オンライン購買行動調査から読み解く5つの消費トレンド

2022/12/16 執筆者: Alberto Sakai

2022年は残りわずかとなりましたが、この1年間はキャプテラで数々のアンケート調査を行い、その結果に基づいてデジタル時代の動向や、消費・ビジネスを理解するために有益な情報をお届けしました。今回の「デジタル消費者トレンド」レポートでは、この1年を振り返って様々なデータを横断的に分析し、eコマース (EC) における5つの消費行動パターンを明らかにします。

オンライン購買行動調査から読み解く5つの消費トレンド

ネットショッピングが日常的になって久しいですが、今やオンラインで買い物ができないと不便さを感じることさえあるでしょう。経済産業省が取りまとめた電子商取引市場の実態調査によると、日本国内の消費者向け「電子商取引 (EC)」市場規模は年々増加しており、令和3年には20.7兆円に達しています。これは、全ての商取引の「EC化」率が8.78%に上ることを意味します。

eコマースシステムを展開するためには、オンライン特有の消費者ニーズをタイムリーにつかみ、それに沿った戦略を実行することが重要になります。本稿では、キャプテラが2022年を中心に行なった消費者調査 (一部は2021年末実施) から得られた様々なデータを取りまとめて、オンライン購買行動の顕著なトレンドを分析したものです (各調査の詳細については、文末に掲載されています)。今後のビジネスにおける課題や解決策を読み解く鍵になれば幸いです。 

ECチャネルとしてのSNSの台頭

新型コロナウイルスの感染症拡大により自宅で過ごす時間が長くなり、ソーシャルメディアの利用も深化しています。この傾向は、特にミレニアル世代やZ世代と呼ばれる「デジタルネイティブ」(物心がついたときからインターネットやスマートフォンに囲まれている年齢層) に著しいことから、今後はSNSとeコマースの距離がより一層縮まることが予想されます。

2022年にキャプテラが行なった「ソーシャルメディアにおける消費者の購買行動調査」のアンケートでも、同様のことが示唆されました。ソーシャルメディアを通じて商品やサービスを購入した経験のある回答者は24%で、そのうちの66%は通常SNSのプラットフォーム内で決済を完了させると答えています。残りの34%は、外部のマーケットプレイスや企業サイトへ転送されて決済を行っています。

ソーシャルメディア上での購入時に利用される決済方法

スマートフォンの普及に伴い、レジなしショッピング、QRコードの読み取り、指紋などの生体認証など、取引を円滑に行うための様々な技術が定着してきました。また、SNSはショッピングのチャネルでありながらも、コミュニケーション手段であることに変わりはないので、企業と消費者の間でより緊密な関係を構築することが可能になりました。

以上のことから、製品やサービスをデジタル化する際に、エンドツーエンドの消費者体験 (CX) の向上が重要なポイントになってきたと言えるでしょう。では、どうすればCXを向上をさせることができるのでしょうか。続いて見ていきましょう。

ソーシャルメディア上でのビジネス展開を促進するツールは数多く存在します。その中でも特に便利なものは下記の通りです。

  • SNS管理ツール SNSでのコンテンツの追跡、公開、更新の管理を一元的に行う
  • SNS分析ツール 効果的なマーケティング戦略の立案、エンゲージメントの向上に必要なデータを分析する
  • SNSモニタリングツール ビジネスに関連するアクティビティの追跡を自動化する
  • SNSマーケティングツール キャンペーンの作成、追跡、および管理を自動化する。クーポンやプロモーションの提供、顧客の反応指標の収集を行うこともできる

より高い利便性を求める消費者ニーズ

新しい技術やサービスをすぐに受け入れる人が多いからといって、企業は闇雲に最新のテクノロジを導入すればいいものではなく、いくつか考慮すべき点があります。まずは、消費者は煩雑または非効率な取引を嫌うことです。つまり、新しい技術やサービスは、利便性をもたらすものでなければなりません。

キャプテラが今年実施した「サブスクリプション型サービスに関するオンライン消費者へのアンケート調査」では、化粧品や食品などをパッケージとして定期的に届ける「ボックス型サブスク」の顧客に対して、そのサービスを利用し始めたきっかけについて質問しました。最大の理由として挙げられたのは「便利だったから」(「ボックス型サブスク」利用者の38%) で、2位の「プロモーションや割引を利用できたから」(25%) に大幅な差をつけています。

