタルフットプリントの例」にある通り、デジタルフットプリントは簡単に発生し、でもその痕跡を消すことはそう簡単ではありません。その特性を活用して、個人や企業の評価や判断材料としても使われています。例えば、雇用主や大学の入学審査官は書類審査の時点で候補者のSNSをチェックしたり、Google上で名前を検索したりして過去の活動履歴や成果を見て意思決定をすることもあります。
このようなデジタルフットプリントの使用にはメリットがある一方で、ネット上に残ったデジタルフットプリントはサイバー犯罪者による情報の不正アクセスのために悪用されてしまうこともあります。個人だけでなく、企業のネットワークセキュリティが不十分だと会社や個人の情報、顧客の認証情報などが流出し大きな被害をもたらす可能性があります。
デジタルフットプリントを削減する方法
デジタルフットプリントの重要性やリスクを理解した上で、どうしたらネット上の個人情報とそのリスクを減らすことができるのでしょうか?先ほど説明した、能動的なデジタルフットプリントはユーザーが自ら意図的に個人情報の公開、共有をした場合を指すので、つまり今からでも個人の心がけで減らすことができるということです。以下ではSNSや追跡アプリ、ウェブサイト、デバイス上のセキュリティ強化の対策方法を紹介します。
SNS
キャプテラが行ったSNS購買行動調査ではどのような個人情報をSNSで公開しても良いと思うかという問いに対し、72%のオンライン消費者が「どのような情報でも共有することに抵抗がある」と回答しました。このようにSNS上でのセキュリティについての懸念がある一方、写真の投稿や友達、家族へのアップデートだけでなくブランド商品の購入やニュース情報の入手など、多方面でSNSは使われています。生活の一部になりつつあるSNSにおいてどのように個人情報を扱うべきなのかを把握することはとても重要です。
対策:SNSアカウントのプライバシー設定を強化してなるべく個人情報を公開しすぎないようにしましょう。
- 各SNSアプリの設定から自分の投稿を見れる人の条件を精査し、各設定項目をチェックする。
- 過去の古い投稿や不適切な投稿を削除する。
- 過去に使っていたがもう使わないSNSを削除する。
- アカウントのログイン情報を他のサイト、アプリで使用する場合は必ず利用規約とプライバシーポリシーを一読する。
- 個人情報を公開するような写真の投稿やコメントはなるべく控える。
メリット:個人情報を勝手に悪用されたり、ストーカーや強盗被害に遭ったり、過去の投稿によって将来が左右されたりする可能性が減ります。多くの人がSNSを使う今だからこそ、個人情報は簡単に流出してしまうのも現実です。
追跡アプリ
フィットネスアプリや生理・妊娠追跡アプリなどの健康に関する記録に使われる追跡アプリは想像以上にあなたの情報を持っているかもしれません。データプライバシーに関する法律が急速に変化しているので、追跡アプリを使用する際にはこれまで以上に注意を払う必要があります。
対策:誰に自分の情報を持たれているのかを知りましょう。
- 新しい追跡アプリに登録する際には必ず利用規約とプライバシーポリシーを確認するようにする。アプリがユーザーの健康データを販売または共有することを防止する法律がほとんど存在しないため、「個人データの共同利用」や「個人データの第三者提供」などの項目を特に慎重に確認し、不安な点があれば迷わず問い合わせる。
- アカウントの作成やプライバシー設定を強化し、可能な場合はアプリ内の「匿名モード」を有効にする。
- もう使っていないアプリやサービスがある場合はログアウトし、削除する。
- 割引などの情報に関するメール配信を停止してメールリストから抜ける。受信トレイで「ようこそ」「登録」などの単語で検索すると登録当初のメールを見つけ出して退会しやすいのでおすすめ。
メリット:氏名から身長・体重、住む地域や電話番号、摂取している薬の種類まで多数のプライベート情報を記録している追跡アプリやその他サービスのセキュリティを強化することで、なりすましや詐欺の被害を事前に防止することにつながります。
ウェブサイト
あらゆるウェブサイトを訪れる度に残る痕跡を一つ一つ消していくのは大変ですが、だからと言ってウェブサービスを全く活用しないわけにはいけません。リスクを最低限まで削減するのに大切なのは、自分のデジタルフットプリントの規模を知ることです。
対策:どんな個人情報がどこに存在しているのかを把握しましょう。
- 自分の名前を検索エンジンで検索してみて自分に関するどんな情報がネット上に広がっているのかを把握する(場合によってはGoogle上の個人情報削除を要請することも可能)。
- ブラウザの履歴をこまめに削除して個人情報の盗み見を防止する。
- webクッキーの許可をなるべくしない、またはこまめに削除する。例えば個人のiPhoneやiPadでSafariを使っている場合は、「設定」>「Safari」>「詳細」>「Webサイトデータ」の順に選択して「全Webサイトデータを削除」をタップすることでwebクッキーのみを削除できる。

メリット:どんな個人情報がネット上のどこにあるのかを把握、管理しどのデジタルフットプリントにリスクがありそうか判断することで情報を悪用される可能性を未然に防ぐことができます。
デバイス
ここまでの各項目ごとのデジタルフットプリント削減方法を把握し、応用した上でさらに大切なのが、デバイス自体のセキュリティ強化です。最近ではパソコンに限らずスマートフォンへのセキュリティ対策も必要不可欠になってきています。
対策(ソフト):パソコンやスマートフォン自体のプライバシー設定を今一度見直し、ネットワークセキュリティソフトなどの導入でさらにセキュリティを強化しましょう。
- 設定から位置情報の共有をオフにする。またはアプリごとに選択する。
- デバイスのアクティビティ履歴やアプリ利用履歴などの自動送信を無効にする (デフォルト設定のままだとソフトウェアやアプリの提供会社などに自動的に履歴が送られている場合がある)。
- 「ネットワークセキュリティソフト」や「ウイルス対策ソフト」などと呼ばれるシステムをパソコンやスマートフォンに導入する。
メリット:目的に合ったネットワークセキュリティソフトの導入により、ウイルスの検知や駆除、感染予防に留まらず、スパム対策や不正アクセスによる情報漏洩の予防もできるようになります。
まとめ
本稿では、デジタルフットプリントとは何かを説明し、SNS、オンラインショッピングやバンキング、追跡アプリ、webニュースなどでも簡単に発生するデジタルフットプリントの例を紹介してきました。さらに、インターネットを使用する上で念頭に置くべき個人情報の取り扱いとリスクについても学びが深まったと思います。ネット上の個人情報をしっかり管理して、デジタルフットプリントをなるべく削減する対策を行うことをお勧めします。オンラインでの活動が生活の大部分を占めている今だからこそ、もう一度ネットの使い方を見直して自分の身と個人情報を守っていきましょう。
注:本記事で紹介された製品は、各機能の例として取り上げられており、勧誘・推奨を意図したものではありません。掲載されている情報は、掲載時に信頼できると判断された情報源から入手されたものです。