オンライン会議ツールは今や仕事のコミュニケーションおよびコラボレーション手段として欠かせない存在となりました。しかし、ミーティングの多さ、集中力の低下、対面とオンラインの使い分けなど、様々な課題もあります。本稿では、キャプテラの独自調査に基づき、世界と日本の企業における会議の現状に迫ります。

目次
テレワークの浸透に伴う新しい働き方の中で、重要な議論の一つは会議の実施方法です。テキストチャットや音声・ビデオ会議機能を持つユニファイド・コミュニケーション (UC) ツールは、現代のビジネス界で広く導入されており、ガートナーの調査によると、企業の約6割で従業員の半数以上がこの種のテクノロジを活用しています。
こうした潮流において、分散型チームのミーティング、会議、打ち合わせなどは効果的に実施・運営されているのでしょうか。その現状を明らかにする目的で、キャプテラが2024年に行ったコラボレーションと生産性に関するアンケート調査を基に、国内外でのオンライン会議に関する課題を紹介し分析します。この調査は、13カ国の6,490名のリモートワーカーまたはハイブリッドワーカーを対象に実施し、日本からは498名が回答しました (詳細は文末に記載されています)。
日本の従業員2割が「会議が多すぎる」と感じる: 世界13カ国中、第3位
リモートワークには、基本的に場所を問わずに会議に参加が可能という利点がありますが、別の課題も生じます。つまり、空き時間があるとすぐにミーティングや打ち合わせで埋められがちであり、結果として会議が過剰に行われてしまうことです。本調査では、1週間のうちに仕事で行われる会議の頻度をどのように感じるかと尋ねたところ、「適切である」と回答した人の割合はどの国でも大半を占めていますが、「多すぎる」と答えた人も一定数存在しています。日本の場合は、13カ国中、会議が多すぎると感じる人の割合で第3位になっています。

上の図でご覧のように、日本における会議の頻度は次のように認識されています。
- 会議が多すぎる21%
- 適切な頻度である 62%
- 会議が少なすぎる17%
会議が多すぎると感じている人が5分の1を超えることは、会議の運営方法に改善の余地があることを示唆しており、この問題意識は効率的な働き方を目指す近年の潮流に沿っていると言えるでしょう。
【従業員として】明確なラベル活用
スケジュール管理ツールにあるラベル (またはタグ) 機能を活用して、会議と集中作業に割く時間帯を明示しましょう。共同作業に関わる人たちと事前に調整することで、業務の効率化が図りやすくなります。
【上司として】集中作業時間の設定
組織全体で、会議時間だけでなく個々の集中作業時間も重視する方針を確立しましょう。方針を貫くためには、例外を設けずに徹底することが大切です。さらにドラスティックな取り組みとして、主に欧米では「会議を入れない曜日」を決める企業もあります。
Web会議中の集中力を低下させる最大の要因は「会議の長さ」
キャプテラが以前行った「働き方の柔軟性に関する意識調査」では、リモートワークの特筆すべきデメリットとして、「チームメンバーとのコミュニケーションや協力が困難」(リモート/ハイブリッドワーカーの31%)、「会社との関わり合いや一体感が薄れる」(24%) が浮き彫りになりました。そう考えると、モチベーションを高める生産的なオンライン会議は、従業員の満足感や生産性向上に寄与すると言えます。
今回は、リモートコラボレーション時に直面する集中力の問題に焦点を当て、会議中に気が散る要因について尋ねました。

日本の回答者で「会議中に気が散ることがない」と答えた人は28%に上り、他のほとんどの国では1割未満 (13カ国の平均は11%) に留まっていることと比べて、大きな差異を示しています。「会議が長すぎる」ことで不満を持つ人はグローバルで39%、日本では25%となり、最大の懸念事項として挙げられています。次いで、「会議の内容が自分の仕事に関係ない」(世界32%、日本15%)、「特定の人物があまりにも長く話している」(世界32%、日本18%)、「議論の対象となる情報が多すぎる」(世界29%、日本10%) と続きます。
会議の効率性や参加者の集中力を保つためには、ミーティングの長さ、内容の密度、参加者数など、様々な要素を考慮する必要があります。このような問題に直面している企業には、下記の対応策を検討し、適宜取り組むことをおすすめします。
- 議題・目的の明確化 会議の目的と議題を事前に明確にし、参加者全員と共有しましょう。効率的な議論を促進すると同時に、参加者からの信頼を得ることができます。
- 出席の必須・任意の設定 議題に直接関わる人のみを招待し、誰が必須で誰が任意かを明確にしましょう。これにより、必要な議論に集中しやすくなります。
- 時間管理 会議の開始と終了時間を守り、必要に応じてタイマーを使用することで時間を有効に管理しましょう。
- フィードバックの収集 定期的にチームや個人から、会議の必要性や頻度に関するフィードバックを収集し、会議の継続的な改善を図りましょう。
- 非同期コミュニケーションの活用 メールやチャットツールを通じて、Web会議で議論する必要のない内容について事前に共有したり、会議後にフォローアップできます。
最も対面式の会議が多いのは「上司との会議」
ここからは、日本の回答者に焦点を当てて分析していきます。テレワークやハイブリッドワークが普及している現在でも、対面で行われる会議は重要な役割を果たしています。リモートワーカーやハイブリッドワーカーであっても、23%が主に対面で会議を行っており、53%は対面とオンラインを半々で利用していることが今回の調査で明らかになりました。
対面会議は総じてまだまだ健在ではありますが、どのような種類の会議においてその傾向が見られるのでしょうか。以下がその詳細です。
- 上司との会議 57%が対面で行うと回答しており、調査された中で最も高い割合を占めています。このようなミーティングでは、直接的な対話を重視する傾向があるようです。
- キックオフ (プロジェクト開始の打ち合わせ) 51%が対面で実施しており、プロジェクトの始動にあたってチームの一体感を高めることの重要性を示唆しています。
- チームの結束力向上 48%がこのタイプの会議を対面で行っています。チームビルディングや結束力を高めるためには、直接的な交流が求められることが多いでしょう。
- 研修やオンボーディング 45%が対面で実施しています。新入社員の受け入れやスキルアップ研修では、直接的な指導やフィードバックが効果的とされています。
- ブレストやコラボレーション 同じく45%が対面形式であり、創造的なアイデア出しや共同作業には面と向かってのやり取りが重要とされています。
- 会社に関する情報共有 対面で行う人は36%にとどまり、主流はオンラインとなります。