ボックス型サブスクリウションを利用するようになった理由

また、先述の「ソーシャルメディアにおける消費者の購買行動調査」でも、SNSプラットフォームで購入・決済したことのある人のうち、73%が「決済が簡単」であることを、ソーシャルメディア上の取引の最大の利点として挙げています。以上のことから、テクノロジの意義は、チェックアウトプロセスを含む購買行動の円滑化にあると結論づけることができます。

安全性とプライバシーを最優先に

消費者体験のもう一つの柱は安全性とプライバシーの確保です。買い物は便利であると同時に安全でなければいけないので、利便性とセキュリティは表裏一体の関係にあると言えます。そのことを示唆する証拠は、いくつかの調査データから確認することができました。

「ソーシャルメディアにおける消費者の購買行動調査」では、SNSプラットフォームによるアップロードデータ (個人情報、写真、動画) の取り扱いについて、プライバシーの懸念があるかどうかを伺ったところ、「ある程度懸念している」が55%で、「非常に懸念している」が30%となり、合わせて8割以上の人が何かしらの懸念を示しています。また、オンラインショッピングにSNSを利用しない理由として、「詐欺ではないかと心配」(36%) や「プラットフォームのセキュリティリスクが心配」(22%) などが上位に挙げられています。

さらに、当社の「サブスクリプション型サービスに関するオンライン消費者へのアンケート調査」の分析でも見られたように、最新型サブスクリプションを利用中のユーザーの間でも、クレジットカード情報を登録することに一定の抵抗感を覚える人が半数近く (47%) に達しています。この結果を他国と比較すると、日本人ユーザーは特に抵抗感が強いことがわかりました。これは、日本のユーザーのインターネットセキュリティに対する不信感を反映していると言えるでしょう。抵抗感を示した回答者にその理由を尋ねたところ、「セキュリティの問題」(76%) が圧倒的に多く、次いで「データ保護の問題」(53%)、「スパムの懸念」(35%) の順となりました。

一方、製品・サービスの利用者が投稿するカスタマーレビューは、売り手企業が信頼できるかどうか、個人情報を安心して提供できるかどうかを判断するための貴重な情報となります。キャプテラが2022年に行った「 オンラインカスタマーレビューに関する調査」では、多くの消費者はレビュー投稿のない製品を購入する際はより慎重になり、フェイク (偽の) レビューに対して懸念を抱いていることがわかりました。本物のレビューを見極めるために、消費者は「長所と短所をバランスよく評価していること」や「売り手に対して ネガティブなレビューもあること」などの点に気を付けています。

本物のレビューを見分けるためのポイント

顧客データの安全性を確保するためには?

即時性を求める消費者

テクノロジはよりスピード感を求める消費者を生み出していると言っても過言ではありません。特に「デジタルネイティブ」の若い世代であれば、即座なコミュニケーションに慣れているため、企業もそれに応える必要があります。

当社が今年実施した「カスタマーサポートと顧客体験に関する評価調査」では、文章でお問い合わせをするときに期待される返信時間を聞いたところ、1日以内のレスポンスを期待する回答者が6割に上りました。

カスタマーサービスのユーザーが期待する対応スピード

また、電話やライブチャットにおいて、カスタマーサービスエージェントが持つべき要素の順位づけをするように求めたところ、1位として最も多く選ばれたのが「迅速な問題解決力」でした (44%)。この結果は、カスタマーサービスの体験評価と符合していました。カスタマーサービスの経験についての自由記述では、「迅速な対応で安心感があった」ことや「親切丁寧だけでなく簡潔に疑問点を解決に導いてくれた」ことなど、つまりスピーディで実用的な対応が「良い経験」と感じられる傾向がありました。

即時の満足を求める消費者のニーズに応えることは容易ではありませんが、適切な分析判断とプロセスの自動化を図ることにより、それを実現することができるでしょう。

eコマースのスピードにどう対応するか?

