キャプテラの最新アンケート「2024年オンライン消費者実態調査」の結果をもとに、オンライン消費者が商品情報を収集して購入判断を行う過程や、ソーシャルメディア (SNS) がそのプロセスに果たす役割を解説します。
目次
ネットショッピングはすっかり生活に定着していますが、それに伴って、小売業者が知っておくべき消費者行動はますます複雑になっています。eコマースに取り組んでいる企業にとっては、購入行為そのものだけでなく、その過程で消費者が行う情報収集や検討ステップを理解することも重要です。
多くの場合、ネットショッピングは検索エンジンでの情報収集から始まりますが、ソーシャルメディア (SNS) やレビューサイトの活用も増えています。キャプテラの最新調査によると、日本のオンライン消費者の28%が商品検索のためにSNSを利用しており、若い世代ではその割合がさらに高くなっています。特にスマホが主流なデバイスになっている現在、SNSマーケティングの手法などを用いてソーシャルメディアを有効に活用する企業は、競争で優位に立つことができるでしょう。
今回は、12カ国で行われた「2024年オンライン消費者実態調査」のうち、日本のオンライン消費者500人を対象にした調査結果をお届けします。主にオンライン消費者の情報収集行動やSNSとの関わり方に焦点を当てて、分析と解説をしていきます (調査実施の詳細は文末に記載)。
情報収集手段としてのSNS:若い世代からの人気ぶり
オンラインで新商品やサービスを購入する際、消費者は様々な情報源を駆使します。日本の回答者の7割はインターネット検索エンジンを利用している一方で、28%がソーシャルメディアを活用しています。特にSNSの利用は若い世代で顕著であり、これが消費者の購買プロセスにおいてますます重要な役割を果たしていることが分かります。
図でご覧の通り、検索エンジンに続いて、レビューサイト (37%)、そしてSNS (28%) も情報収集の手段として挙げられています。ただし、年代別に見ると、SNSの利用に明確な違いが見られます。1940年代半ばから1990年代半ばまでに生まれた主要な3世代では、情報収集手段としてのSNSの利用状況は以下の通りです (それ以外の世代は5%に満たないため分析から除外)。
- 戦後ベビーブーム世代 (1946年~1964年生まれ) 13%
- X世代 (1965年~1980年生まれ) 30%
- ミレニアル世代 (1981年~1996年生まれ) 43%
つまり、若い世代ほどSNSを積極的に使用して情報を得ていることが分かります。この傾向は、スマートフォンの普及が大きく影響していると考えられます。実際、調査では全世代を通じて、ネットショッピングに最も多く使用されているデバイスがスマートフォン (51%) であり、2位のパソコン (34%) を大幅に上回っています。
以上のデータから、今後ますますSNSでの情報提供やマーケティングの強化が必要になることが示唆されます。特にターゲット世代に応じたSNSプラットフォームの選定や戦略の最適化により注力するべきでしょう。次節では、SNSの利用に関してさらに詳しく分析し、企業がこれをどのように戦略に活かせるかを探ります。
ネットショッピングで利用されるSNSプラットフォームとその目的
本節では、ネットショッピングの際に情報源としてソーシャルメディアを利用すると答えた消費者層に焦点を当て、どのSNSプラットフォームでどのような行動をするかを詳しく聞きました。まずは、過去12か月間で新しい商品やサービスを検索するために最も利用されたSNSプラットフォームは以下の通りです。
- YouTube 67%
- X (旧Twitter) 60%
- Instagram 58%
- LINE 47%
- Facebook 30%
YouTubeが情報収集の主要手段として重要な位置を占めていることから、動画コンテンツの重要性が際立っています。これは、キャプテラの2023年「SNS動画マーケティングの実態調査」の結果と整合性があります。マーケターは消費者の関心を引く手段として動画コンテンツを重視しており、その中でも特にYouTubeやInstagramが主に活用されています。しかし、実際に消費者側はSNSプラットフォームをどのようにネットショッピングに利用しているのでしょうか。その点について質問したところ、以下のような動機が明らかになりました。
興味のある商品探しが最も主要な目的であり (68%)、次いで商品レビューの検索 (55%)、キャンペーン・セールの検索 (52%) と続いています。これらの要素をマーケティング戦略に組み込むことで、企業はSNSプラットフォームをより効果的に活用することができるでしょう。特に消費者の興味やニーズに応じたコンテンツを提供することで、影響力を伸ばしていくポテンシャルを秘めています。
- リアルタイムエンゲージメント 特にX (旧Twitter) での積極的な対話と迅速なレスポンスを通じて、消費者との接点を深める。
- ターゲティング広告 ユーザーの興味や過去の購買行動に基づくパーソナライズされた広告を展開し、効率的なコンバージョンを目指す。
- インフルエンサーマーケティング インフルエンサーとのコラボレーションにより、特定のターゲット層にリーチし、ブランドの信頼性と認知度を高める。
- コンテンツマーケティング 動画コンテンツに限るものではないが、ビジュアルで魅力的な情報を提供することが重要である。特にYouTubeやInstagramなどのプラットフォームでは、こうしたコンテンツが消費者の関心を引きやすい。
