現代のマーケティング戦略において、ソーシャルメディアを利用した動画マーケティングはますます重要な役割を果たしています。本記事では、アンケート調査に基づいて、SNS動画マーケティングの現状とその重要性について説明します。

マーケティング領域で無視できない現象の一つは、ソーシャルメディア (SNS) の躍進です。日本国内だけでも、ソーシャルマーケティング (SNSを活用したマーケティング) の市場規模が年々増加し続けており、2027年には2兆円に迫ると予想されています。特に、動画中心のSNSへの投資が順調に推移しており、「SNS動画マーケティング」(または「ソーシャル動画マーケティング」) という新たなマーケティングの手法を生み出しています。
SNSプラットフォームで動画を活用することで、企業は自社のブランドや製品の情報・メッセージを視覚的に伝え、幅広いオーディエンスに直接訴えかけることが可能になります。しかし、その一方で、ターゲットとする視聴者を理解した上で魅力的なコンテンツを作り出すこと、さらには動画制作や動画の管理といったテクニカルな側面に取り組むなど、効果的な動画マーケティングを実現することは決して容易ではありません。
このような現状を受けて、キャプテラは動画マーケティングの現場で働く国内企業のマーケターやマネージャー200名を対象にアンケート調査を行い、その結果を連載としてお届けすることにしました (アンケートの詳細は記事末尾に記載)。今回は、動画コンテンツ活用のメリット・デメリットから、動画マーケティングへの支出、ソフトウェアの利用状況を紐解きます。
SNSにおける動画マーケティングの現状
数多くのソーシャルメディアプラットフォームが存在しますが、全てがマーケターにとって有益とは限りません。例えば、ビジネスネットワーキングの場として海外で既に定着しているLinkedIn (リンクトイン) ですが、日本ではその浸透が他国に比べて遅れているのが現状です。
下の図は、当調査に参加したマーケターが動画マーケティングに利用しているSNSプラットフォームのランキングを示しています。ご覧の通り、上位のプラットフォーム (YouTube、Instagram、Twitter、Facebook、TikTok) とそれ以降のものとでは明らかな開きがあります。マーケターたちがブランディングやマーケティングにおいて特に効果を実感しているのは、この上位5つのSNSといえるでしょう。

