中小企業4割以上がデジタル戦略への投資額を増加【デジタル戦略調査第2弾】

2022/10/19 投稿者: Alberto Sakai

キャプテラ独自で行った「中小企業におけるデジタル戦略の取り組みに関するアンケート調査」第2弾。今回は、デジタル戦略の具体的な取り組み、主に利用されているプラットフォーム、今後の投資の見込みなどについて紹介します。

中小企業のデジタル戦略の現状

日本企業のDX (デジタルトランスフォーメーション) への注力は、新型コロナウイルス感染症の拡大により加速しています。ガートナーの調べにより、大企業 (年商1,000億円以上) の間では、その95%がデジタルビジネス変革への取り組みを実行している、もしくは検討中であることが分かりました (詳細は デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションに関するガートナーのレポート (英語) からご覧いただけます。ガートナー会員限定)。しかし、中小企業の場合はリソースやノウハウが限られていることもあり、デジタル化への移行度合いは千差万別です。

キャプテラでは、小規模事業者におけるデジタル戦略の実態を解明すべくアンケート調査を、269名の企業関係者 (経営者44%、正規雇用54%、 非正規雇用2% ) を対象に実施しました。前回の記事では、 デジタル戦略に対してまだ改善すべき余地があるという意見が多いことが明らかとなり、主な課題としては、 データ収集・分析などのデジタル技術の活用や、専門的知識を持つデジタル人材の不足が浮き彫りになりました。

本稿では、中小企業がデジタルプレゼンス (デジタル上の存在感) を高めるために行っている取り組みや、主に利用しているプラットフォームやツール、今後の投資の見込みなどについて紹介します。アンケートの対象となったのは、デジタル戦略を実行している250人規模までの中小企業にお勤めの方で、自社のデジタル戦略の立案や実施に携わっているか、現状を把握していることを条件としました (調査の概要は文末をご覧ください)。

デジタル戦略は何に役立つのか?

デジタル戦略とは、デジタルトランスフォーメーションの推進を目的とする体系的な施策や取り組みを指します。まずは、本調査に参加した中小企業経営者・従事者にとって、デジタル戦略がどのような領域で役に立っているのかを聞きました。

デジタル戦略が役立つ領域

その回答によると、デジタル戦略が自社のビジネスに最も役に立っている領域は、「顧客とつながりやすく、コミュニケーションが容易になる」(44%) ことで、次には「より効率的なカスタマーサービスを提供できるようになる」(40%) ことであり、いずれも顧客応対に関わる業務であることが目立ちます。一方、最も少ない回答は「多様なチャネルでより多くのユーザーにリーチすることが可能となり、販売機会を拡大することができる」(14%) 、及び「Webサイトへのトラフィックが増加する」(10%)で、意外なことに集客や販路に関わる領域でした。デジタル化の波はあらゆる業務に浸透しているはずですが、とりわけコミュニケーション関連の分野では必須のものと認識されているようです。

重要性が増すCCM (カスタマーコミュニケーションマネジメント)

カスタマーコミュニケーションマネジメント、または顧客コミュニケーション管理とは、顧客との接点を設計・管理するためのコミュニケーション戦略です。 カスタマーサービスのやり取りから、請求書の内容、ブログコンテンツに至るまで、顧客とのあらゆるコミュニケーションを統一することを目指すものです。明確なCCMを行うことで、全体の顧客体験 (CX) の向上につながり、企業のブランド評価にも影響を与えます。

顧客コミュニケーション管理に役立つツールとして、 顧客コミュニケーション管理システム顧客管理ソフトがあります。

情報発信プラットフォーム:74%が自社webサイトを定期的に情報更新

デジタル戦略は画一的なものではなく、ビジネスニーズや事業目標に応じて構築されるものであり、それによって必要とされる技術の優先順位も異なります。例えば、販路拡大を目指す実店舗型小売事業者にとっては、自前のECサイトを作ることに大きな意義がありますが、他のビジネスモデルではテレワークの導入、または業務フローの最適化に注力するすべきかもしれません。

その中で、企業による情報発信の展開も重要になります。続いて、5種類のプラットフォームのうち、どの頻度で (毎日、週に1回、月に数回) 情報を更新しているかを質問しました。

