デジタルマーケティングは、オンライン上で注目度や存在感を高め、収益を拡大するために役立ちます。もちろん、歯科医院も例外ではありません。効果的なマーケティング戦略を実行すれば、集患や増患が期待できます。この記事では、歯科医院向けのSEO戦略の基本について分かりやすく解説します。
歯科医院にとって、これから新規患者を集めることはますます大きな課題となるでしょう。例えば、全国保険医団体連合会が2022年に歯科会員を対象に行ったアンケート調査では、会員の39%は前年と比べて患者数が減少したと答えています。
このような状況の中で、歯科医院やデンタルクリニックの知名度を高めて、新しい患者を獲得するためには、効果的なマーケティング戦略を立てることが大いに役立ちます。オンラインマーケティングに関する知識を身につけ、適切なSEOツールを活用することで、自院Webサイトへの訪問者数を増加させる方法を導き出すことにつながります。まずは基礎から見ていきましょう。
歯科医院のマーケティングとは?
歯科医院のマーケティングとは、歯科医院やデンタルクリニックなどが、自院の特徴や強みを伝えて、市場における知名度を高め、集患と増患対策に利用できるマーケティング戦略や手法を指します。
自院をどのようにプロモーションするかを検討するときには、「SWOT分析」という枠組がとても有効です。SWOT (スウォット) 分析とは、自社の外部環境と内部環境を強み (Strength)、弱み (Weakness)、機会 (Opportunity)、脅威 (Threat) の4つの項目に分けて整理して分析する手法です。このSWOT分析が歯科医院にとってどのように役立つかを以下に説明します。
- 強み (Strength) 地域の他のクリニックと比較したときの自院の差別化要因を見つけましょう。競争相手よりも目立つために活用できる要素をリストアップしましょう。
- 弱み (Weakness) 患者様から苦情などはありませんか?自院の問題点を克服するために、適切な解決策を提供しなければなりません。そのため、弱みを正直にリストアップすることも重要です。
- 機会 (Opportunity) 自院が成長するための機会を特定することが大切です。集患や増患を促進するために何が有益か、歯科業界の現在のトレンドや自院の診療にプラスになりそうな要素を書き留めておくことで、有益な情報を把握することができます。
- 脅威 (Threat) 対策を進めなければならない問題はありませんか?現在直面している、あるいは将来直面する可能性のある障害はないでしょうか?例えば、新型コロナウイルスのような状況が歯科医院にとって脅威となりました。日本歯科医学会連合では、歯科診療における新型コロナウイルス感染症に対する留意点をまとめ、院内感染を防止するためのガイドラインを公開しています。
上記の4つの項目を自院の状況に当てはめてみたら、診療を改善するために何ができるか、どのようなマーケティング活動が成長につながるのかがより明確に見えてくるはずです。多くの患者にオンラインで自院を見つけてもらうようにするには、歯科医院のマーケティングにおけるSEO戦略を確立することが必要です。
以下に一般的なマーケティング用語とその定義を示しますので、ご確認ください。
歯科医院にとってSEO対策はなぜ重要か?
日本には6万8千以上の歯科診療所が存在し、2022年の医業収入は1施設当たり約6,100万円でしたが、施設によってかなりバラツキがあります。競争の激しい歯科業界においても、SEO対策は患者を惹きつける強力なツールとなり得ます。。以下では、具体的なSEO対策について説明します。
オーガニック検索による認知度の向上
SEO対策は、開業歯科医院を含むあらゆる企業のオンライン上での認知度や存在感を高めるために役立ちます。SEO対策を的確に行い、自院のホームページがYahoo!やGoogleなどの検索エンジンの検索結果ページ (SERP) の上位に表示されるようになれば、検索を行う見込み患者が自院を見つけやすくなります。実際、SEOClarity社の調査によると、上位1位の検索結果は約14%のクリック率を持ち、2位は約8%、3位は約5%となり、上位にランクされるほど多くのユーザーがクリックする傾向にあります。言い換えれば、地域の検索結果の上位に表示されるほど、多くの患者が自院のWebサイトにアクセスする可能性が高まるのです。
地域で一番の歯科医院になるために
特定の地域をターゲットにしたキーワードを使うのは、効果的な取り組みの一つです。これにより、自院のホームページが同じ地域の他の歯科医院よりも目立って表示されるようになります。例えば、潜在的な患者が「江東区 歯科 おすすめ」または「近くの歯科」といったキーワードで検索した場合、自院サイトが常に上位に表示されることで、患者が自院を選んでくれる可能性が高くなるのです。
歯科医院のマーケティング戦略:集患だけでなく増患にも役立つ
歯科医院の認知度や権威性をデジタルプラットフォーム上で高めることで、新しい患者を集めたり収益を増加させたりすることが期待できます。そのためには、他のクリニックと差別化できる独自のサービスや要素に焦点を当てることが重要です。
