WBSでプロジェクト管理を「見える化」

2022/12/21 執筆者: Alberto Sakai

業務の計画段階で、抜けや漏れがなくタスクを洗い出すことができれば、プロジェクト管理はより効率的になります。本記事では、その手法として有効なWBSの考え方と具体的な活用方法を紹介します。

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WBSとは?

WBS(Work Breakdown Structure) は「作業分解構造図」とも呼ばれるとおり、プロジェクトをタスクに分解して構造化する手法です。プロジェクトの全体像を「見える化」できるため、プロジェクト管理の手法として広く使用されています。

WBSは、プロジェクトの目標や最終的な成果物を起点にして、必要な作業を段階的に細かくしていくので、タスクの抜けや漏れが起こりにくくなるのが大きなメリットです。また、WBSはスケジュール作成および管理のもとになるものです。後ほど詳しく述べますが、ガントチャートツールを組み合わせて使用すると、プロジェクトの進捗管理がさらにスムーズになります。

WBSのメリットは?

プロジェクトの全体像を「見える化」するWBSには、次のように様々なメリットがあります。

  • 目標や最終的な成果物から段階的にタスクを細かく分解していくので、抜けや漏れのない洗い出しを行うことができる。
  • プロジェクト管理の経験が浅い人にとっても大変わかりやすく、容易に取り入れることができる。
  • 業界やプロジェクトの規模を問わず適用できる。
  • 細分化したタスクごとに見積もりをして合算することにより、正確な見積もりが作成できる。そのため、クライアントの安心感、信頼にもつながる。
  • WBSをプロジェクトメンバーと共有すると、指示や報告が確実に伝わり、メールや口頭でやり取りするよりコミュニケーションの効率が向上する。進捗報告や調整のためにミーティングを行う必要もなくなる。
  • 個々のメンバーにとっても、自分の作業の位置づけがわかるので、前後の連携を考えて作業ができるようになる。責任感や仕事のやりがいが高まることも期待できる。

WBSの作成方法

それでは、WBSの作成方法を見ていきましょう。基本的な考え方としては、最上位の第1階層にプロジェクトの目標や最終的な成果物を掲げ、その下の第2階層にその実現のために必要となるタスクを大まかに並べます。それができたら、それらのタスクをさらに小さいタスクに分け、第3階層に置きます。

階層間には従属関係があります。そのため、第2階層と第3階層のタスクをそれぞれ「タスク」、「サブタスク」と呼ぶこともあります。なお、同一階層のタスクは同じサイズ感のものにします。最小のタスクの下には、各々に含まれる細かい作業を挙げていきます。この作業の各かたまりを「ワークパッケージ」と呼びます。

WBSの作成方法

WBSリストとWBSコード

WBSはリスト化すると、スケジュールの作成や管理につなげやすくなります。上記の作成概念図をリスト化して、各部分にどのようなものが入るのかを具体的な例で見てみましょう。ここでは、あるチームが「アート展のカタログを制作する」ことを目標にして、プロジェクトに取り組むことを想定します。 

WBSリストの例

このプロジェクト例は極めてシンプルですが、タスクの数はプロジェクトに合わせて増やすことができます。階層についても、プロジェクトが複雑な場合、あるいはより詳細に視覚化したい場合は、さらに小さなタスクに分解して、深掘りすることが可能です。ただし、最下層のタスクでもあまり小さくしすぎると煩雑になるので注意が必要です。数時間から数日で完了することが目安と言われています。

また、タスクや作業には識別子として「WBSコード」をつけておくと便利です。そうすることにより、関連性が明確になると同時に、チームメンバー間の認識を統一することができます。進行管理上も有効です。

WBS辞書の作成

タスクの洗い出しに続いて、各タスクの担当者、開始日と完了日を決めます。ここで同時に重要なのは、タスク同士の依存関係 (前工程が完了しなければ次工程が開始できないなど) に基づいて、タスクを行う順番を明らかにすることです。

それらの要素も含めて「WBS辞書」を作成しておくと便利です。WBS辞書はプロジェクトのタスクや作業の詳細を記したドキュメントです。WBSはプロジェクトの全体像を俯瞰するものなので、記述はできるだけシンプルにします。しかし、プロジェクトの進行中には詳細の確認が必要になることがあります。そのような時に、メンバー全員の共通のリソースとして拠りどころとなるのが、このWBS辞書です。

WBS辞書に含める項目、書式に規定はありませんが、主な項目としては次のようなものが挙げられます。

  • タスクや作業の名称
  • WBSコード
  • 詳細な説明
  • 期待されている成果物
  • 担当者
  • スケジュール (作業開始日、中間目標地点、完了日)
  • 予算
  • 承認の要否 

WBS辞書も含めてWBSの作成に関わる一連の作業は、プロジェクトマネージャーが単独で行うこともありますが、メンバーと一緒に行うのもいいでしょう。プロジェクトの各部分に強いメンバーの意見を聞くことで、より精度の高いタスクの洗い出しや期間の設定ができます。

WBSとガントチャートの違いは?

WBSは手書きでもオフィスソフトウェアを使用しても作成することができます。ただし、プロジェクト管理用のソフトウェアに展開しないと、進捗管理やスケジュール管理などを含む効果的なマネジメントが期待できません。

ソフトウェアの中でもよく使われているのがガントチャートツールです。WBSとガントチャートは組み合わせて使われることが非常に多いため、同一視されていることもあります。違いは、WBSはプロジェクトをタスクに分解して構造を視覚化する手法で、ガントチャートは分解したタスクのスケジュールをグラフにして視覚化するツールであることです。

ガントチャートでは、WBSで明らかにしたタスク、担当者、開始日と完了日などを画面左に縦に並べ、各タスクの右側にスケジュールを横棒グラフで示します。作業のステータス情報を含むこともできます。

WBSのガントチャート展開
WBS Gantt Chart for JiraのようなツールでWBSをガントチャートに展開すると、全体の進捗状況が一目でわかるようにる (出典)

どのようなプロジェクトでも、途中で想定外の事態が発生したり、それによって変更が必要になったりすることは避けられませんが、ガントチャートを用いると、直感的に調整ができます。ガントチャートツールにはさまざまなものがあり、WBSの作成から直接的にガントチャート表示ができる、タスクや作業間の依存関係を表示できる、セキュリティの観点からアクセス権限の設定ができるなど、ツールごとに特徴があります。

プロジェクト管理ツールには、ガントチャートの他にも、カンバンボードカレンダースケジュール管理などのソフトがあります。クラウド型のものを選べば同時編集も可能で、リモートワークで作業をするメンバー間で最新情報を共有することも容易になります。ソフトウェア選びに際しては、機能を比較検討した上で、自社のニーズに合った製品を選びましょう。

ガントチャートを作成するためのソフトウェアをお探しですか? キャプテラのガントチャートツールのリストをぜひご覧ください。

この記事で言及されている製品、プログラム、サービスは、国によっては提供されていないか、法令や規制により制限されている可能性があります。製品の提供状況や、国・地域の法令遵守に関しては、ソフトウェア・プロバイダーに直接お問い合わせください。

筆者紹介

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。