プラットフォームで情報を更新する頻度

毎日利用されるプラットフォームの上位には、「ソーシャルメディア」と「 レビューページ (口コミへの返信)」が、それぞれ16%と15%で拮抗しています。また、頻度を問わず、最も利用されている手段は「自社Webサイト」でした。大半の情報は自社サイトから発信しつつ、即時性が求められる口コミやSNSではこまめに対応し、用途によって媒体を使い分けていると考えられます。また、各プラットフォームの特性や利用傾向も、この結果に影響を与えているようです。例えば、「自社Webサイト」は業種や規模を問わず、あらゆるビジネスにとって重要視されている一方、「ECプラットフォーム」は商品を扱わないサービス業にとって不要の場合が多いと言えるでしょう。​​

デジタル戦略の取り組みの評価

デジタルプレゼンスを高めるためにはさまざまな取り組みがありますが、中小企業はどの取り組みを重視しているのでしょうか。その回答 (下図参照) から、重要度の高いものと全く取り組んでいないものを分けて考察してみます。

デジタル戦略の取り組みの重要度

最も重要視されている「データ収集」

「とても重要」及び「ある程度重要」を合算したトップ3の回答は下記の通りとなりました。

前回の記事で紹介したように、自社のデジタル戦略の中で最も対応が必要とされる課題として「データ収集と分析ツール」が挙がっていましたが、今回の重要度の結果とも一致しています。クラウドソフトウェアやメールマーケティングの導入も、優先課題と連動して上位に入っています。

重要度の低い取り組み

一方、取り組んでいない項目の上位に挙げられたのは、下記の通りです。

これらの取り組みは、「全く重要ではない」施策としてもTOP3を占めています。予算やリソースが不足しているため実施が見送られているのか、そもそも有効な手段だと認識されていないのか、さまざまな理由が考えられますが、現時点では重要度が低いのが実情です。

自社はデジタル戦略に投資し続ける ──9割以上が認識

現時点でのデジタル戦略の取り組みを紹介してきましたが、これからの展開はどうなるのでしょうか。世界的なインフレ圧力の強まりや、急速な円安による資源・原材料の価格高騰は、 多くの業種に大なり小なりの影響を与えています。そこで、今後2年間において、デジタル戦略への投資を継続する予定なのかを伺いました。

結果について特筆すべき点は、今後2年間で自社がデジタル戦略への投資を減らすと考える回答者がわずか7%となり、9割以上は投資額が増加するか (44%) 変わらない (49%) と予想しているところです (下図参照)。

今後のデジタル戦略への投資額

さらに、今後2年間で投資が増加すると予想した回答者に対して、その理由を尋ねところ、以下のような回答を得ました。

  • 戦略を策定中であり、完全に導入するまでにさらなる投資が必要となるから 48%
  • 現在の戦略を調整しており、そのために更なる投資が必要だから 23%
  • 現在の戦略は成功しており、投資を増やすことで収益増が期待できるから 22%
  • スタッフの増員が必要だから 7%

現在の戦略が「成功している」と評価する回答者は22%に留まっているものの、大半の中小企業はビジネスのデジタル化を「進行中」のプロセスとみなしていることが分かります。つまり、短期的な見返りを求めず、長い目で見て努力をし続ける姿勢を窺うことができます。

おわりに

今回の調査に参加した中小企業関係者の間では、デジタル戦略の主な目的は顧客とのコミュニケーション強化にあり、販路拡大の手段とは考えない傾向があります。そのために、データ収集やクラウドソフトウェアなど、デジタル変革の「王道」とも言えるアプローチでDXを推進しています。今後の投資額を減少させる予定だと報告したのはわずか7%であることを考えると、これからの中小企業の活躍に期待したいところです。

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本記事は、当社が実施した「中小企業におけるデジタル戦略の取り組みに関するアンケート調査」の結果をまとめたものです。調査期間は2022年8月30日〜9月6日、全国の中小企業に勤める経営者、管理職、一般社員に対してオンラインで実施しました。有効回答数は269人でした。以下の条件に合致する方を対象としました。

  • 日本在住者であること
  • 18歳以上、66歳未満であること 
  • 2〜250人規模の中小企業の経営者、または従業員 (正規・非正規) であり、2022年8月の時点で2年以上勤続していること
  • 会社がデジタル戦略を実行しており、そのデジタル戦略の立案や実施に携わっているか、現状を把握していること
  • 会社が設立してから3年以上経過していること

この記事で言及されている製品、プログラム、サービスは、国によっては提供されていないか、法令や規制により制限されている可能性があります。製品の提供状況や、国・地域の法令遵守に関しては、ソフトウェア・プロバイダーに直接お問い合わせください。

筆者紹介

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。