電気代高騰の影響を受けている中小企業のうち68%が「収益が減少」

2022/11/30 執筆者: Alberto Sakai

2022年、中小企業は電気料金高騰や電力供給のひっ迫をどのように受け止め、どのように対処しているのか。キャプテラが行った「電気料金値上げに対する中小企業の意識調査」の結果を2回にわたって紹介する。

電気料金値上げに対する中小企業の意識

不安定な世界情勢の中、エネルギー需要の急増により原油価格が高騰し、多くの国では電気料金の値上がりが続いています。それに加えて、日本の場合は火力発電所の休廃止円安による燃料調達コスト増加が追い討ちをかけています。企業にとっても、適切なエネルギー管理が求められる時代を迎えたと言えるでしょう。

電気料金値上げによる中小企業への影響とその対策を明らかにする目的で、キャプテラは全国の中小企業の経営者・管理職 (本稿では総称して「意思決定者」と呼ぶことにします) に対してアンケート調査を実施しました。本記事は2回シリーズの1回目で、電気料金上昇の現状と事業への影響、今後の見込みや対応策についてご紹介します。

アンケートの対象となったのは、物理的な職場 (オフィス、事業所) を持つ250人規模までの企業となりました (調査の概要は文末をご覧ください)。有効回答者は262名で、そのうちの44%が会社の経営者、26%が幹部・役員クラス、30%が上級管理職 (部長クラス) でした。

電気料金値上がりの現状

2021年9月以降、日本全国で電気料金の値上がりが顕著となっています。電力の方式 (低圧・高圧)、地域、業種によって電気代が異なりますが、一般的には今年5月までの1年間で企業用の料金が約30%上昇しています

この現状を受け、今回のアンケートに参加した中小企業意思決定者に、今年に入ってから会社が支払う電気代が上がったかどうか、そして、今後の見通しについて質問ました。

中小企業における電気代値上がりの実感、値上がり率

上の図をご覧の通り、「大幅」または「若干」の電気代値上げを報告した回答者は、合計して8割を達成しています。しかも、まだ増加しておらず、「今後数ヶ月は増加しない」と楽観視しているのは11%に留まっています。

続いて、電気代が増加したと答えた人に対して、具体的な増加率を伺いました。大半は5%から20%の幅で電気代が値上がりしたと示していますが、その負担増加はどの程度事業に影響を及ぼしているのでしょうか。次節で見ていきましょう。

電気料金上昇による事業への影響

電気料金の値上がりを実感している回答者に対して、今度は会社の業績に影響を与えているかどうか質問しました。「全く影響がない」と回答したのはわずか3%に留まり、「影響はあるが小さい」が52%、「大きな影響がある」が45%となりました。

以降、本節では大小の影響を受けたと回答した人に対象を絞って質問しました。具体的にどのような影響があったかを尋ねたところ、結果は下図の通りとなりました。

電気料金値上げの中小企業への影響

「価格の上昇」という回答が63%でダントツに多く、電気料金の値上げによるコスト増加を軽減するために、負担の一部が消費者に転嫁されていることが明らかになりました。次いで「競争力の低下」(20%)、「投資額の削減」(14%) との結果となりました。

業種による危機感の温度差

困難な時こそ底力が試されますが、中小企業は電力問題をどれだけ長く持ちこたえることができるのでしょうか。今後の見通しについて聞いたところ、すでに「電気料金の値上げで、会社の存続に関わる深刻な危機を迎えている」と回答した方は6%で、それほど厳しくないのが現状のようです。しかし、45%は「この程度の電気料金の値上げでは、会社の存続に関わるリスクはないが、このまま値上がりが続けばその恐れはある 」と答えており、不安の声が大多数でした。一方、ポジティブな回答も半数近くに達しました。具体的には、25%が「電気料金がさらに値上げになっても、耐えることができる」と回答し、24%が「電気料金の値上げによって、存続の危機になる可能性は極めて低い」と述べていました。

電気料金値上げによる会社の存続に関わるリスク

しかし、業種によって危機感のギャップがあることも明らかになりました。今回の調査には様々な業種の経営者や管理職が参加しましたが、最も多い5業種は「小売業」(15%)、「製造業」(13%)、「建設業」(10%)、「情報技術・テクノロジー」(10%)、「貿易・販売」(7%) でした。下の図は、それぞれの業種における危機感の度合いを比較したものです。

業種別で見た電気代に対する危機感

ご覧のように、値上がりが続けば危機を迎える「恐れがある」の回答率が最も多いのは、エネルギー供給に大きく依存する「製造業」(70%) です。一方、「情報技術・テクノロジー」に従事している大半の回答者は存続の危機に陥る可能性が「極めて低い」と回答しており(41%)、電力料金の変動に左右されにくいIT業界の強みを示しています。