テレワークの普及にもかかわらず、対面会議が持つ独自の価値は依然として認められています。人間関係の構築やチームの結束、創造的なプロセスにおいて、対面でのやり取りが欠かせないものとなっています。しかし、会議の種類によってはオンラインの便利さや時間の節約も考慮し、適切な会議形式の選択が求められます。オンライン会議技術の進化も踏まえ、対面とオンラインのバランスを見極めることが、今後の大きな課題となるでしょう。
最も重宝されているオンライン会議の機能は「画面共有」
オンライン会議の有効性を高めるには、使用されるツールの機能が鍵を握ります。そのため、会議を「主にオンライン」で、または「対面とオンライン半々」で行っていると回答した人に対して、会議のエンゲージメントを高めるのに役立つと思われる仮想会議の機能について聞きました。その結果、以下の機能が重要視されていることが明らかになりました。
- 画面共有 (38%) 最も評価されている機能。参加者が自分の画面を共有することで、資料やデータを直接見せながら議論を進めることができる利便性をもたらします。
- コンテンツ共有 (36%) 資料や情報を共有するための機能は、会議の理解を深め、議論を活発にするのに貢献しています。
- ミーティング内チャット (32%) リアルタイムでの質問やコメント、補足情報の共有が会議のエンゲージメント向上に役立っています。
ビデオ会議ツールは、最も研修を受けたいビジネスソフトTOP3に入っています。プライベートでも広く使われている製品もありますが、現代のビジネス環境では遠隔地とのコミュニケーションが一般化してきたため、オンラインでミーティングの運営能力はますます重要になっています。
そのため、企業はビデオ会議やWeb会議の機能を効果的に使いこなすための研修やガイドラインを提供することが望まれます。これにより、オンライン会議の可能性を最大限に引き出し、より効率的な会議環境を実現できるようになります。
まとめ
Web会議の活用は、テレワーク時代におけるコミュニケーションの質を向上させる鍵となります。今回の調査から得られた主な知見は以下の通りです。
- 日本では62%のリモートワーカー・ハイブリッドワーカーが会議の頻度が適切だと感じている一方で、21%が多すぎると回答しているため、会議の運営には改善の余地あり。
- 日本は他国と比べて「会議中に他のことに気を取られることはない」(28%) 従業員が最も多い。「会議の長さ」が25%で最大の集中力低下要因。
- 特に「上司との会議」で対面が好まれる一方、「会社に関する情報共有」はオンラインが主流。
- 「画面共有」が最も好まれる機能 (38%) で、次いで「コンテンツ共有」(36%)、「ミーティング内チャット」(32%)。
これらの結果から、会議のプランニング段階で、どのような情報を共有し、どの機能を活用するかを事前に検討し、参加者のエンゲージメントを高める工夫が必要であることが示されています。会議の種類や目的に応じた形式の選択、集中力を維持するための環境づくり、効果的なWeb会議ツールの利用が、テレワーク時代のコミュニケーション向上に貢献します。
キャプテラの「2024年コラボレーションと生産性に関するアンケート調査」は、2024年1月に回答者6490名 (米国n=503、英国n=496、カナダn=499、オランダn=499、ブラジルn=501、インドn=500、フランスn=497、スペインn=401、ドイツn=497、イタリアn=500、メキシコn=500、オーストラリアn=500、日本n=498) に対してオンラインで実施されました。本調査の目的は、国境を超えたチームがリモートで共同作業を行う際に直面する課題を分析することです。対象者は、各国の企業で正規・非正規問わず雇用されていることを条件に抽出しました。