SNS動画マーケティングが業界のトレンドとして定着する中、オーガニック投稿と動画広告の具体的な活用法はどのようなものなのか?キャプテラの最新の調査をもとに、マーケターたちが現在取り組んでいる手法に迫る。

SNSソーシャル動画マーケティングの実態調査 ②

SNS (ソーシャルメディア) での動画視聴が増加する中、動画マーケティングの役割はさらに重要性を増しています。2022年のニールセンの調べによると、インターネット利用者の40%がSNS上で動画を視聴しており、30代以下ではその割合が62%に達しています。前回の記事で触れたように、このトレンドを背景に多くの企業がSNS動画分野での広告投資を増やしており、高性能の動画マーケティングツールの普及が進んでいます。

しかしながら、ただテクノロジを導入するだけでは十分な効果は得られません。特に中小企業にとっては、動画マーケティングの戦略や手法、そして対応策を考える際の課題は多いでしょう。

今回、このシリーズの第2回目として、オーガニック動画や動画広告の活用に焦点を当てます。コンテンツ制作やデジタルマーケティングの専門家200名を対象にしたアンケートをもとに、実際の動画マーケティングの取り組みやその成果を紹介します (調査の詳細は記事末尾に記載)。

SNSでの動画活用方法

動画マーケティングを始めると、多様な戦略と方法が待ち受けています。実際に動画マーケティングに取り組む企業において、SNSのどのような活用が主流なのでしょうか。調査結果からは、75%の回答者が「動画広告の実施」を行なっており、SNSの効果を最大化するために有料広告を利用していることが分かりました。その次に、65%が「オーガニック動画コンテンツの投稿」を活用しており、自社のブランドや商品の情報を自然に拡散する形で発信しています。

動画マーケティングにおけるSNSの活用方法

【動画マーケティングの2大手法】

  • オーガニック動画コンテンツとは、自社のSNSアカウントから投稿する動画のことです。ユーザーの興味を引きつけ、フォロワーのエンゲージメント (関与) を高め、ブランドの知名度アップを目指します。
  • 動画広告の実施とは、有料で配信されるビデオ広告のことで、ユーザーの検索キーワードや訪れるウェブサイト、利用アプリに関連して表示され、短期間の集中露出でのコンバージョンアップが期待されます。

以降の節では、「オーガニック動画コンテンツの投稿」と「動画広告の実施」を選択したマーケターに対して、それぞれ詳しく聞いた結果を紹介します。

オーガニック動画コンテンツの投稿:88%が「オリジナル」

オーガニック動画コンテンツは一見シンプルに思えますが、実はその背後には緻密な戦略が隠れていることが多いです。こうしたコンテンツの主要な目的は、視聴者に対して企業のメッセージを自然に伝え、信頼関係を構築することです。

多種多様なオーガニック動画コンテンツが存在しますが、この手法を取り入れるマーケターの88%は「オリジナルの動画コンテンツ」を制作していると回答しました。これには、企業固有の視点やアイディアを取り入れたハウツー動画などが含まれます。さらに、62%が「トレンドのハッシュタグを活用した動画」、51%が「流行の音楽やダンスを取り入れた動画」を制作し、視聴者の注目を集める戦略を採っています。

オーガニック動画には様々な種類があります。その中で特に一般的なものを以下に挙げます。

  • 製品やサービスの紹介動画 特定の製品や新商品に焦点を当てる動画で、ニッチな市場や特定の技術を持つ企業に特に適しています。オーガニック動画を用いている調査対象者の80%が、この種の動画を制作していると答えています。
  • 会社のスタッフ・従業員が出演する動画 これにより、会社の人間的な側面を強調し、顧客とブランドとのつながりを強化することができます。回答者の55%が、このタイプの動画を用いています。
  • 会社の「空間」ツアー 店舗やオフィス、レストランなどの空間を動画で紹介することで、顧客にブランドを身近に感じさせる効果があり、業種によっては集客にもつながります (飲食店など) 。回答者の5割が、空間ツアー動画を制作しています。

このようなオーガニック動画コンテンツの戦略は、企業にとって非常に価値があることが明らかになりました。動画マーケティングの主要SNS (Facebook、Instagram、TikTok、Twitter、YouTube) について、平均して回答者の9割前後が何かしらの価値を感じていると述べています。ソーシャルメディア別の詳しいデータは以下のグラフでご覧いただけます。

SNS別オーガニック動画コンテンツの価値

次に、エンゲージメントを向上させるための具体的な投稿方法に焦点を当てて詳しく見ていきましょう。

投稿頻度とエンゲージメント

今回の調査では、ソーシャルメディアでの投稿頻度と視聴者のエンゲージメントとの密接な関連性が明らかになりました。すなわち、定期的な投稿を行うことで視聴者との関わりが深まる傾向があることです。