電力問題の影響を受けた企業の7割近くが「会社の収益が減少」

電気料金の高騰により、業績が圧迫されている企業が多いと考えられます。その点を探るために、会社の収益の増減について質問しました。収益が減少したという回答が68%で最も多く、減少していないと回答したのが22%、「わからない」が10%となりました。

さらに、収益が減少したと答えた68%に対してその減少率を聞きました。下図はその結果をまとめたものです。

電気料金の値上げによる推定収益減少率

電力料金の値上げと連動して、今年は「5%未満」から「20%」の範囲で、ほとんどの企業が減収を見込んでおり、経営を圧迫している実態が浮き彫りになっています。

電気料金値上げへの対応策

電気料金上昇の悪影響は無視できないものですが、企業はどのように対応しているのでしょうか。基本的には、企業独自の取り組みや政府からの支援がありますが、それぞれがどの程度実施されているかを見てみましょう。

企業の取り組み

企業の力で行われる対策としては設備投資、省エネの取り組み、ソフトウェアによる電力消費の最適化などが考えられます。しかし、今回の調査では、自社はまだ対策を講じていないと回答した意思決定者が45%と大半を占めています (うち、28%が「今後も対策する予定はない」、17%が「近々対策する予定である」と回答)。実施されている対策の中で最も回答数が多かったのは、エネルギー消費の削減 (37%)、業務プロセスの見直し (19%)、省エネ設備の導入 (14%)、再生可能エネルギーシステムの導入 (12%) となっています。

電気代値上げ対策


行政からの支援

大きな問題となった電力不足に対して、政府は火力・原子力発電所の再稼働による供給能力増加の方針を打ち出しており、最近では家計と企業への直接的な経済支援に踏み切ることを発表しています。また、自治体によっては中小企業向けに電気代などを補助する制度もあります。

本調査で行政からの補助金制度ついて知っているかどうかを質問したところ、大半は「補助金制度はない」(62%) と断言していますが、特に国の支援策は調査実施中に発表されたため、ほとんど認知されていなかったのも当然でしょう。

ただし、2割程度は補助金制度について知っていると答えています。その回答者に対して、行政の支援によって事業を十分に継続できるかどうかを尋ね、下記の結果が得られました。

・35%が補助金のおかげで事業を継続することができると回答

・44%が補助金だけでは十分ではないと回答

・21%が補助金があってもなくても、事業を継続できると回答

補助金の有無を問わず事業を継続できると回答したのは合わせて56%と、半数を超えていることから、中小企業の実力に期待したいところです。もっとも、補助金のみで事業継続は厳しいと訴えている声 (44%) も決して少なくないので、今後の対策を慎重に検討しておくことが重要になってくるでしょう。

まとめ

今回ご紹介した、電気代値上げに対する中小企業意思決定者の意識のポイントは以下のとおりです。

  • 80%が電気料金の増加を経験している
  • そのうちの97%が業績に影響を受けており、最も多い影響は「価格の上昇」
  • 会社の存続に対して最も危機感を抱いている業界は製造業で、最も安心しているのが情報技術・テクノロジー
  • 対応策として最も多い取り組みは「エネルギー消費の削減」

次回は、この状況を克服するために、再生エネルギーやエネルギー管理用ソフトウェアの利用状況について掘り下げていきます。

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本記事は、当社が実施した「電気料金値上げに対する中小企業の意識調査」の結果をまとめたものです。調査期間は2022年10月27日〜11月7日、全国の中小企業に勤める経営者や管理職に対してオンラインで実施しました。有効回答数は262人でした。以下の条件に合致する方を対象としました。

  • 日本在住者であること
  • 2〜250人規模の中小企業の経営者、役員、または部長クラス以上の管理職であり、自社のビジネスモデルを把握していること
  • 会社については、
    • 2022年10月の時点で設立してから1年以上経過していること
    • 相当数の従業員が働ける物理的な職場 (オフィス、事業所) を構えていること
    • 「製品・商品」または「サービス」を提供していること
    • その製品・商品・サービスを自社で開発、販売している、もしくは他社から製品・商品・サービスを購入し、自社で販売していること

この記事で言及されている製品、プログラム、サービスは、国によっては提供されていないか、法令や規制により制限されている可能性があります。製品の提供状況や、国・地域の法令遵守に関しては、ソフトウェア・プロバイダーに直接お問い合わせください。

筆者紹介

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。