製造業においては、生産管理システムを導入することで生産性の向上やコストの削減を実現することができます。しかし、様々な製造業向けのツールがあるため、選ぶのに迷ってしまうこともあるでしょう。本記事では、製造業向けの技術スタックの構築方法と選ぶべきツールについて説明します。

製造業向け技術スタック

製造業は我が国の成長を牽引してきた存在であり、現在でもGDP全体の約2割を占める日本経済の根幹を支える重要な柱です。しかし、近年の世界経済の不確実性や人材不足などの影響で、日本の「ものづくり」は大きな変革を余儀なくされています。そのような状況に対応するために、多くのメーカーはデジタル化を導入して、さらなる効率化を進めています。

特定の業務やプロセスのために組み合わせる一連のソフトウェアツールを「技術スタック」または「テクノロジスタック」(略して「テックスタック」) と呼びますが、以前の記事では優れた技術スタックを構築するために押さえるべきポイントを紹介しました。また、人事管理の技術スタックや、プロジェクト管理の技術スタックなど、業務や業界によって技術スタックの構築の仕方には留意すべき点があります。本記事では、製造業における技術スタックの構築方法と、製造管理の効率向上に役立つツールを紹介します。

製造業向け技術スタック (テックスタック) 構築のステップ

効率的な製造管理を実現する技術スタックを構築するには、現在の課題を見極め、中長期的な戦略に結びつけてソフトウェアを選ぶことが重要です。以下の4ステップで考えていきましょう。

1. 自動化すべき業務を見極める
主要なプロセスを書き出し、作業を細分化します。また、これら作業の相互の関連性を確認しながら、非効率な部分を特定します。

2. 業務特化型とプロセス特化型から選択する
自社の課題が業界特有のものなら業界特化型ツール、多くの業界に共通するものならプロセス特化型ツールを選びます。

3. ユーザーレビューを収集し、同業他社からの評価を参考にする
共通する課題を持つ企業のレビューを検索し、問題解決に必要な機能を確認する。複数のレビューに共通する点を検討すると良いでしょう。

4. 長期的に計画を立てる
企業が目指す方向性に照らし合わせて、カスタマイズが可能か、拡張性があるか、他ツールとの連携が容易か、運用コストはどれくらいかかるか、どのようなサポートが受けられるかなどを確認します。

以上の4ステップを踏まえて候補リストを作成し、無料トライアルあるいはデモ版で実際に体験してから最終的に決定します。少々時間がかかる場合もありますが、この手順を丁寧に押さえることで導入における失敗を防ぐことができます。

それでは、製造業向けのツールをカテゴリー別に見ていきましょう。ぜひ自社の技術スタック構築の参考にしてください。

生産管理システム

生産管理システムは、製造業のあらゆる情報を一元的に管理するシステムです。システムによって網羅される範囲は異なりますが、含まれる機能には、生産管理、販売管理、所要量管理、購買管理、工程管理、出荷管理、在庫管理、原価管理、品質管理などがあります。

製造関連部門でデータが分散している、サイロ化が起こっている、業務が属人化しているなどの状況が全体の効率低下を引き起こしている場合、生産管理システムの活用は非常に有効です。働き方改革の観点からも、業務効率の向上は重大な意味があります。

生産管理システムにより製造関連部門の情報が可視化されると、様々な側面で業務効率化とコスト削減を実現することができます。具体的なメリットとしては、余剰在庫が削減できる、リードタイムが短縮できる、歩留まり率が改善する、業務負荷の偏りが解消できる、などが挙げられます。また、顧客満足度の向上にもつながります。

生産スケジューラ

生産スケジューラ (または生産スケジュールソフト) は、精度の高い生産計画の立案ができるシステムです。各工程の作業時間を時間軸上に並べ、人員、設備、在庫などを割り当てます。生産管理システムに含まれていることも多いのですが、より粒度の細かい計画を立てることが可能です。

少量多品種生産や短納期対応が求められ、受発注の内容が複雑になっている今日、手作業による計画立案には限界があります。また、属人化は作業負担が大きいだけでなく、担当者が不在になると対応が遅れるなどのリスクもあります。

生産スケジューラのメリットは、生産計画の自動化、最適化、見える化ができることです。現場で常に最新の情報が共有できれば、突然の予定の変更にも臨機応変に対応できますし、計画の遅れに対しても早期に手を打つことができます。ハンディターミナルやウェアラブル端末が併用できれば、現場のコミュニケーションも一層スムーズになります。

ERPシステム

ERPシステムは、企業の基幹業務を統合するシステムです。「ERP」とは「Enterprise Resource Planning」の略で「企業資源計画」と訳されていることもあります。主な機能には、会計管理、販売管理、在庫管理、生産管理、人事給与管理、顧客関係管理、サプライチェーン管理などがあります。生産管理システムとの違いは、生産管理システムが生産業務の効率化を目的としているのに対し、ERPツールは企業の業務全体の効率化を目的としていることです。

ERPツールのメリットは、企業内の情報を一元管理できるため、リアルタイムの経営分析が可能で、迅速な意思決定ができるようになることです。また、各部門で情報が共有されるので、部署間の問い合わせや調整にかかっていた時間や手間が大幅に削減されます。業務手順の合理化は、処理の重複や漏れの防止になり、申請や承認の管理も明快になるため、ガバナンスの強化にも有効です。

注文管理システム

注文管理システムは、最初の受注から完成品の出荷までを管理するシステムです。主な機能としては、受注管理、発送管理、見積書・請求書・発注書の作成、顧客関係管理、在庫管理などがあります。

注文管理システムを導入すると、聞き間違いや入力ミスなどによるトラブルが回避できる、見積もりの回答および納期が短縮できる、イレギュラーな発注ニーズにも迅速に対応できるなどのメリットがあります。

その他のソフトウェア

MESシステム

MESシステムとは、「Manufacturing Execution System」の略で、「製造実行システム」とも呼ばれます。製造工程の測定、監視、管理を通して最適化、分析、シミュレーションを行うことができます。生産管理システムとの違いは、MESシステムは製造の実行に特化していることです。

MRPシステム

MRPシステムとは、「Manufacturing Requirement Planning System」の略で、資材所要量計画システムとも呼ばれます。必要なタイミングで必要な資材を発注できるため、適正在庫が維持できます。「MRP II」はMRPの発展形で、生産能力計画、人員計画、物流計画まで管理します。

原価計算ソフト

原価計算ソフトは、原価計算、損益分析、原価シミュレーション、費用配分などが効率的に実行できるシステムです。変化する原価を常に正確に把握することができるので、利益に影響がある場合も、早期に対策を講じることができます。

在庫管理システム/倉庫管理システム

在庫管理システムは、入出庫管理や棚卸し、発注などの在庫管理を自動化します。リアルタイムで最新の在庫状況が共有できるので、在庫管理にかかる時間とコストを大幅に削減できます。

倉庫管理システムは、倉庫における在庫管理に特化したシステムです。入荷、検品、ピッキング、梱包、出荷まで一連の倉庫内作業を効率化します。

製造業向け技術スタックの主なソフト

おわりに

今回ご紹介したソフトウェアは、多くのメーカーが直面する課題の解決に役立つでしょう。デジタルトランスフォーメーション (DX) の推進により、業務の効率化を実現し、生産性の向上にもつながります。導入には時間やコストがかかり、自社ニーズに合わせたカスタマイズやトレーニングも必要になる場合がありますが、得られるメリットは大きいと考えられます。社内風土に合わせて関係者のエンゲージメントを醸成しながら、持続可能な成長に向けて、確実に展開を進めましょう。

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