インフルエンサー vs 一般ユーザー どちらのレビューがより信頼されるか
SNSを利用する消費者の間で、商品レビューを参考にする人が多いことが分かりました。しかし、具体的にどのようなレビューが信頼されているのでしょうか。近年、インフルエンサーによるレビューが増えていますが、営利目的のレビューには不信感を抱く消費者も少なくありません。そこで、全回答者に対して、インフルエンサーと一般ユーザーのレビューについて信頼度を尋ねました。以下がその結果です。
一般ユーザーが投稿するレビューや口コミの方が、インフルエンサーのレビューよりも信頼されている結果となりました。これは、消費者にとって「リアル」な意見に価値があると認識されているからだと考えられます。ただし、インフルエンサーのレビューにも、一般ユーザーのレビューにも様々なものがあり、すべてが等しく認識されるとは限りません。
レビューの信頼性は、商品の良し悪しを明確に説明しているかどうか、そして具体的な画像が含まれているかどうかに大きく依存します。このような詳細な情報が含まれるレビューは、商品の信頼性向上に繋がり、結果的に購入意欲を高める効果があると言えます。
商品選びの過程で、商品レビューのどの側面を重視するか尋ねました。以下の項目は、「とても重視する」と答えた人の割合が最も多かったものです。
- 商品の画像 39%
- 悪いレビューの数 32%
- 良いレビューの数 30%
レビューの信憑性を判断する際には、商品画像の存在やレビューのバランスが重要であることが確認されました。そのため、様々なプラットフォームでのカスタマーレビューを体系的に管理し、分析することが、より効果的なマーケティング戦略に繋がります。また、テキストや動画を問わず、好意的なオーガニックレビューをブランドの公式チャンネルで共有することで、信頼性の強化が期待できます。
82%は「SNSは広告が多すぎる」と感じる
SNSマーケティングにおいて、商品レビューの信頼性は重要な要素ですが、広告の適切な展開も企業にとって大きな課題です。広告が過剰に表示されると、顧客体験に悪影響を及ぼすことがあります。実際に、本調査では回答者の82%が「SNS上の広告は多すぎる」と感じています。それにもかかわらず、広告は企業と消費者とのコミュニケーションで依然として中心的な役割を担っており、消費者がどのような広告を受け入れるかを把握することは、効果的なマーケティング戦略を築く上で不可欠です。以下は、消費者が許容するSNS上での企業とのインタラクションの形式を示しています。
当然ながら、消費者は興味のない商品や不適切なインタラクションには強い抵抗感を示しますが、自分の興味がある商品に関連する広告に対しては比較的ポジティブに反応します。そして重要なのは、広告が直接購入につながらなくても、消費者の関心を引き、情報検索を促すきっかけになる点です。
実際、過去1年間でSNS広告を見た結果、最も多くとられた行動は「商品に関する情報を調べた」(42%) と「商品を購入した」(27%) です。一方で、「特定の広告をブロックした」と答えた人が20%もいることは見過ごせません。この比較的高い割合は、不適切な広告が顧客に与えるネガティブな影響を示しており、企業が広告戦略を練る際には慎重であるべきことを示唆しています。正確なターゲット設定と適切な広告内容の選定は、消費者の興味を喚起するためにも、反感を招かないためにも重要なポイントです。
- ターゲティングとパーソナライゼーション カスタマーデータプラットフォーム (CDP) やカスタマージャーニーマップツールを活用し、購買層の属性、過去の行動、ブランドとのインタラクションなどを分析する。 これにより、データに基づいた精密なターゲティングを行い、関連性の高い広告を提供することで、広告への反応率を高めることができる
- デザインと配信の最適化 ABテストを用いて、どの広告デザインや戦略が高いエンゲージメントを促進するかを判断する。ユーザーの注意を引くクリエイティブなデザインと、適切なタイミングでの広告配信を心がけることで、広告の有効性を向上させることができる
- 消費者の好みに対する敏感な対応 広告の過剰な露出や不適切なタグ付けがユーザーの不快感を招かないようにし、消費者のプライバシーを尊重する姿勢を明確に示す。ガートナーが指摘するように、AIの進展に伴い企業は日本の個人情報保護法だけでなく海外の最新動向にも目を向け、プライバシー法を遵守することで、消費者の信頼を維持する必要がある。
消費者行動を理解することで顧客関係を強化
本記事では、オンラインでの商品購入に至るまでの情報収集や、ソーシャルメディア上の消費者行動、特に商品レビューとSNS広告の役割について解説しました。
ネット消費者の購買決定にはレビューが大きな影響を与える一方で、SNS広告への反応も重要であることが分かりました。企業はターゲット層の興味や好みを正確に理解し、適切なレビュー管理や広告配信を行うことで、顧客の信頼獲得と長期的な関係構築につなげていくことが重要です。
調査実施方法
キャプテラの「2024年オンライン消費者実態調査」は、2024年4月にオンラインで実施したもので、世界12カ国5,585 名 (うち、日本は500名) より回答を得ています。調査の目的は、最近のネットショッピング行動を明らかにすることです。対象者は、月に数回以上ネットショッピングしていることを条件に抽出しました。