具体的なデータを見ると、日本の企業が最も頻繁に投稿しているプラットフォームはTwitterで、約46%のマーケターが1日に最低1回は投稿していると答えています。その他のソーシャルメディアでも、毎日の投稿や週に数回の投稿が主流となっており、企業が競争に勝ち残るためには、SNSでの積極的な取り組みが不可欠であることが示されました。

また、動画投稿後のエンゲージメントがピークに達するまでの時間を尋ねたところ、「数週間」と答えた方が31%で最も多く、続いて「数日」が29%となりました。これを見ると、比較的早い段階で反応を得られることが分かります。したがって、短期間でのエンゲージメントを高めるためには、継続的かつ頻繁なコンテンツ投稿が必要であり、実際、多くのマーケターがこのアプローチを採用しているようです。

エンゲージメントについて

動画の「エンゲージメント」は、視聴者の反応度を示す指標です。視聴回数 (75%の回答者が重要視) や視聴時間 (54%) などのデータを通じて、それを測定することができます。エンゲージメントを解析することで、以下のような動画の改善点や新たな戦略のヒントも得られます。

  • 視聴者のニーズに合ったトピックの特定
  • 動画のタイトルや概要欄の工夫
  • 動画の内容をわかりやすく伝える方法

オーガニック動画の「見つけやすさ」とパフォーマンス

オーガニック動画コンテンツを成功させるためには、視聴者の目を引きつけることが大切ですが、同時に、動画を発見しやすく、視聴しやすいように工夫することも重要です。この点を踏まえ、多く企業が動画の「アクセシビリティ」や「ディスカバビリティ」を高めるために様々な取り組みを行なっています。本アンケート調査では、「動画に字幕をつける」というアプローチが78%と最も多く、「SEOの手法をコンテンツに適用する」が63%、「他のソーシャルメディアで同じ動画を投稿する」が61%と続いています。

一方、動画が発見されたのち、ユーザーエンゲージメントを高め、結果的に動画のパフォーマンスを向上させる要因は何でしょうか。これについて質問したところ、最も多い回答は「投稿のトーン (ユーモラス、教育的など)」(57%)、次いで「視覚的な魅力 (画質やデザインの美しさなど)」(50%)、「トレンドや流行に敏感に対応すること (音楽、ハッシュタグ、チャレンジなどを取り入れる)」(50%) となりました。

動画広告の実施:70%「興味関心と行動ターゲティング」が効果的

本節では、ソーシャルメディアにおける動画広告の活用状況を紹介します。前述のとおり、動画広告はユーザーの検索キーワードやよく訪れるウェブサイトに関連して表示される有料広告です。この手法を取り入れていると回答したマーケターを対象に質問を行いました。

動画広告の種類

まず、動画広告内容の種類について見てみましょう。調査結果によると、最も広く使われている動画広告の形態は「宣伝動画」であり、65%が自社で採用していると答えました。「イベント動画」も63%という高い採用率を示しています。以下は、最も使用されている動画広告の種類トップ5をリストアップしたものです。

SNS動画マーケティングで最もよく使用される動画広告の種類

【動画広告の強化に役立つツール】

以下のようなツールを自社の広告戦略に取り入れることで、動画コンテンツの質と効果を高めることが期待できます。

デザイン系ツール

サムネイルを作成するためのグラフィックデザインソフト、アイデアの視覚化を支援するアニメーションソフト、コンテンツを磨き上げ、より魅力的なものにするための動画編集ツールなどがあります。

トレンド分析ツール

SNSマーケティングツールの中には、トレンドや人気ハッシュタグ、人気上昇中のトピックなどの情報を提供するものがあります。この機能により、視聴者の関心に合わせたコンテンツ作りのためのヒントを得ることができます。

メトリクスと分析ツール

SNS分析ツールは、動画のパフォーマンスの追跡・評価や視聴者のエンゲージメントの測定を行い、データに基づいたコンテンツ戦略の改善をサポートします。

動画マーケティングツール

動画マーケティングツールは、マーケティングキャンペーンにおける動画の活用を合理化するものです。広告枠の獲得を自動化し、最適なリーチとエンゲージメントを得るために動画パフォーマンスを微調整します。

広告のターゲティングオプション

広告のターゲティング方法にもいくつかの種類がありますが、「興味関心と行動ターゲティング」が効果的だと考える回答者が70%と高いことが明らかになりました。このアプローチはユーザーの過去の行動や興味をもとに、それぞれのユーザーの好みや関心に沿った広告の配信を可能にします。以下、採用率の高い順にターゲティング方法を示したリストです。

  • 興味関心と行動ターゲティング (70%) 過去のWeb閲覧履歴や検索キーワードなどから、自社製品に興味ありそうなユーザーに広告が表示される
  • 類似オーディエンス、カスタムオーディエンス (58%) 既存の顧客と同じ特性や興味を持つユーザーをターゲットにする手法
  • デモグラフィック (49%) 性別や年齢、居住地、言語などの基本的な属性に基づいてユーザーをセグメント化する手法
  • スマートターゲティング (45%) AIを用いてユーザーの好みや習慣を予測し、それに応じた広告の配信や自動的なターゲティングを提案する
  • デバイス、通信環境 (33%) ユーザーの利用デバイス (スマホ、PC) やアクセス環境 (Wi-Fi、移動通信システム) などに応じて配信する