動画マーケティングの効果を高めるためには、自社のブランドイメージやキャンペーンの目標に合わせたプラットフォームの選択が重要となります。以下に、主要なSNSの特性を簡潔にまとめましたので参考にしてみてください。
- YouTube (ユーチューブ) 主に動画コンテンツのプラットフォームであり、チュートリアル、製品紹介、ユーザーレビューなどの長尺動画が多く投稿されている。そのアルゴリズムは、ブランドや製品の詳細な紹介をするようなコンテンツを優先する傾向がある。
- Instagram (インスタグラム) ビジュアルを中心としたコンテンツが特長で、通常の投稿とともに、消えるストーリーなどの短期的なコンテンツも豊富。製品の魅力をビジュアルでアピールするのに最適。さらに、ストーリー内でのアンケートやQ&A、リンクの機能を活用して、ユーザーとの対話やエンゲージメントを促進することができる。
- Twitter (ツイッター) 文字中心のコミュニケーション手段として知られるが、動画や画像の投稿も多い。リアルタイムの情報共有が得意で、ブランドの新しい情報や製品の発表、カスタマーサポートとしての活用が見られる。さらに、リツイート (再投稿) 機能を通じて、情報が迅速に広がる。
- Facebook (フェイスブック) 幅広い年齢層のユーザーが集まるプラットフォームで、動画からテキストまで様々なコンテンツが共有される。コミュニティ機能やグループ機能が充実しているため、製品の情報交換、イベントの告知、ブランドの最新情報の共有によく利用されている。また、ライブビデオ機能により、リアルタイムでフォロワーとの交流が可能。
- TikTok (ティックトック) 若年層を中心に人気を集めており、短くてインパクトのある動画が投稿される。トレンドを取り入れたバイラルコンテンツや挑戦動画が注目され、その拡散力を利用して商品・ブランドの認知拡大のために利用している企業が多い。
プラットフォームを選ぶ際には、具体的なターゲット層に特化した一つのSNSに絞る方法と、複数のSNSを活用して多くの人々にアピールする方法が考えられます。後者を選ぶ場合、プラットフォームの特徴やユーザーの期待に応じてコンテンツをアレンジすることが重要となります。
いずれにしても、戦略を練る前のリサーチは欠かせません。ターゲット層の特性、流行の動向、そして自社のブランドがどれだけ受け入れられているのかを把握することで、動画マーケティングを効果的・効率的に進めることができます。
動画コンテンツ活用のメリット・デメリット
SNSプラットフォームの利用状況を概観しましたが、動画マーケティングの展開を検討する際にはその利点と課題について理解することも重要です。実際にSNSを使用して、現場のマーケターはどのようなメリット・デメリットを感じているのでしょうか。
まずは、マーケティングにおける動画コンテンツ活用の最大の利点について尋ねたところ、最も多く挙げられた効果は「ブランドの評判向上」(59%) で、次いで「消費者が情報を記憶しやすくなる」(52%)、「自社サイトへのトラフィック増加」(51%)、「ブランドや製品の認知度向上」(50%)、「若いオーディエンスへのリーチ」(46%) の順となりました。これらの結果から、動画コンテンツはブランド価値の向上、情報の有効な伝達、特に若年層への影響力などにおいて強力なツールであると言えます。
一方で、動画コンテンツの活用に課題も存在します。「動画コンテンツ活用の最大の課題は何ですか?」という質問に対して、マーケターの6割は「高品質なコンテンツを作成すること」に苦労していると回答しています。また、「投稿したコンテンツや広告の再生数を増やすこと」(50%) や「コンスタントに投稿すること」(46%) も課題として感じられています。さらに、フォロワー獲得 (42%) や成果・パフォーマンスの安定性 (38%) についても一定の悩みを持たれています。このような課題に対応するために、戦略的な視点で動画マーケティングの展開を検討する必要があります。

【動画コンテンツの効果を高めるための対応策】
- ユーザーエンゲージメントの促進 再生数を増やすための戦略を考えよう。例えば、キャプションの工夫、具体的な行動に誘導する「コール・トゥ・アクション」の明確化。
- コンテンツの定期投稿 投稿スケジュールを立てて、定期的にコンテンツを配信しよう。CMS (コンテンツ管理システム) を使用すると便利である。
- フォロワー獲得の強化 コンテストやギブアウェイ (販促品) の実施など、具体的な施策を考えよう。
- パフォーマンス測定 成果を明らかにするためのメトリクスを設定しよう。SNS分析ツールを使用すると有効である。
動画マーケティングへの支出
動画マーケティングへの投資は、企業がどれだけその有効性を感じているかを示すバロメーターとなるでしょう。今回の調査では、多くの企業が動画マーケティングに予算を増やしていることが確認されました。
まずは、全体のマーケティング予算における動画マーケティングへの割り当てを確認しました。回答者の55%がマーケ予算全体の2割以上を動画マーケティングに充てているとのことで、動画マーケティングの価値が業界内で広く認識されつつあることが窺えます。

