製造業におすすめのクラウド型生産管理システム

2023/2/10 執筆者: Alberto Sakai

生産管理システムは、製造業のDXにおいて不可欠な存在となっています。生産管理システムの導入により、生産効率の向上やコスト削減など、多くのメリットが得られます。ここでは、小規模の製造業者でも気軽に導入できるクラウド型の製品を紹介します。

製造業におすすめのクラウド型生産管理システム

不安定な経済情勢の中、特に製造業には「企業変革力」が求められており、デジタルトランスフォーメーション (DX) の重要性も幾度となく強調されてきました。そのために、生産工程のあらゆる側面の自動化・効率化を図ることが大切でしょう。以前の記事では、それを実現するためのソフトウェアについて解説をしましたが、今回は製造に関わる情報を一元管理する生産管理システムの具体的な製品を紹介・比較していきます。

日本の製造業のニーズに対応できることに重点を置くために、国産のツールに限定して取り上げることにしました。また、中小企業でも導入しやすいように、クラウド型の製品に絞りました (選定方法の詳細については、文末をご覧ください)。それでは、アルファベット順に見ていきましょう。

1. ASPAC-生産管理

生産管理システム - ASPAC-生産管理
ASPAC-生産管理のトレーサビリティ対応照会画面 (出典)

ASPAC-生産管理は製造業向けの基幹システムですが、様々な業種の小規模事業者のためにクラウド版も提供されています。企業のニーズに応じて、「販売・生産・購買」から機能を選択できる仕組みになっています。

製品の特徴としては、部品サプライヤーとメーカーの間で連携を可能とするEDI (電子データ交換) 機能やトレーサビリティ機能があります。また、工程計画支援機能により、各工程で使用するガントチャートを作成したり、リアルタイムで変更することができます。

月額2万円から利用できますが、詳しくは直接ベンダーへお問い合わせください。

主な機能

  • EDI (電子データ交換)
  • 工程計画支援
  • 原価計算
  • 在庫管理
  • 資材所要量計算

詳しく見る

2. MonoRevo (ものレボ)

生産管理システム - MonoRevo (ものレボ)
ものレボはタブレットやスマートフォンでも利用できます (出典)

ものレボは、少量多品種の生産や小回りの効いた納期に対応するために設計された製造業向けのDXシステムです。製造開始から納品までのスケジュールを見える化し、現場の効率化を実現するために役立ちます。品番・数量・納期を入力することで、生産計画表をガントチャートで作成することができ、担当者を割り当てたり、外注工程もあわせて管理ができます。

ものレボの機能は、工程管理、在庫管理、受発注管理、分析業務、拡張システム連携の5つのパックに別れています。工程管理パックの中には、工程ごとの段取り時間、加工時間、担当者を設定し、工程設計を保存することができる「工程設計マスター管理」機能や、リアルタイム共有を可能とする進捗管理機能があります。また、IoT端末で工程表と物の移動を検知して自動的に実績を登録する機能も追加オプションとしてあります (別途料金発生)。

最もベーシックなプラン、すなわち工程管理パックのみで29人までの利用者の場合は、月額料金が60,000円からとなります。詳しくはベンダーサイトをご確認ください。

主な機能

  • 工程計画
  • IoT
  • 進捗管理
  • CSV取り込み

詳しく見る

3. Proceedクラウド

生産管理システム - Proceedクラウド
Proceedクラウドの写真一覧 (出典)

Proceedクラウドは、生産状況を写真で見える化することができることを特徴とするツールです。スマホなどで撮影した写真が自動的にクラウドにアップロードされ、「部材」と「工程」の2つの軸でマッピングすることにより、効率よく画像を管理・検索・共有することが可能になります。このように、工程の進捗状況は写真一覧で確認することができ、さらにコメントやタグ付けで、生産現場と事務所の間などでコミュニケーションが取れます。

