失敗しないERP導入 知っておくべき最新動向からソフト選びのコツまで

2022/7/15 投稿者: Alberto Sakai

ERP (企業資源計画、または統合基幹業務) システムは、企業の基幹業務に必要な機能を統合し、一元管理を実現するツールです。自社に最適なERP選びに役立つ情報を紹介します。

失敗しないERP導入

2025年の崖」がもはや遠い未来ではなくなり、基幹システムを統合するERPの導入が急がれています。本記事では、ERPの概要と最新の動向を解説した上で、最適なERPソフトウェアを選ぶためのポイントを挙げていきます。自社のERP導入にぜひお役立てください。

基幹システム機能の統合

ERP (Enterprise Resource Planning) は、 企業の管理系の機能群 (財務や人事など) や、実行系の機能群 (製造や流通など) を統合するテクノロジ戦略と 定義されています。 バックオフィス系業務を標準化する管理系ERPはあらゆる業界で用いられている一方で、実行系ERPの機能は主に製造、流通、小売などの業界で重視されています。

ERPシステムの導入に際しては、必要な機能の特定がまず大切になるので、自社のニーズをきちんと把握したうえで検討しましょう。各領域における主なモジュールは以下の通りです。

管理系
財務管理
・総勘定元帳

・ 買掛金管理

・ 売掛金管理

・ 固定資産管理

・ プロジェクト会計


人的資本管理 (HCM)

・ 人事管理

・ 給与管理
・福利厚生管理
・従業員セルフサービス
・勤怠管理
・旅費/経費管理
・リクルーティング
・オンボーディング
・パフォーマンス管理
・報酬計画
・キャリア管理
・後継者計画
・ラーニング
・要員計画/管理
・従業員の声 (VoE)


管理系
生産・販売管理

・ 生産管理

・ 生産計画/スケジューリング

・ 購買管理
・資材管理
・品質管理
・工程管理
・販売管理
・受注管理
・発注/仕入管理
・出荷管理
・在庫管理

ERPの進化 クラウド移行が本格化

ERP市場は常に変化していますが、大きな流れとして、クラウド利用の本格化を挙げることができます。提供形態はERPソフトウェアの選択にも関わってくるので、その変遷を少し詳しく解説します。

モノリシックERP

提供形態別に見ると、ERPはオンプレミス型とクラウド型に分けられます。オンプレミス型とは、自社施設内でソフトウェアからハードウェアまですべて所有して、システムの構築・運用まで行うものです。日本の多くの大企業では、このような「手組み」のシステムが採用されてきました。完全統合型のパッケージであることから「モノリシックな (一枚岩的) ERP」とも呼ばれます。

ポストモダンERP

従来のERPでは、設備が大掛かりになる、メンテナンスに手間と時間がかかる、新しいサービスや最新テクノロジが利用できないなどの問題があり、デジタル化の足かせにさえなってしまいます。そこで登場したのが「ポストモダンERP」です。これは、モノリシックなERPを分解した上で、クラウドを含む複数のアプリケーションを連携させる手法です。ERPでカバーする機能は最小限にとどめ、その他の機能については最適なアプリケーションを採用します。導入から保守、運用までコストが抑えられ、柔軟な展開が可能になります。

コンポーザブルERP

最近は、機能をさらに細かく分ける「コンポーザブル化」が進んでいます。システムの構成要素である「コンポーネント」をより柔軟に組み合わせたり、組み替えたりできる「コンポーザブルERP」という新しいパラダイムを意味します。その稼働基盤としては、スピードと柔軟性を兼ね備えたクラウド型プラットフォームが必然的に選ばれています。

クラウドERPは当初、標準化に主眼を置く管理系で導入が進みました。それは、実行系は業務特性があり、カスタマイズのニーズが強いため、不向きだと考えられていたからです。しかし最近では、機能の細分化や分散化が進み、「コンフィギュレーション」(設定変更) や「エクステンション」(機能拡張) などの高度なカスタマイズが可能になってきたため、実行系でもクラウド移行が進んでいます。

ERPの進化
ERPの進化 (出典: ガートナー「クラウドERPプロジェクトを成功させるには」をもとに作成)

