キャプテラが実施した「働き方の柔軟性に関する意識調査」の結果報告。第2弾として、「リモートワーク・フレックスタイム制・週4日勤務制」に対する中小企業に務めるオフィスワーカーの意識を紹介します。

働き方の柔軟性・週4日勤務制

働き方改革は、社会的な課題として長く取り上げられてきましたが、その実現方法や効果については、一概に言えるものではありません。働き方の柔軟性は、従業員エンゲージメントや生産性向上に寄与すると考えられます。しかし、それぞれの職場や個人に合った形で実践される必要があり、従業員たちがどのように働き方を考えているのかを知ることも極めて重要です。

そこで、キャプテラでは働き方の柔軟性についてアンケート調査を実施し、その結果を3回シリーズに分けてお届けしています。前回は、ポストコロナ時代における仕事の満足度に影響する要因や、転職をする理由、仕事の価値観や考え方の変化についてお伝えしました。今回は、「場所」と「時間」の柔軟性を軸に、リモートワークやフレックスタイム制・週4日勤務制について、オフィスワーカーの意識を探ります。調査の対象になったのは、中小企業 (社員250人までの規模) で週に5日以上働く全国のオフィスワーカーで、1,031人の回答数を得ることができました (詳しい調査方法は文末をご覧ください)。

世界的に見て、日本のリモートワーク普及率は高いのか?

「職場の柔軟性」には様々な意味がありますが、今回の調査では、勤務場所や勤務時間が固定されているのではなく、従業員がいつ・どこで働くかをある程度調整できる勤務形態の柔軟性について焦点を当てました。まずここでは「勤務場所の柔軟性」を取り上げますが、それは在宅勤務 (リモートワーク)、オフィス勤務、またはこれらの2つを組み合わせた働き方 (ハイブリッド) を選択できる取り組みのことを指します。

アンケート参加者にそれぞれの勤務形態を尋ねたところ、オフィス勤務が79%で最も多く、リモートワークは6%、ハイブリッド勤務は14%でした。

中小企業オフィスワーカーの勤務形態

オフィス勤務が未だ圧倒的に多い結果となりましたが、リモートワークやハイブリッド勤務も一定の割合で存在しており、コロナ後の時代においても働き方の多様化がある程度定着してきたことが窺えます。

また、出社する従業員の中で、リモートワークをしたいと思っている人は42%であり、反対にリモートワークをしたくないと思っている人は58%の結果となりました。日本のリモートワーク普及率は、世界的に見て高いものなのでしょうか。キャプテラでは、今回と同様のアンケートを他の4カ国 (オーストラリア、フランス、スペイン、英国) でも実施したので、それぞれの結果を照らし合わせて見ました。下図でご覧のように、日本におけるリモートワーク希望者の割合が低いことがわかります。

リモートワークをしたいと思うオフィスワーカーの割合

この状況には様々な要因が考えられますが、日本におけるテレワークは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言などの政府や自治体からの要請によって急速に導入されたものであり、企業や従業員に十分な準備期間や教育・支援体制がなかったことも影響している可能性があります。

リモートワークの利点と課題

今後は、テレワークをする上で必要なインフラ整備やセキュリティ対策はもとより、働き方改革に伴うマネジメントやコミュニケーションも重要になってくるでしょう。これを念頭に、従業員が述べるリモートワークの利点と課題を見ていきましょう。

リモートワークのメリット:交通費の節約、ワークライフバランスの向上

リモートワークの利点についての意見を、在宅またはハイブリッドで働く回答者群と、オフィス勤務でありながらリモートワークに関心のある回答者群に分けて紹介します。

リモート組・ハイブリッド組においては、最も多かった回答が「通勤がなくなるため節約につながる」(67%) でした。次いで、「ワークライフバランスの向上」(51%)、「健康やメンタルヘルスへの良い影響」(43%) といった回答が続きました。

一方、出社組でリモートワークに関心を持つ人がその理由として挙げたのは、「リラックスして働くことができるから」が62%と最も多く、次いで「通勤がなくなるため節約につながる」が57%と高い割合を占めています。また、「ワークライフバランスの向上」も47%と、リモートワークのメリットとしてストレスの軽減が重要視されていることが示唆されます。

リモートワークの課題:仕事とプライベートの切り分けが難しい

リモートワークの欠点については、リモート組・ハイブリッド組の従業員が最も多く挙げたものは「仕事とプライベートの切り分けが難しい」で、2位が「チームメンバーとのコミュニケーションや協力が困難」でした。

リモートワークの欠点

さらに、現在リモートワークをしておらず関心もない人に対して、その理由を尋ねたところ、42%が「仕事とプライベートの切り分けが難しくなる」と回答し、リモート組・ハイブリッド組と同じ割合で最も多い懸念事項となりました。次いで「オフィスの方が集中力が高まる」が40%でした。