また、報告書作成機能のほか、柔軟な閲覧権限設定や英語版インターフェースも用意されています。価格などの詳細は、ベンダーのサイトから資料をご請求ください。

主な機能

  • 工程計画
  • 写真やファイルの共有
  • コミュニケーション機能
  • 報告書作成

詳しく見る

4. SmartF (スマートF)

生産管理システム - SmartF
SmartFでは、PCやタブレット端末、専用のハンディ端末で作業を行えます (出典)

SmartFはクラウド専用の生産管理システムですが、既存のシステムとも連携できるように開発されています。複数のモジュール機能の中から、各工場・事業所の課題を解決するために必要なものだけを選択して導入することが可能です。その5つのモジュールとは、原価進捗モジュール、在庫発注モジュール、生産計画モジュール、品質管理モジュール、受注出荷モジュールです。

生産計画モジュールでは、各工程においてどのような順番で作業を進めるのが最適かが明確になり、進捗状況をリアルタイムで確認することもできます。また、バーコードによって作業日報を記録することが可能で、入力された工数や不良の集計が可視化されます。

機能数とライセンス数 (インストールするデバイスの数) によって価格が変化しますが、専任担当のサポートで必要最小限の機能と費用でトライアル導入を行うことができます。

主な機能

  • 工程計画
  • 在庫管理
  • 発注管理
  • トレーサビリティ
  • IoT

詳しく見る

5. TECHS-S (テックス・エス)

生産管理システム - TECHS-S
TECHS-S NOAで部品表入力 (出典)

TECHSシリーズは中小製造業に特化した生産管理のパッケージソフトウェアを提供してきましたが、2022年に個別受注型機械・装置業向け生産管理システム「TECHS-S」のクラウド版「TECHS-S NOA」が登場しました。

特徴としては、事前に部品マスタを登録しなくても運用ができ、CADやExcelから部品表データを取り込めること、また、仕掛かり原価や完成時予測原価をリアルタイムに把握できることなどが挙げられます。さらに、発注書、作業指示書はバーコードによって処理することができます。

利用料は定額のサブスクリプションモデルを採用しており、1アカウントから利用できます。初期費用は30万円から、月額料金は1アカウントあたり5万円からと公表されていますが、詳細に関しては直接ベンダーにお問い合わせください。

主な機能

  • 工程計画
  • 発注管理
  • 進捗管理
  • データ出力
  • バーコード処理

詳しく見る

おわりに

生産管理システムには様々な種類があり、企業の分野や規模によって大きく異なります。また、生産管理システムに限らず、DX (デジタルトランスフォーメーション) を実現するためには、明確な経営戦略、IT環境の整備・活用、そして部門を超えた取り組みが不可欠になります。このような要素を勘案して、システム選びをするようにしましょう。最後に、導入前・導入後の体制サポートを確認することもおすすめします。

生産管理のソフトウェアをお探しですか?キャプテラの生産管理システムのリストをぜひご覧ください。


本記事で取り上げた製品の選定方法

製品の選定は、以下の基準で行いました。

  • 市場定義 キャプテラによる「生産管理システム」の定義に該当するツールであること。すなわち、生産工程の情報を総合的に管理することにより、「業務を合理化し、効率性を向上させる」システムであること
  • 中核機能    BOM (部品表)、在庫管理、注文管理、生産スケジューリングなど、このソフトウェアカテゴリーの中核となる機能を備えているツールであること
  • 国内製品 製品ベンダーが日本法人であること
  • 動作環境 クラウド型であること、またはクラウド版を利用できる製品であること

注意:掲載内容は2023年2月時点での情報です。最新の情報は各ベンダーへご確認ください。

この記事で言及されている製品、プログラム、サービスは、国によっては提供されていないか、法令や規制により制限されている可能性があります。製品の提供状況や、国・地域の法令遵守に関しては、ソフトウェア・プロバイダーに直接お問い合わせください。

筆者紹介

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。