DACIフレームワークとは、あらゆるプロジェクトにおいて、迅速かつ効果的な意思決定を行うための優れたツール。その理由を説明して、実際にDACIマトリクスを作成するための5つのポイントを紹介します。

プロジェクトマネージャーには、「二度測って、一度で切る」言わば慎重派の人が多いように思えます。しかし、プロジェクトが切羽詰まって混乱した状況で、早く進めなければならないというプレッシャーがある場合は、どうなるのでしょうか。迅速な決断、つまり早く「切る」ことが求められるときは、解決策を2回「はかる」ような余裕はありません。そのような状況はどのようにして乗り越えられるでしょうか。
プロジェクト開始前に「DACIフレームワーク」を作成していればスムーズに乗り越えられるでしょう。
この記事ではそもそもDACIとは何かを大事なポイントを踏まえてわかりやすく解説します (すでにこのフレームワークをご存知の場合は マインドマップの作成をおすすめします)。
それではまずプロジェクト管理で使われるDACI意思決定フレームワークを説明し、効果的なマトリクス作成の5つのポイントを紹介します。
DACI意思決定フレームワークの定義
DACIフレームワーク(DACIマトリクス、DACIチャートとも呼ばれます)とは、プロジェクトに携わる人々の役割や責任を明確にし、それを主要タスクごとに図式化したものです。プロジェクトチームの各メンバーが担う任務を視覚的に把握できることが特徴です。また、このような責任分担マトリクスを作成することにより、意思決定プロセスに対する合意が取りやすくなるというメリットがあります。
肝に銘じておこう:DACIフレームワークはプロジェクト計画ではない!
DACIフレームワークは、作業を割り当てたり、スケジュールを決定したりするものではないので、プロジェクト計画と混同してはいけません。プロジェクト計画は、プロジェクトの範囲 (期待される成果物) 、タイムライン、管理方法などを定めるものです。それに対して、DACIチャートは各タスクの意思決定への参加の仕方や、役割を示す図に過ぎません。
DACIとは何の略?各文字が表す意味
DACIは「Driver(推進者), Accountable(責任者), Consulted (相談先), Informed (報告先)」の頭文字をとったものです。それぞれの文字は、個々の作業や目標において、個人またはグループの役割と参加レベルを表しています。各文字が表す意味を見ていきましょう。
D: Driver (推進者)
特定のタスクを推進し、その実務を担う人。
注:同類のRACIフレームワークでは、Rは「担当者」を意味し、DACIのDと同義です。
A: Accountable (責任者)
タスクの成功に責任を負う、最終的な意思決定者または承認者。一般的にはプロダクト・マネージャーが行うことが多い。
C: Consulted (相談先)
必要な追加情報や詳細についての相談を受ける人またはチーム。通常はSME (サブジェクト・マター・エキスパート、内容領域専門家) を指す。
I: Informed (報告先)
進捗状況の報告を受ける必要がある人物を指し、通常は上級管理職クラスである。主な連絡手段は電子メール。
プロからのアドバイス
可能な限り、DとAの役割をそれぞれ一人に割り当てるようにしましょう。数人で担ってしまうと、状況が混乱したり意思決定が遅れたりする危険性があります。
以下はDACIマトリクスの例です。

強力なDACIマトリクスを作るための5つのポイント
続いて、プロジェクトマネージャーが効果的なDACIフレームワークを作成するためのポイントを紹介します。
1. 粒度を細かくしすぎない
前述したように、DACIフレームワークはプロジェクト計画ではありません。特定されたタスクや役割は、毎日・毎週の作業目標として扱ってはいけません。むしろ、意思決定や承認が必要となる主要なマイルストーン(達成目標) に焦点を当てましょう。
プロからのアドバイス
DACIに関して混乱が生じたり、詳細情報を求められたりした場合は、プロジェクト計画の再確認が必要なのかもしれません。チームメンバーとしっかり検討しましょう。
2. マトリクスの使い回しはしない
DACIのフレームワークやテンプレートを再利用することで、プロジェクト間の標準化を図ることができますが、各プロジェクトに独自のマトリクスが必要となります。各々のプロジェクトには固有の課題があるため、それをマトリクスやマイルストーンに的確に反映させることが大切です。
3. 一貫性を保つ
DACIフレームワークの目的は、意思決定への参加の仕方を明確にすることなので、決定されたマトリクスに従うことが重要です。例えば、あるタスクのAccountable (責任者) として割り当てられた人は、そのタスクの承認者であり、最終的な意思決定者であるべきです。特別な事情がない限り、責任者に相談せずに決定を下すことはできません。
与えられた役割を逸脱することは、特に混乱時には、さらなる混乱や不信感を招いてしまい、DACIフレームワークの効力が弱まりかねません。プロジェクトが始まったら、基本的には合意されたDACIを最後まで貫きましょう。
4. 主要なマイルストーンのみを取り上げる
DACIフレームワークが扱うタスク (縦方向の列) は、意思決定を必要とするものでなければなりません。チームミーティングのような運用上のタスクは入れないようにしましょう。繰り返しますが、その類の作業はDACIではなく、プロジェクト計画に含めるべきものです。
5. 推進者と責任者を混同しない
同じ人がDriver「推進者」とAccountable「責任者」の役割を兼ねてはいけません。なぜなら、あるタスクを推進する人間が、同時に承認や意思決定の権限を持つことはほとんどないからです。このような混乱が起きた場合は、通常、達成目標の設定が細かすぎることを意味します。
DACI、RACI、マトリクス、チャート…名称はともあれ、とにかく作ってみましょう!
プロジェクトに携わっている人が自分の権限レベル、期待される参加の範囲、情報提供者や意思決定者が誰なのかを正確に把握していると、プロジェクトはよりスムーズかつ迅速に進行します。
最後にもう一つアドバイスを。DACIフレームワークをSharepointやGoogleドライブなど、オンライン・ストレージ・サービスの共有フォルダに置いておいて、プロジェクトチームのメンバーやその他関係者がすぐに利用できるようにすると良いでしょう。