持続可能性への配慮を主軸に

2015年に国連総会「持続可能な開発目標 (SDGs)」が採択されてから、持続可能な世界を実現するために経済界でも様々な取り組みが推進されてきました。その動きと連動して、社会・環境・地域などに配慮したいわゆるエシカルな消費行動も顕著になってきています。

欧州など7カ国 (オーストラリア、カナダ、ドイツ、スペイン、フランス、英国、オランダ) を対象に当社が2022年に実施した「サーキュラーエコノミー (循環型経済) に関する調査」では、持続可能性や循環型経済に全く取り組んでいない企業の商品を購入するかどうかを問いました。下図でご覧の通り、オランダを除く全ての国では、そのような取り組みをしていない企業から商品を「買うのをやめる」と答えた消費者が大半を占めています。

循環型経済・持続可能性への取り組み

また、同年に「サステナビリティに関する調査」をテーマとして行われた別のアンケート (対象はフランス、イタリア、英国、カナダ、オーストラリア、オランダ、スペイン、ブラジル、メキシコ) でも、大多数の回答者は「企業のサステナビリティの取り組み」が購買行動に影響を与えていると答えています。

持続可能なテクノロジの活用

ガートナーは、持続可能なテクノロジ (サステナブルテクノロジ) を「企業とその顧客のために環境、社会、ガバナンス (ESG) の成果を実現できるデジタル・ソリューションのフレームワーク」と定義しています (英語)

ビジネスで持続可能性を実現するための技術として、具体的には以下のようなものがあります。

まとめ

本稿で紹介したオンライン消費者の5つのトレンドをもう一度振り返ってみましょう。

  • ソーシャルメディアが販売チャネルとして益々重要になる
  • 便利なテクノロジは購買行動の円滑化につながる
  • 消費者は、より一層セキュリティを重視している
  • 顧客対応であれ、デリバリであれ、即時性が求められる
  • 持続可能性への配慮は、顧客との信頼関係につながる
オンライン消費の5つのトレンド・まとめ

もちろん、これらすべてのトレンドに早急に対応する必要はありませんが、どれかひとつでも対応しなければ、eコマースの波に取り残される可能性があります。明確な戦略と経営姿勢を持って、どのトレンドが自社のビジネスにとって優先順位が高いのかを検討しましょう。

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今回の「デジタル消費者トレンド」レポートは、キャプテラとその関連会社が実施した複数の調査をメタ分析し、5つの消費トレンドとしてまとめたものです。

本レポートは、2021年10月から2022年11月にかけて実施されたオンライン調査のデータが含まれています。各調査は、約1,000人の消費者に対して行われました。なお、回答者は18歳以上で、以下のいずれかの国に居住していることを参加条件としました。

・日本、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、カナダ、オーストラリア、オランダ、スペイン、ブラジル、メキシコ

調査で得られた回答は、国や地域を代表するものではなく、回答者の見解を表すものです。

本稿で使用した各調査の個別の参加条件は下記の通りです。

  • ソーシャルメディアにおける消費者の購買行動調査 参加者は、6ヶ月に1回以上、オンラインで積極的に製品やサービスを購入し、少なくとも月に1回はソーシャルメディアネットワークを利用していること
  • サブスクリプション型サービスに関するオンライン消費者へのアンケート調査 ネットショッパー (少なくとも月に1回の頻度でオンラインで買い物する人) であり、「従来型サブスクリプション」及び「最新型サブスクリプション」が何であるかを理解できること
  • オンラインカスタマーレビューに関する調査 製品・サービスを購入する前にカスタマーレビューを参照した経験があること
  • カスタマーサポートと顧客体験に関する評価調査 カスタマーサポートやヘルプデスクを利用した経験があること
  • サーキュラーエコノミー (循環型経済) に関する調査 「循環型経済」が何であるかを理解していること
  • サステナビリティに関する調査 フルタイムまたはパートタイムで勤務していること

この記事で言及されている製品、プログラム、サービスは、国によっては提供されていないか、法令や規制により制限されている可能性があります。製品の提供状況や、国・地域の法令遵守に関しては、ソフトウェア・プロバイダーに直接お問い合わせください。

筆者紹介

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。