ERPソフトウェア選択のポイント

以上の内容も踏まえて、ここからは ERPソフトウェアを選ぶ時のポイントを具体的に挙げていきます。

1. 機能

自社に必要な機能を決める際には、前掲のような表を参考にしたり、その他の要件もリストアップしたりと、一覧できるように整理しておきましょう。優先度もつけておくといいでしょう。

2. 提供形態

上述した通り、提供形態に関しては、コストや柔軟性、迅速性などで多くのメリットがあるクラウド型への移行が進んでいます。大手ベンダーもクラウドに軸足を移しています。

ベンダーによっては、オンプレミス型とクラウド型の両方、あるいは同期が可能なハイブリッド型を提供していることもあります。クラウド型でも、どの程度柔軟に組み合わせられるか、カスタマイズできるかなどは、製品やベンダーによってさまざまなので、自社のニーズと照らし合わせて比較検討しましょう。

ここで、クラウドERP導入を成功させるために重要な社内体制づくりにも触れておきます。何よりも大切なのは、自社の一大改革プロジェクトであるERP導入の意義を、経営陣からエンドユーザーまで、広く理解してもらうことです。クラウドERPでは、本番稼働がゴールではありません。頻繁に行われるアップグレードに合わせて、主体的に見直しと改善を繰り返していくことになりますし、それこそがクラウドの良さでもあります。

そのため、ERPプロジェクトで中核的な役割を担う「キー・ユーザー」の育成が欠かせません。また、長期的には「市民開発者 (=社内のエンドユーザー)」も大きな役割を果たします。最近では、エンドユーザー自身がクラウドEPRの改善に関わる 「ローコード/ノーコードプラットフォーム」が広まりつつあります。ERP導入に際して最初から社内で堅固な支持基盤を築くのは、将来に向けての布石でもあります。

3. 対象企業の規模

ERPソフトウェアには、各々が想定する企業規模があります。大企業向け製品は、複雑な要件や多数の拠点に対応するように作られています。中小企業向け製品は、低コストで容易かつ迅速に導入・運用ができることに重点が置かれています。

4. グローバル対応

事業をグローバル展開している場合は、対応言語・通貨を確認しましょう。

5. 特定の業界向け

特定の業界向けに作られている製品もあります。業種別の機能やテンプレートが自社のニーズに合えば、導入や運用がより容易になります。同業他社の導入実績も見てみましょう。

6. ユーザーエクスペリエンス (UX)

働き方改革に向けてのDX推進やコロナ禍で広まったリモートワーク対応により、今日では誰もがアプリケーションを使いこなすことが求められています。会社全体のITリテラシーの底上げのためにも、エンドユーザーにとっての使いやすさは重要です。

7. RPAやAIとの連携

業務のデジタル化や働き方改革の施策として RPAツール (ロボティック・プロセス・オートメーション )AI (人工知能) の活用を検討しているのであれば、それらのテクノロジとERPとの連携に積極的に取り組んでいるベンダーを探してみましょう。

8. サポート体制

ERPベンダーは、導入・運用サービスを自ら提供する場合と、パートナーを通じて提供する場合があります。各段階でどのようなサポートが受けられるのかを確認しましょう。

選定は慎重に

自社のニーズや要件を特定した後、いよいよERPシステムを選ぶ時が来ます。多くの場合は、選定の決め手になるのは業務の特殊性や、予算との兼ね合いでしょう。まずは無料トライアルなどで目ぼしいものを試用してから、少し時間をかけても、じっくり検討することをおすすめします。

ERPのソフトウェアをお探しでしたら、キャプテラの ERPツールのリストをぜひご覧ください。

この記事で言及されている製品、プログラム、サービスは、国によっては提供されていないか、法令や規制により制限されている可能性があります。製品の提供状況や、国・地域の法令遵守に関しては、ソフトウェア・プロバイダーに直接お問い合わせください。

筆者紹介

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。

酒井アルベルト。マドリード・コンプルテンセ大学情報学部卒業。学術博士 (千葉大学)。NHK国際放送アナウンサー、琉球大学准教授を経て、現在はキャプテラにてシニアコンテンツアナリストを務める。技術・社会・ビジネスの観点からのコミュニケーションに関心がある。