例えば、休日や夜間に救急歯科診療を提供していることは、差別化の要素となります。このようなサービスの情報は、WebやSNSなどのマーケティングやコミュニケーションのチャネルを通じて適切に配信しましょう。
また、新しい設備やテクノロジーを導入した場合には、ホームページやソーシャルメディアを通じて広く周知しましょう。SEO対策を始める前には、チェックリストを用意しておくとスムーズに進めることができます。次節では、これらのベストプラクティスについて説明します。
SEO対策のチェックリスト
1. Webサイトのコンテンツ最適化
コンテンツを最適化する際には、関連性のあるキーワードをバランスよく配置し、訪問者にとって有益なメッセージを伝えることが理想的です。SEO対策に適したコンテンツを作成する最初のステップは、適切なキーワードの調査です。キーワード調査ツールを使用して、自社のホームページのSEO対策に効果的なキーワードを調査できます。
関連性のあるキーワードのリストを作成したら、コンテンツの見出し、段落、画像の代替テキスト、箇条書きリスト、CTAなどにキーワードを含めるようにしましょう。
2. メタディスクリプションとタイトルタグの最適化
メタディスクリプション (meta description) は、Webページの内容を説明する文章であり、見込み患者が検索結果ページにアクセスする際に表示されます。タイトルタグ (title tag) の内容は、ホームページのタイトルとして検索結果に大きな青いフォントで表示されます。
メタディスクリプションとタイトルタグを最適化するには文章に主要キーワードや地域名などを追加し、ターゲットの地域を明確にするようにしましょう。なお、英字と2バイト文字では文字数が異なりますが、日本のSEO界隈ではタイトルタグの文字数を「35文字以内」、ディスクリプションの文字数を「82文字以内」とすることが推奨されています。
3. 高品質なバックリンクの獲得とバックリンク分析の実施
権威のあるサイトからのバックリンクを獲得することで、リンクされたサイトの信頼性が向上し、検索エンジンでの順位が上昇するようになります。効果的な戦略として、オンラインディレクトリに自社のビジネス情報を掲載する、ソーシャルメディアでアカウントを作成する、歯科関連のオンライン掲示板やQ&Aサイトで積極的に交流することが挙げられます。また、検索エンジンからペナルティを受け、順位が下がってしまう事態を避けるために、低品質のバックリンクが貼られていないかを確認することもおすすめです。ただし、バックリンクを否認する場合は、Googleのガイドラインに従って正確に処理することが重要です。
低品質のバックリンクとは?
低品質のバックリンクとは、本物のユーザーや企業、組織が自社のコンテンツを有用と判断して貼ったリンクではなく、業者などによって設定された無意味なリンクや、信頼性の低いWebサイトやスパムサイトからのリンクを指します。Googleの発表によると、信頼できるリンクであるかどうかは検索エンジンが判断できるとされています。しかし、低品質なバックリンクが存在すると、自社のWebページの検索順位が下がる恐れがあります。リンクチェックツールを使用することで、検索連動型広告などの広告表示ではなく、通常の検索結果からアクセスする「オーガニックトラフィック」となる質の高いリンクを特定することができます。
4. NAPデータの統一
検索エンジンやそのユーザーは、NAP (社名、住所、電話番号) データを通じて企業とその業務内容を知ることができます。NAPデータはローカルリスティングに大きな影響を与える要素です。自院の名称や住所、電話番号などをキーワードにして検索すると、NAPが掲載されるWebサイトを確認できます。間違った情報や重複したリスティングがないかを確認しましょう。ローカルリスティングの管理サービスを利用すれば、オンラインディレクトリにより多くのデータを追加したり、不正確なNAP情報を修正したり、重複したリスティングを報告することができます。
5. Googleビジネスプロフィール (旧称:Googleマイビジネス) に登録
Googleビジネスプロフィールのページが最適化されていれば、Googleの検索結果ページで自院が上位に表示されます。Googleビジネスプロフィールに登録するときには、営業時間、電話番号、WebサイトのURLなど、重要な情報を必ず追加してください。
6. オンラインレビューの収集
医療施設を選ぶ際、オンラインレビューを参考にする見込み患者が多いです。そのため、患者からできる限り多くのレビューを集めることが重要です。また、好意的なレビューにも否定的なレビューにも、冷静かつプロフェッショナルな対応を心がけましょう。
まとめ
患者がオンラインで歯科医院を検索するときに簡単に見つけてもらうようにするには、歯科医院のデジタルマーケティング戦略を立てて実行することが重要です。自院のサイトやSNSプロフィールを通じて、患者に対するメッセージを明確に伝え、すべてのチャネルで一貫性を持たせるようにしましょう。まずはチェックリストの中から、1つか2つの取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。自院サイトの知名度がある程度高まったら、より積極的な戦略に挑戦してみてください。