また、2023年における動画マーケティングへの予算の増減について、58%が前年よりも支出を増やすとの回答がありました。

増え続けている動画マーケティングへの投資意欲は、その有益性を如実に示しています。つまり、動画マーケティングによるリーチやブランド認知度の向上は、企業にとって大きな魅力となり、それに見合う投資が行われていると言えます。具体的な投資先は大きく3つに分けられます。
第1に挙げられるのは、専門的なビデオ制作や編集を行うための人材や機材、そしてソフトウェアへの投資です。次に重要なのは、広告出稿やプロモーション活動への予算確保です。そして第3の要素として、動画のパフォーマンスを評価し最適化するための解析ツールやサービスへの投資があります。これらの領域では、最新のデジタルツールを導入することで、より効率的に業務を遂行できるようになります。次節では、これらの具体的なツール利用について詳しく見ていきましょう。
動画マーケティングにおけるソフトウェアの利用
効果的な動画マーケティングを実施するためには、ソフトウェアが欠かせません。自由記述の質問で、動画マーケティングにおいてデジタルツールに求められる主な機能について尋ねたところ、「使いやすさ」が最も多く挙げられました。多くのマーケターが動画制作の専門家ではないことを考慮すると、直感的で、互換性のあるソフトウェアが求められていることがわかります。さらに、よりテクニカル志向の方たちにとっては、データ分析能力、広告の効果測定機能 (コンバージョン、解析、プロモーションなど) も重要視されています。
さて、この領域で具体的にどの種類のソフトウェアやツールが利用されているのかを見てみましょう。続いて、最も使用されている6つのツールとその機能を紹介します。
ビデオ編集/コンテンツ作成 (73%)
ビデオ編集やコンテンツ作成のツールは、動画マーケティングの最前線で活躍しています。フィルターや特殊効果、字幕追加などの多彩な機能を持ち、教育的な動画から広告ビデオ、エンターテインメント向けの動画まで、様々なコンテンツを作成することができます。しかし、FX効果などを手軽に使える現在、視覚的なストーリーテリングでブランドのメッセージをしっかり伝えることが大切です。
ソーシャルメディアのコンテンツスケジューリング (46%)
SNS管理ツールの中には、投稿を定期的かつ計画的に行うためのスケジューリング機能がついているものが多いです。このようなツールを使うことで、ターゲットとするオーディエンスが最も活発な時間帯にコンテンツを配信し、投稿の一貫性と頻度を保つことができます。
ソーシャルメディアのパフォーマンス分析 (43%)
パフォーマンス分析ツールは、投稿したコンテンツのパフォーマンスを追跡、解析するために使用されます。どの種類のコンテンツが最もエンゲージメントを得ているか、またどの投稿が目標達成に貢献しているかを把握することができます。
SEO (34%)
SEOツールは、動画のオンラインでの視認性を向上させるために不可欠です。このツールで、動画を検索エンジンに最適化するためのキーワードリサーチや、SEO対策の効果評価などを行うことができます。
ソーシャルリスニング/エンゲージメント (28%)
ソーシャルリスニングやエンゲージメントのツールは、SNSやレビューサイトなどにおけるユーザーの声を収集・分析するためのものです。これを使用することで、ブランドに対する公の反応や意見をリアルタイムで把握することが可能となり、市場のトレンドや競合との比較を通じて、より効果的な戦略を策定するのに役立ちます。
ソーシャルメディアのモニタリング (28%)
ソーシャルメディアのモニタリングツールは、ブランドのオンライン評判を監視するために使用されます。このツールを使用することで、投稿を追跡し、ブランドがどのように話題にされているかを詳細に把握することが可能となります。
まとめ
現代の広告・マーケティングにおける動画マーケティングは、ますます中心的な役割を果たしています。SNSの拡大とともに、企業はそのメリットを生かすための取り組みを進めていますが、同時に高品質なコンテンツ制作や一貫した投稿の維持といった課題も感じています。
また、動画マーケティングへの投資の意欲は増しており、それをサポートするツールやソフトウェアの需要も上昇中です。次回は、オーガニックな動画投稿や広告動画の活用法など、動画マーケティングの実践的な側面にフォーカスして解説します。
本記事シリーズは、キャプテラが行った「SNS動画マーケティングの実態調査」の結果をまとめたものです。調査は2023年6月9日から10日までの間に実施され、全国の企業でマーケティング戦略を担当する200名から有効な回答を得ました。以下の条件を満たす方を対象としました。
- 日本に居住していること
- 企業のマーケティング・広告部門、または経営陣に所属していること
- 広告、デジタルマーケティング、またはコンテンツ作成のいずれかの業務を担当していること
- 所属する会社が動画コンテンツの制作に取り組んでいること
- 主要なSNSプラットフォームでコンテンツの投稿や動画広告の実施を行っていること