先述の設問では、オフィス勤務者の半数以上がテレワークに関心を示していなかったことがわかりましたが、それには上記のような課題が一因と考えられます。したがって、在宅勤務を導入する場合には、デメリットと感じられる問題を解決するために、適切な対策やサポートが必要になるでしょう。例えば、仕事とプライベートの切り分けが難しい場合は、作業時間や休憩時間を決めて守ることや、仕事用とプライベート用のスペースを分けることで解決できるはずです。また、孤独感やコミュニケーション不足を防ぐためには、オンラインでの定期的なチームミーティングやフィードバックを行うことが有効です。

【リモートワークの課題を解消するための解決策】

「仕事とプライベートの切り分けが難しい」

  • スケジュールの明確な設定 スケジュール管理ソフトなどで仕事とプライベートの時間を明確に分け、スケジュールを立てることで、効率的に仕事を進めつつ、プライベートの時間も確保することができます。
  • 仕事とプライベートのツール・スペースの使い分け 遠隔で仕事をする場合は、プライベートスペースと仕事用のスペースを分けることが大切です。リモートワーク手当を使って、ホームオフィス機器の購入やコワーキングスペースの利用など、快適かつ生産的なリモートワークのスペース作りを支援すると良いでしょう。また、福利厚生管理ソフトウェアなどのソリューションを導入することで、管理プロセスを自動化することができます。


「チームメンバーとのコミュニケーションや協力が困難」

  • コミュニケーションツールの導入 在宅勤務中でも、コミュニケーションが円滑に行えるよう、ビデオ通話やチャットツールなどの導入が有効です。
  • 進捗報告の定期的な実施 チーム全体の進捗状況を定期的に報告し合うことで、仕事の進捗を把握しやすくなります。
  • グループウェアの活用 グループウェアのようなオンライン上で共同作業ができるツールを利用することで、チーム全体での作業がスムーズに進みます。


「会社との関わり合いや一体感が薄れる」

  • 定期的なオンライン交流 社内SNSなどで情報共有したり、オンライン飲み会やランチ会などのカジュアルなイベントを開催することができます。
  • 上司から従業員へのフィードバック 目標管理システム (OKR) などで業績や成果を可視化したり、定期的な個人面談などでキャリアサポートを行うことも重要です。
  • オフライン定例会議の設定 チームメンバーと直接会って話すことは、人間関係を築くだけでなく、コラボレーションやコミュニティ意識を促進する効果があります。可能ならば、定期的にオフラインでミーティングを開催しましょう。参加できない人はオンラインでつなげるようにしましょう。

フレックスタイム制

働き方の多様化や柔軟性が求められる中、勤務時間の柔軟性に関しても様々な方法があります。今回は、その中でも「フレックスタイム制」と「週4日勤務制」を取り上げます。フレックスタイム制とは、始業・終業時間や休憩時間を従業員が自由に設定できる制度で、すでに多くの企業で採用されているでしょう。続いて、「フレックスタイム制」は仕事にどのようなメリットやデメリットをもたらすのかを、従業員目線で見ていきましょう。

労働時間に関する現状についは、回答者の74%が「労働時間が厳格に決められており、変更できない」と回答しています。一方で、26%は「一定範囲内で勤務時間を調整できるフレックスタイム制」を導入していると答えています。

フレックスタイム制を導入していると回答した人のうち、約8割は現在の仕事でフレックスタイム制を導入することが重要だと感じています (「非常に重要」が25%、「ある程度重要」が57%)。フレックスタイム制は、働く上で自由度を高めることができ、生産性向上につながる可能性があることを示す結果となりました。さらに、労働時間が厳格に定められている企業で働く人の大半は、「自分の勤務時間をより柔軟に設定したい」(71%) と考えています。フレックスタイム制が高い評価を得ていることから、企業がこの制度を採用することは、定着率の向上や新しい人材を獲得するための手段として一考に値すると言えるでしょう。

週4日勤務制

週4日勤務制とは、週に4日だけ働く制度ですが、2通りのパターンがあります。「圧縮労働型」では、週の労働時間や業務量が変わらず、4日間で40時間勤務します。一方、「総労働時間削減型」では週の労働時間が削減され、例えば週40時間から32時間に短縮されることを指します。

本調査の回答者は、週に5日以上勤務するオフィスワーカーに限定したものですが、社内の一部で週4日制を導入していると答えた人もわずかながらいました (全体の3%)。これらの回答者を除き、会社が週4日勤務制を導入していない (またはそれを把握していない) と回答した人を対象に、週4日制に対する関心や意向を尋ねました。