動画広告の収益性

企業はマーケティング戦略の一部として動画広告への投資を行なっていますが、実際に期待通りの成果をもたらしているのかは気になるところです。投資の効果を数値で示す指標として「投資収益率 (ROI)」があり、今回の調査では、SNS動画広告のROIに焦点を当てて質問を行いました。

まずは、過去12ヶ月のROIについて伺ったところ、以下の結果が得られました。

SNS動画広告による投資収益率 (ROI)

60%がプラスのROIを報告しているのに対し、マイナスのROIを示したのは7%にとどまっています。このことから、SNS動画広告への投資は多くの企業にとって利益をもたらすものと言えるでしょう。ただし、33%の企業がROIの測定を行なっていない、またはその結果が分からないという点は注目すべきです。これは、一部の企業ではマーケティングの成果評価が十分に行われていない、あるいは、適切な測定ツールを持っていない可能性があることを示唆しています。

さらに、プラスのROIを達成した企業のうち、70%が1年以内にその成果を出したことが明らかになりました。一方、2年以上の期間を要した企業も一定数 (6%) 存在します。

ROIとは?

投資収益率 (ROI) は、投資の効率性・収益性を示す指標です。動画広告の文脈では、動画の作成とプロモーションにかけた費用に対して得られたリターン (利益または損失) の割合として表します。次のような式で求めることができます:「キャンペーンの利益金額÷キャンペーン費用×100 (%)」。

ROIを追跡する方法

  • コスト管理:まずは、動画制作やマーケティングの予算をしっかり管理することから始める
  • 収益の測定:動画キャンペーンによって発生した直接的な収益 (商品購入、サービス登録など) を特定する
  • 分析ツールの活用: 多くのプラットフォームでは、動画のパフォーマンスやコンバージョン率などに関する詳細な分析が可能であり、動画広告の効果を包括的に把握することができる
  • 継続的なモニタリング:ROIを定期的に測定し、その成果やフィードバックなどに基づいてキャンペーンを調整することで、パフォーマンスを最適化する

まとめ

今回のアンケート調査を通じて、SNSにおける動画広告とオーガニック動画コンテンツの特徴や利点について理解を深めることができました。オーガニック動画コンテンツは、自然な拡散を目指すもので、うまく行けばフォロワー増加が見込めます。しかしその成果を手に入れるには時間と努力が不可欠です。一方、動画広告は、所定の予算内で特定の顧客層を狙うことが可能で、適切なターゲティングと予算配分により、高いROIを望むことができます。

SNS動画活用を自社のマーケティング戦略に取り入れる際には、以下のポイントを意識して進めると良いでしょう。

  1. 目的の明確化 動画の狙いをハッキリさせること。動画広告は成果を即座に求めるのに対し、オーガニック動画はブランド認知やコミュニティ作りを主眼とすることが一般的です。
  2. 質へのこだわり オーガニック動画ではコンテンツの質 (投稿のトーン、ビジュアル、トレンド対応) が拡散の要因です。動画広告においても、クオリティの高さはコンバージョン向上に貢献します。
  3. ROIの確認 投資した費用に対するリターンを定期的にチェックすることで、戦略の見直しや改善点を特定することができます。
  4. ターゲティングの最適化 動画広告では、的確なターゲット選定が非常に重要です。ターゲティングの精緻化により無駄な広告費を省くことができます。
  5. 現実的な視点 結果は直ちに出るものではありません。特にオーガニック動画の場合、効果が表れるまでの期間を理解しておく必要があります。

どのアプローチを採用するにせよ、真のユーザーコミュニケーションを常に考慮することが長期的な成功の鍵となります。ユーザーの意見に真摯に向き合い、フィードバックに耳を傾けることを心掛けましょう。

動画マーケティングのSaaSやソフトウェアをお探しでしたら、キャプテラの動画マーケティングツールのリストをぜひご覧ください。


本記事シリーズは、キャプテラが行った「SNS動画マーケティングの実態調査」の結果をまとめたものです。調査は2023年6月9日から10日までの間に実施され、全国の企業でマーケティング戦略を担当する200名から有効な回答を得ました。以下の条件を満たす方を対象としました。

  • 日本に居住していること
  • 企業のマーケティング・広告部門、または経営陣に所属していること
  • 広告、デジタルマーケティング、またはコンテンツ作成のいずれかの業務を担当していること
  • 所属する会社が動画コンテンツの制作に取り組んでいること
  • 主要なSNSプラットフォームでコンテンツの投稿や動画広告の実施を行っていること