まずは週4日勤務で働くことについての興味を伺ったところ、72%が「興味がある」と回答し、多数派となりました。その内訳は下記の通りです。

  • 給料も労働時間も変わらない「圧縮労働型」(4日間で40時間勤務) に興味がある 49%
  • 給料が変わらず、労働時間が減る「総労働時間削減型」(4日間で32時間勤務) に興味がある 46%
  • 労働時間が減少すれば、給料が減っても構わない 6%

給料の減少を受け入れる従業員はわずかで、「圧縮労働型」と「総労働時間削減型」を選んだ人は同程度の割合になっています。従業員にとっての週4日勤務のデメリットとして最も多く挙げられたのは「収入が減少する」という点で、約4割の人がそう回答しています。また、「週4日勤務の新しい仕事があれば、転職を検討しますか」という質問に対して、半数以上の56%が「現職と同じ条件を維持できる場合であれば、転職を検討する」と答えています。「条件の維持」という点は、今後週4日勤務制が普及すれば、転職の決め手になる可能性を秘めています。

1週間の労働時間を減らす「総労働時間削減型」制度の影響についての質問でも、同様のことが示唆されています。会社へのプラスの影響として最も多く挙げられたのは「従業員満足度の向上」(48%) という点で、次いで「より多くの求職者を惹きつけることができる」(27%) や「生産性の向上」(24%) という点も2割以上の人が期待しています。

会社へのマイナスの影響として最も回答が多かったのは「従業員の収入に関する課題」(43%) で、「労務関係の手続きが煩雑になる」(26%) ことや、「導入するための運用コスト」(21%) も懸念されています。従業員にとってのデメリットとしては、「収入の減少」(44%)、「業務が過多になる可能性」(40%)、「残業が増える可能性」(38%) が指摘されました。

週4勤務制のプラスとマイナスの影響

週4日勤務制の導入について、会社は否定的ではないだろうと回答した人は3割強 (34%) で意外と多かったものの、半数以上の人 (56%) は経営幹部には抵抗があるだろうと感じています。

以上のことから、週4日勤務制に対する意見や認識は様々であり、メリット・デメリットもありますが、柔軟な職場環境を実現するためには何が必要なのでしょうか。アンケートで寄せられた回答の中で最も多い意見は「従業員の意識改革」(41%) と「社風や経営幹部の考え方の変化」(36%) で、まずはマインドセットの変化が求められているそうです。

イギリスのThe 4 Day Week Campaign

「The 4 Day Week Campaign」とは、英国で進められている週4日勤務の推進運動です。この運動は、従業員に対して給与や福利厚生を減らさずに、週の労働時間を40時間から32時間に削減することを目指しています。この制度は、従業員の幸福度や生産性を高めるとともに、経済や社会や環境にも良い影響を与えると主張しています。英国の約30社でトライアルを実施した結果、参加した企業のほとんどが週4日勤務に満足し、継続する意向を示しました。また、従業員のストレスや疲労が減り、ワークライフバランスや健康が改善され、さらに一部の企業では売上や利益が増加したり、顧客満足度が向上したりするなど、ビジネス面でも成果が出たと報告されています。

まとめ

仕事の場所や時間の柔軟性は、労働者にとってのメリットの大きい就労形態と言えます。柔軟な働き方は、生産性やワークライフバランス、ストレスの管理などにも影響を与える可能性があります。しかし、柔軟な働き方にはデメリットもあります。例えば、コミュニケーションや情報共有の困難さ、自己管理や自律性の必要性、仕事と私生活の境界線の曖昧さなどです。柔軟な働き方を成功させるためには、目標設定や評価方法の見直し、ITツールの活用、社内文化や風土の変革などが必要です。次回は、ソフトウェア利用の現状を確認し、働き方の柔軟性を高めるためにどのような機能を持つ必要があるのかについて考察します。

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本記事は、当社が実施した「働き方の柔軟性に関する意識調査」の結果をまとめたものです。調査期間は2023年2月9日〜16日、全国のモニター1,031人に対してオンラインで実施しました。以下の条件に合致する方を対象としました。

  • 日本在住者であること
  • 18歳以上、76歳未満であること 
  • 週に5日またはそれ以上勤務すること
  • 通常、コンピュータを使用して仕事をすること

回収サンプルの地域別構成比は以下の通りでした。

  • 北海道 4%
  • 東北 8%
  • 関東 33%
  • 北陸 4%
  • 中部 14%
  • 近畿 16%
  • 中国 6%
  • 四国 3%
  • 九州・沖縄 12%

なお、本文で言及されている国際調査も同時期に実施し、次の有効回答数を得た:オーストラリア (936人)、フランス (1,041人)、スペイン (1,009人)、英国 (1,047人)。